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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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『俊敏性の試練』 3

 地下4階は地下2階と同じで、縦長の部屋が一つだけのようだ。魔物がいないのも同じであった。

 「『知の迷宮』と違って、単純な造りみたいで助かるよ」

 「『知の迷宮』はそんなに複雑だったのかい?」

 「ああ、大規模な迷路があったり、転移の罠があったりでね。造り手の性格が……いやなんでもない」

 二人は部屋に入ったが、床板はない。

 ただし、部屋の左右には無数の穴が開いていた。

 また、地下2階あったスイッチのついていた柱と同じようなものが部屋の奥にある。

 「とりあえず、一回試してみる。ここにいてくれ」

 そうしてユウヤが踏み出すと、無数の穴の一つから光の弾が発射されたが、ユウヤは余裕で躱した。

 しかし、光の弾の攻撃はユウヤが進むごとに激しくなってくる。躱しきれなくなってきたユウヤにそのうちの一発が掠ったかと思うと……やはり部屋の入り口に戻されていた。

 「……大丈夫かい? 」

 「ああ。光の弾が当たっても、ダメージを受けるわけじゃないらしいな」

 「じゃあ、今度は僕が試してみるよ。『加速』」

 ジュスティーヌ王女は『加速』を使うと、奥に向かって走り出すが……部屋の半分もいかないうちに光の弾を躱すのが精いっぱいとなる。しばらくそこで躱し続けていたが、ほどなく光の弾に当たり、転移させられてきた。

 「次は俺だな。『加速』」

 ユウヤは『加速』を使い、もう一度挑戦する。

 前回よりは先まで進んだが、三分の二くらいまで進むと、光の弾は上下左右から無数に発射されるようになってきた。

 (これは……無理だな)

 と思った瞬間、ユウヤはやはり入口まで引き戻されていた。

 「困ったな。どうするか……」

 「考えたんだけど、『結界』で身を守りながら進むとかできないかな」

 「……とりあえずそれでいってみよう」

 ユウヤが『結界』を使うと、ユウヤを中心とした球状の結界が現れる。

 そしてもう一度挑んだユウヤだったが、光の弾が結界に触れると、結界ごと入口まで引き戻された。

 「光の弾が結界に触れても駄目みたいだね。いい手だと思ったんだけどなあ」

 「そうだな」

 二人は考えこむ。

 (他の手は……『加速』はこれ以上強くかけるとうまく動けないだろうし、『反射』……いや一回反射したら消滅するから意味はないか。一度行ったところなら『転移』を使えるんだけど……待てよ)

 「一つ手を思いついたんで、試してみる。『転移』」

 ユウヤは『転移』を使う。転移先はこの部屋の到達できた一番奥の地点だ。

 転移した瞬間、ユウヤは奥に走り出すが、やはり無数の光の弾が上下左右から発射され、数mしか進まないうちに入口に引き戻される。

 「……駄目だったみたいだね」

 「いや、これでいいんだ。『転移』」

 ユウヤは『転移』してダッシュし、入口に引き戻されることを何度も繰り返すことで、無理矢理に奥へと進んでいく。

 そしてとうとう部屋の最奥までたどり着き、柱の上のスイッチを押した瞬間、光の弾はすべて消滅した。

 「やっと着いたか。『転移』」

ユウヤはジュスティーヌ王女の元へと戻る。

 「光の弾が一斉に消えたけど……うまくいったのかな? 」

「なんとかね。たどり着けた一番奥まで『転移』で移動して、数m進んでは引き戻されるってのを繰り返したんだ」

 「なるほど、そういうことか。『転移』が使えるユウヤならではの方法だね。それにしても強引な手だなぁ。やっぱり『敏捷性の試練』としてはどうかと思うけど」

 「『気にしたら負け』なんだろ? 」




 地下5階も部屋がひとつあるきりだったが、1辺が100mほどもありそうな、巨大な部屋であった。

部屋の入口には、『知の試練』の迷宮と同様、高さ5mほどの巨大な扉がある。

 「ここが『守護者』の部屋のようだな。開けてくれるか」

 「わかった。僕は見届け人だから、残念ながら一緒には戦えないけど、頑張って」

 ジュスティーヌ王女が扉に触れる。扉全体が光を放ち、軋み音を立てながらゆっくりと開いていった。

 がらんとした部屋で、特に仕掛けの類は見当たらない。

 しかし……部屋の奥の空中に、それは静止していた。羽だけが激しく動いている。

 「また蜂か……って、何だこのサイズ」

 それは蜂であるのは確かだった。ただし、地下1階と違って、一体しかいない。その代わりというわけではないだろうが、その蜂は5mもの巨躯を誇っており、横幅もかなり大きい。

 (とりあえず、様子を見るか)

 「『石弾』」

 巨大蜂に『石弾』を放つが……命中したと思った瞬間蜂は消え失せ、同時にユウヤは左脇腹に強い衝撃を受けて吹き飛ばされる。

 「何!? 」

 すぐに体制を整えたユウヤが見ると、今までユウヤがいた場所に巨大蜂がいた。ユウヤはすぐに距離を取り、巨大蜂を警戒しつつ、左脇腹を確認する。

 鎧の左脇腹の部分が、かすかにへこんでいた。

 (何があった? ……とりあえず、攻撃を受けたことは確かだ。素早さを上げて出方を見るか)

 ユウヤは『加速』を使った上で、その場で剣を構え、巨大蜂の出方を伺う。

 しばらく双方とも動かずにらみ合いになったが、突然巨大蜂が動き出す。

 瞬間移動をしたかと見まがうスピードで一瞬にしてユウヤに肉薄し、尻尾の針を突き出す。

 ユウヤは横っ飛びで何とか避ける。

 (碌に見えないけど、どうやら瞬間移動の類じゃないな。……またあの手を使うか)

