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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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またもや戦闘

 ユウヤは闘技場に連行、いや案内された。

 闘技場の周りには大勢の貴族らしき竜人族が詰めかけていた。皆真剣そのものの眼差しをしている。

 「ツァンフェイは竜型で戦ったと聞いた。我は人型でお相手願おうかの」

 双方が木剣を持ち、審判の合図で戦いが始まった。

  (! ……これは、強いな)

 竜人族最強と言うのは決して誇張ではなかったようだ。オリバーのような一気呵成に攻め込んでくる迫力満点の攻撃というわけではないが、一つ一つの動きがとてつもなく流麗であり、また無駄を極限までそぎ落としたその動きには、起りが全く見えないがゆえに、ユウヤの反応がわずかに遅れる。

 それでも神から与えられた力や速さをもってすれば、さすがに苦戦するというほどではなかったが、あえてユウヤは受け太刀に回る。これほどの剣術、ぜひ術理を観察し、できれば自分のものにしたいと考えたからだ。

 そうしてしばらく続いた戦いだが、不意に王が距離を取って動きを止め、構えを解いた。

 「全く勝てる気がせぬ。我の負けじゃ……大体汝、手加減しておったじゃろう」

 「いえ」

 「謙遜せずともよい。牽制以外の攻撃を全くしてこなかったではないか」

 「……本気で攻撃ができない理由がありまして」

 「どういった理由じゃ」

 「お見せしましょう。……こちらの人形をお借りします」

 ユウヤは闘技場の隅にある訓練用の人形の所に行くと、木刀を人形に振り下ろす。

 バキャッという大きな音とともに、木刀と人形がまとめて粉砕された。周りから驚嘆の声が上がる。

 「このとおり、危険ですので」

 「な……いや、普通そうはならんじゃろ。木刀も人形も、鉄並みの固さを誇る鉄刀木製なんじゃが……一撃で折れるならまだしも、粉砕とは……確かに汝の攻撃、剣で受けただけでも怪我じゃ済まんじゃろうな。心遣い感謝する。それにしても、さすがは神の遣わせし者じゃ。汝なら『力の試練』も、来るべき悪しき者との戦いも、心配無用であろう。さて、戦いはこれくらいにして、今日は宴を予定しておる。汝を歓迎するための宴じゃ。汝に部屋を用意させたゆえ、準備ができるまで暫く休むがよい」

 「感謝いたします」




 「こちらがユウヤ様の部屋になります。今日のみならず、グヮンジャオにご滞在の間は、この部屋をお使いください。我はお世話係のリーと申します。隣の部屋で待機しておりますので、飲み物や軽食などご所望がおありでしたら、遠慮なくそこの鐘を鳴らしてくださいませ」

 用意された部屋は2~3人用かと思う程広かった。

 ともすると、ただけばけばしく感じさせるほど原色の赤が多用されていたが、巧みに配置された華麗かつ繊細な装飾によって、赤色も含めて一つの調和を醸し出していた。

 ユウヤは部屋に寝転がってしばらくすると、段々眠くなってきた。が、意識が落ちそうになったところで、扉をノックする音がした。入ってきたのはダニエルだ。シェンノン風の服を着ている。

 「おお、これは豪勢な部屋だな。大使の俺の部屋よりも数段上だ」

 「そうなのか? 」

 「ああ、この部屋、他国の王族を迎える時に使われるくらいの代物だな。さすがは王とツァンフェイ王子を倒した男だ」

 「……からかってるのか? まぁいい、ちょうど聞きたいことがあったんだ。シェンノン風の服がおいてあるんで、着ていこうと思うんだが、帯の結び方を教えてくれ」

 「ああ、これはこうして、こう輪を作って……そう、それでいい」

 「ありがとう。ついでにもう一つ聞きたいんだが」

 「何だ? 」

 「なんでいきなり宴になるんだ? 歓待してくれるのはありがたいんだけど」

 「竜人族では強い者が尊敬されるってことと、国王陛下が大陸でも最強の存在って言っただろう? その無敵の国王陛下を難なく倒した者が現れたんだ。しかも、ツァンフェイ王子の竜型まで倒してる。それほどの強者なら、シェンノンでは下にも置かない歓待を受けるのは当然だ。しばらくここ王都グヮンジャオは、ユウヤの話題で持ちきりだろうよ」

 「そ……そうなんだ……」

 そこにノックの音がして、リーが入って来た。

 「宴の準備ができました。ご案内いたします」




 会場には10人ほどが掛けられる大きな円卓が幾つも設えられていた。ユウヤが会場に入ると、既に着席していた100人近い竜人族から、盛大な拍手が起こる。奥の方の一段高いところにある一列になった席に、王と王妃、皇太子とクァンメィ王女までがおり、その隣に案内される。しかも席は王とツァンフェイ王子の間だ。

