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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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『器用さの試練』 2

 地下3階。

 この階も魔物はいないようだ。

 部屋に入ると、入り口のすぐそばに1m程の柱があり、その上の方には多数の魔石が縦横に綺麗に並んだ形で埋め込まれている。また部屋の両側の壁には、一面に無数の穴が開いていた。

 (前に同じような場所があったな……『敏捷の試練』だったか? 並んでる魔石の数は……縦が10個、横にも10個、計100個か)

 ユウヤは魔石を触ったり押したりしてみたが、特に反応はなかった。

 「多分あの穴から何か出てくるんじゃないかと思います。とりあえず、自分一人で様子を見てみますので、ファニー様はこの柱なり、魔石なりに変化がないかを見ていてもらえますか? 」

 ファニー王女は黙って頷く。

 ユウヤが柱より前に一歩踏み出すとと、果たして両側の穴から光る弾が撃ちだされる。避けながらしばらく観察してみたところ、光の弾は撃ちだされてからは真っすぐ飛び、壁や床など、何かに命中すると消える。当たっても特にダメージはないようだ。また、時間経過に従って、撃ちだされる弾数や弾のスピードは増えるようだ。

 (やっぱり似てるな。ただ……)

 『敏捷の試練』と違うのは、殆どの弾は白色だったが、概ね10発に1発ほど赤く光る弾が混ざることだ。柱の後ろに退くと、光の弾は撃ちだされなくなり、撃ちだされる弾数や弾のスピードもリセットされる。

 「魔石や柱に何か反応はありましたか? 」

 「……何もない」

 「そうですか……じゃあ次は、攻撃してみましょう」

 ユウヤは光の弾を躱しつつ、弾を剣で何十発か斬ってみた。

 「どうでした? 」

 「……赤い弾を斬ったら魔石が一つ光った。白い弾を斬ったら光が消えた」

 「ということは……白い弾には触れずに、赤い弾だけを攻撃すればいいってことでしょうかね。ちょっとやってみましょう」

 今度はは弾を躱しつつ、赤い弾のみを攻撃していく。最初は順調であったが、弾速と弾数が増えていくにしたがって、赤い弾を攻撃する余裕がなくなり、赤い弾を20発程斬ったところで白い弾がユウヤに直撃した。

 「今度はどうでした? 」

 「……赤い弾を切るごとに光る魔石が増えた。ユウヤに白い弾が当たったら全部消えた」

 「やっぱりそうですか。つまり、多分全部の魔石が光った時、つまり白い弾に当たらずに赤い弾に100発命中させればいいということでしょうね」

 「……あの調子で弾数とスピードが増えたら、無理だと思う」

 「補助魔法を使ってみます。可能ならファニー様も弓で援護してください」

 「……わかった」

 ユウヤは『加速』と『思考加速』を使ったうえで再挑戦する。ひたすら躱し続けながらも赤い弾だけを攻撃し続ける。ファニー王女の弓矢での補助もあってかなりの赤い弾を撃破できたが、それでも70発ほどが限界だった。

 「光った魔石はいくつでしたか? 」

 「……68個」

 (となると……補助魔法をもう少し強めにすれば行けるか。あまり強くするとまた体に負担がかかるから……4倍くらいでいいかな)

 「じゃあもう一回やってみましょう」

 「……補助魔法を使っても難しいと思う」

 「今度は補助魔法を強めにかけます。ファニー様も白い弾に矢を当てないように注意してください」

 「……強め? 意味わからない」

 ファニー王女が首を傾げる。

 「見ていてもらえればわかります」

 ユウヤはあらためて『加速』と『思考加速』を使う。今度は強めに魔力を込めた。

 「行きますよ」

 ファニー王女に声をかけ、柱から前方に踏み出すユウヤ。やはり光る弾が襲い掛かってくる。

 しかし、4倍の素早さともなるとさすがに前回とは違い、70発を超えても順調に赤い弾を斬り続ける。

 それでも赤い弾を90発斬ったころにはさすがに弾の頻度、弾数ともに跳ね上がり、4倍に加速したユウヤであっても赤い弾を斬ることは難しくなってきたが、何とか白い弾を躱し続ける。

 ファニー王女も援護してくれており、時折ユウヤの届かないところを飛ぶ赤い弾に、矢が命中している。

 (『加速』も使ってないのに、よく当てられるな。いかん、集中集中)