 「『結界』」

 ユウヤと巨大蜂の間に『結界』で仕切り、結界を蜂の方に移動させていく。地下3階で使った手だ。

 結界は蜂の方向に動いていくが……結界が蜂に接触するかと思った瞬間、巨大蜂の姿がいきなり歪みだし……そのまま消失した。

 ユウヤの後ろから羽音が聞こえてくる。

 音の方に向き直ると、果たして巨大蜂が空中に浮かんでいた。

(今のは……『転移』だな。同じ手は通じないってか。物理攻撃で行くしかなさそうだが……『加速』を使ってもスピードじゃ勝負にならないし……カウンター狙いしかないか)

 ユウヤは巨大蜂を警戒しながら、部屋の隅に移動する。巨大蜂が攻撃してくる方向を限定するためだ。

巨大蜂は一撃離脱を繰り返してきた。ユウヤの素早さをもってしても到底全てを躱すことはできず、鎧に何度も攻撃が掠る。致命的な一撃はなかったものの、巨大蜂はユウヤが反撃するより早く、剣の射程範囲から離脱しているのであった。

 (躱してから反撃ってのは……無理だな。幾らなんでも早すぎる。鎧を貫通するほどの威力じゃないが、鎧の隙間にでも入ったらアウトだ。長期戦はまずい。リスクは高いが……これしかないか)

 今までユウヤは度重なる攻撃を受けながらも、巨大蜂が静止状態から攻撃までのタイミングを計っていた。あえて回避をせず、相打ちでカウンターを入れる作戦だ。

 蜂が突撃してくる。ユウヤは激突のタイミングに合わせ、相打ち前提で渾身の突きを繰り出した!

 しかし、ユウヤの剣には何の手ごたえも伝わって来なかった。巨大蜂は10mも離れた場所で静止している。

 (タイミングは完璧だった……はずだけど、刺さったと思った瞬間、スピードが全く落ちずにが前から後ろに動く方向が切り替わったぞ? 慣性の法則ってもんがあるんだし、そんな動きができるわけはないんだけど……実際にやられたからなぁ。ま、あんな動きができるんじゃ、カウンターは無理だな)

 そう考える間にも巨大蜂の攻撃はいよいよ激しさを増し、ユウヤはその対処に手一杯になってしまった。

 (このままじゃジリ貧だ。何か他の手は……駄目だ、考える余裕もない……考える余裕……そういえばそんな魔法があったな)

 「『思考加速』! 」

 ユウヤはこの世界に来て魔法の訓練を受けていたが、基礎的なことを除いては、ラスリン島という絶海の孤島で独学であった。『思考加速』も使ってみたことはあったのだが、絶海の孤島に一人の状態で使っても効果がわかりにくい性質の魔法だったため、そのままお蔵入りになっていたのだ。

 そんなわけで、駄目もとで使った『思考加速』であったが、

 (何だこれ? 自分の体の動きが鈍ったような……いや、蜂の動きも若干だけど前より見えるような気がする。……これが『思考加速』の効果ってことか? ということは……『加速』と組み合わせて使えば……まともに動けるんじゃないか? )

 「『加速』! 『思考加速』! 」

 ユウヤは魔力を強くより込めて『加速』と『思考加速』を唱え直す。

 そんなことは全く意に介せず突撃を繰り返す巨大蜂であったが、その攻撃は唐突に、全く当たらなくなった。

 (見える、避けられるぞ! ……よぉし、これなら)

 ユウヤは突撃してきた巨大蜂の針を、体を開いて躱しざまに放った渾身の突きが、深々と巨大蜂の胴体に突き刺さる。

 巨大蜂はドロッとした緑色の体液を流しながら上空へ避難したが、負ったダメージが深かったのか、元の素早さは既に失われていた。そこを狙ってユウヤの放った『石弾』が、巨大蜂の羽にに直撃する。

 その一撃で羽をズタズタにされた巨大蜂は、巨大な音を立てて落下した。それでも激しく藻掻いていた。

 「強敵だったな。今楽にしてやる」

 ユウヤはそう言うと、巨大蜂の眉間に深々と剣を突き刺したのであった。

 部屋の入口の反対側にあった扉が光を放ち始める。

 入口からジュスティーヌ王女が入ってきた。

 「お見事だ、ユウヤ。見届け人として安心したよ。と言っても、巨大蜂の動きは殆ど見えなかったし、ユウヤも最後の方は全く動きが見えなかったんだけど……」

 「10倍どころじゃなく加速してたからな」

 「3倍以上になると動きがコントロールできないって言ってなかったっけ? 」

 「『加速』に『思考加速』を組み合わせたら、何とかコントロールできるようになった」

 「『思考加速』? 確か、水属性第6階梯の魔法だったね。……そんな方法があるなんてね。まぁ、そもそも10倍も加速するなんて普通は無理なんだけどな」

 「それぐらいしなきゃ勝てなかった。強敵だったよ。……守護者は倒したんだし、もらうものをもらってさっさと帰ろう」

 「そうだね」




 巨大蜂のいた部屋につながる小部屋には、『知の試練』と似たような祭壇があり、靴が安置されていた。

 兜と合わせて作られたのであろう、精緻な模様が刻まれた漆黒のもので、やはり強大な魔力が込められているようだ。

 「ユウヤの兜と同じ意匠だね。強い魔力を宿しているみたいだ……何か特別な能力があったりするのかな? 」

 「『知の迷宮』にあった兜は水魔法への耐性があるんだから、風魔法への耐性があるんじゃないか? それより、さすがに疲れたよ。早く帰ろう」

 こうして二人は『敏捷性の試練』を無事突破し、帰還したのであった。

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