 ユウヤが席に着くと、王が立ち上がる。

 「皆ご苦労である。こちらのユウヤ殿は、来るべき悪しき者共との決戦のために、神より遣わされし者である。聞き及んでおろうし、直接見た者もいると思うが、本日、我を模擬戦で下した。それも、圧倒的な技量の差をもってな。無類の強者との邂逅を祝し、またユウヤ殿が使命を果たし、この大陸に平和をもたらさんことを祈念して、この会を開くものである。では皆の者、乾杯」

 「乾杯! 」

 出席者が一斉に唱和する。

 大量の料理が机に並べられている。それぞれの机におつきの者が一人つけられており、欲しいものを言えばとってくれるようだ。

 シェンノン料理は中華料理のようだ。豚、家鴨などの肉に各種野菜から、鮑、フカヒレなどの高級食材まで、様々な食材が使われている。シェンノンの街で多用されているほどの極彩色ではないが、彩も豊かで盛り付けも美しく仕上げられており、見た目にも華やかであった。

 料理が皿にとりわけられると、後ろに待機していた女性が声をかけてくる。

 「お手伝いいたします」

 「お手伝い? 何の? 」

 いぶかしげにユウヤが聞くと、その女性は箸を取り出して、

 「シェンノン料理は、フォークなどでは食べづらいものです。この箸というもの使って食事をするのですが、箸は練習しないと使えませんので、外国のお客様などに対しては、私のような者が食事の手伝いをするのです」

 (つまり、「あーん」をさせてくれる人か? )

 「箸なら普通に使えるぞ? 」

 ユウヤは箸を持って、女性の前で動かして見せると、隣に座っていたツァンフェイ王子が口を挟む。

 「おお、ユウヤ殿は箸を使えるのか。其方は下がってよいぞ」

 女性は一礼して下がっていく。

 「あの女性、なんか少し残念そうだったんですが」

 「それはそうだ。我が国では強者は尊敬される。その強者に関わること、しかも王宮の催事で食事の手伝いをするというのは非常に名誉なことだからな」

 「そりゃ悪いことをしましたね」

 「まぁ、気にする必要はない。それよりも、せっかくの料理だ。冷めぬうちに食するがよい」

 促されたユウヤは食べ始める。料理は、様々な味や食感の食材を幾つも組み合わせた上に、様々な調味料を重ねて味を整えられており、一口で説明することが難しい程の複雑玄妙な味わいをしていた。比較的油を多用しているようではあったが、どう工夫したものか、しつこさは全く感じない。

 「……これはすごい。どれもこれも、素晴らしい料理ですね」

 「そうであろう? 我ら竜人族にとって、戦いの次に大切なのが食事なのじゃ。旨い物を食して英気を養い、次の戦いに備えるのだ。ところで食事といえば、ユウヤ殿はアクィタニアで何やら新しい料理を作ったと聞いたぞ。確か……パスタとかいったか。小麦を使った細長い食材らしいな」

 「……よくご存じですね」

 「我も食してみたいものだ」

「時間があれば、作りますよ。そうだ、パスタと似たものですが、もっとシェンノン料理に合いそうな『麺料理』を作ってみましょうか」

 「麺? 麺なら普通に我が国で食しているが……そこの餃子なども麺料理ではないか」

 (ん? あぁ、そう言えば中国では、細長い麺じゃなくても、小麦粉を水で練ったものは麺って言うんだったっけ。それと同じか? )

 「糸のように細長い『麺』なのですが」

 「……ふーむ、確かにそのような形の『麺』はないな……是非食してみたい」

 「では、『試練の迷宮』を突破した後にでも」

 「ふむ、それではなるべく早く突破してもらわねばならんな。ああ、『試練の迷宮』と言えば……殆ど情報は伝わっておらぬのじゃが、先程申したように『力の試練』、つまり膂力を試されるものと言われておる。今一つ、『試練の迷宮』では、竜人族は竜型になれぬようじゃ。竜型になれるのであれば、クァンメィもそれなりに役に立つじゃろうが……もっとも、ユウヤ殿であれば、問題ないじゃろうがな」

 「よろしければ明日にでも『試練の迷宮』に向かいます」

 苦笑を浮かべたユウヤが答える。

 こうして、ユウヤは旨い料理を思うさま堪能しているうちに、夜は更けていくのであった。




 今日は『試練の迷宮』に向かう日だ。

 「ユウヤ様、そろそろお時間でございます」

 部屋で待機をしていると、リーが声をかけてきた。

 ユウヤが城門のところまで行くと、すでにクァンメィ王女がいた。

 しかし、お付きの人らしき者が何名かいるだけで、馬車もなければ護衛らしき者もいない。その代わり、やたら長いベルトのようなものが取り付けられた、人が10人近くも入れそうな、巨大な籠が置いてある。

 「おはようございます。クァンメィ様。ところで、この籠みたいなものは何でしょうか」

 「竜型になった我にこの籠を取り付け、ユウヤ様を乗せ、飛んで『試練の迷宮』に向かいます」

 「私は『飛翔』の魔法を使えますので、籠は必要ありませんよ」

 「そうでしたか。では」

 クァンメィ王女は全身に力を込め、白竜に変身する。ツァンフェイ王子の黒竜と比べると細身で優美な竜である。

 「では、参りましょう」

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