 そうして粘り続けたユウヤが手近な位置に飛んできた赤い弾を斬ると、光の弾が一斉に消えた。新しい弾も発射されてくる様子がない。

 部屋の奥を見ると、出口の扉が光っている。

 「……魔石が全部光った」

 「どうやらこの階はこれで終わりのようですね」

 「……『加速』でも、あんなに早くは動けないはず」

 「強めに魔法をかければ、できるみたいです」

 「……やっぱりユウヤの魔法、変」

 「まぁ、うまくいったんだからいいじゃないですか」

 「……」




 地下4階。

 「部屋に魔物がいますね。1、2、3……50体くらいです。気を引き締めて行きましょう」

 「……ん」

 部屋で待ち構えていたのは、狼のような形をした魔物だった。ただし、体全体が金属のように滑らかな銀色で、関節部分には継ぎ目らしき黒い線があり、一見狼のロボットのように見える。

 「……アーマードウルフ。あれは厄介」

 「ご存じなのですか? 」

 「……甲殻がとても固くて、斬撃も打撃も効かない。魔法も跳ね返す」

 「弱点は? 」

 「……甲殻の継ぎ目。正確に突き刺さないと駄目」

 「わかりました。ファニー様は弓で援護をお願いします」

 突撃するユウヤに呼応するように、アーマードウルフ達は次々と飛びかかってきた。甲殻に覆われているにも拘らず、普通の狼よりかなり素早い。

 周囲から次々と襲い掛かってくるアーマードウルフの牙や爪を躱しながら、とりあえず普通に剣で斬りつけるユウヤ。命中したアーマードウルフは金属音とともに吹っ飛ぶが、すぐに態勢を整えて再び襲い掛かってくるところを見ると、ダメージを受けたようには見えない。

 (成程、確かに斬撃は効かないか。吹っ飛ぶことで衝撃が逃げてるってこともあるんだろうな……じゃあ次は)

 ユウヤは甲殻の継ぎ目を狙った刺突攻撃にシフトする。しかし、アーマードウルフの激しい連撃を躱し、いなしながら攻撃する必要があるということに加え、アーマードウルフが非常に素早く複雑な動きをすること、継ぎ目に沿った角度で命中しなければ剣が突き刺さらないこともあって、これは想像以上に難しかった。ようやく最初の一頭を倒したのは、何十回も攻撃を繰り返した後である。

 (やっと一頭か。剣より槍の方が向いてるんだろうけどな……ないものはしょうがないか)

 ファニー王女も次々と矢を放ってはいるが、素早いとはいえ単純な動きしかしない3階の光の弾を狙うのとは勝手が違うようで、なかなか苦戦している。それでも2体のアーマードウルフを倒していたが。

 (切りがないな…『加速』を使うか? いや、次の階は『守護者』だろうし、体に負担を掛けたくないな。……アグラヴェインに反対属性の魔力を通したら何とかならないか? 属性は……アーマーが土属性っぽいから……)

 ユウヤはアグラヴェインに魔力を通すと、土属性に対立する風属性の魔力がたっぷりと込められた刀身が黄色く輝き始める。

 「うりゃ! 」

 空中から飛びかかってきたアーマードウルフを思い切り一閃する。吹っ飛んだアーマードウルフを見ると、両断とはいかなかったものの甲殻がひしゃげて半ば切断されており、そこから血が噴き出していた。立ち上がることも難しいようだ。

 「よし、よさそうだな。吹っ飛ばすとその分ダメージが逃げるから……」

 ユウヤは上から飛びかかってくるアーマードウルフはなるべく避け、地を這うように走って襲ってくるアーマードウルフを優先的に、上段から叩き潰すように攻撃することにした。なるべく衝撃が逃げないようにするためだ。

 その戦法は当たりだったようで、アーマードウルフは数を急激に減らし始める。ファニー王女も目が慣れてきたのか、少しずつではあるが倒すペースが上がってきた。

 「これで……最後っと! 」

 ユウヤは最後の一体にアグラヴェインを振り下ろす。

 その個体が倒れるとともに、出口の扉が光りだした。

 「……やっと終わった」

 「ファニー様、お疲れさまでした」

 「……ユウヤは剣も変。アーマードウルフは剣じゃ切れないはず」

 「まぁまぁ、気にしたら負けです。倒せりゃいいんですよ。次行きましょう」

 「……」

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