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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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『俊敏性の試練』 2

 二人は階段を降りていく。

 地下2階には魔物はいないようだ。幅は狭いが、奥行きが50mほどもある縦長の空間がある。

 部屋に入ると、入り口のそばには1m程の石造りの柱があり、その上にスイッチらしきものがついていた。端より先の地面には、大きさ1m程の、正方形をした木の床が部屋の奥までびっしりと並んでいる。

 部屋の一番奥の方にも、石造りの柱のようなものが見えた。

 「……何だこれ」

 「うーん、わからないな。このスイッチを押すと何かが起こるってことなんじゃないかな」

 「とりあえずここにいてくれるか? とりあえずスイッチは押さないで、一回進んでみる」

 ユウヤはそう言うと、とりあえず石板に踏み出し……たが、石板を踏むと同時に風景が歪んだかと思うと、部屋の入口に戻されていた。

 「!? ……ユウヤ? 何があった? 」

 「石板に『転移』の罠が仕掛けられてるらしいな」

 「……やっぱりスイッチを押さないといけないんだろうね」

 「だろうなぁ」

 ユウヤはスイッチを押してみると、一番手前の木の板の一つが光りだす。

 5秒ほどたつと、少し奥の木の床が光りだし、交代するように最初に光った木の床の光が消える。

そのまま見ていると、どんどん奥の方の木の床が光っていき、部屋の奥の石柱のところまで行くと、光が消えた。

 (これは……確か前世で、曲とタイミングに合わせて、床の矢印を踏むゲームがあったっけな……D〇Rだったか)

 「何が何だかわからないな。ユウヤ、どうするんだい? 」

 「これは、多分……ちょっと試してみる」

 ユウヤはもう一度スイッチを押し、光った木の床に乗ってみた。転移はしないようだ。

 次に光った木の床にジャンプする。やはり転移はしない。

 (やっぱりか)

 ユウヤは光る木の床以外を踏まないようにジャンプして移動を続けてく……が、段々と木の床が光る時間が短くなっていき、光る木の床が遠くになったり、後戻りしたりするようになっていく。

 「あ」

 複雑な順番で光る床に合わせようとしてユウヤが体勢を崩し、光っていない木の床を踏んでしまう……と、やはり部屋の入口に戻されていた。

 「……おかえり、ユウヤ」

 「……」

 「つまり光ってる木の床だけを踏んで行けばいいってことだよね。次は僕がやってみるよ」

 ジュスティーヌ王女はそう言うと、スイッチを押す。

 そしてしばらく奮闘していたが、入り口から20m程度でミスをしたようで、部屋の入口に戻ってきた。

 「おかえり」

 「……ただいま」

 それから二人は交代で何度か挑んだが、せいぜいが部屋の半分程度までしか行きつけなかった。

 「奥に行くほど難しくなってくるなあ、これ。ユウヤだけじゃなくて僕も部屋の奥まで行かなきゃならないのに、これじゃあ正直自信がないよ。ユウヤは『加速』を使ってみたかい? 僕は使ってみたけど、やっぱり駄目だった」

 「『加速』か……」

 風魔法第3階梯の魔法で、その名のとおり使用者本人の敏捷性を増強する魔法だ。ユウヤも訓練の時に使ってみたことはあったのだが、その時はいきなり自分のスピードが数倍になったため、自分の体をコントロールすることができなくなってしまった。転生してすぐオリバーと模擬戦を戦った時に同じような事態になったこともあり、それからなんとなく封印していたのだ。

 「あんまり使いたくないんだよなぁ」

 「どうしてだい? 」

 「効果が強すぎて、逆にうまく動けなくなるんだ」

 「え? せいぜいが数割スピードが上がるくらいだし、そんなことにはならないだろう? あ……さっきの『石弾』みたいな非常識な威力だと、そうなるのかい? 」

 「そういうこと。……まぁ、気は進まないけど、そうも言ってられないか」

 ユウヤは魔力をなるべく絞って『加速』を使う。それでもスピードが2倍になったが、しばらく走り回ったりジャンプしたりして体を慣らしていく。何とかまともに動けそうだ。

 「じゃあ、行ってくる」

 ユウヤはスイッチを押し、再度木の床に踏み出す。

 やはり倍速で動けるとなると、難易度も格段に変わってくる。左右前後に行ったり来たりする光にこけそうになったりしながらも、ユウヤは10分ほどかけて何とか部屋の最奥部までたどり着いた。

 部屋の奥に見えていた石柱には、やはりボタンが付いていた。

 スイッチを押すと、全ての木の床が光りだす。踏んでみたが、転移はしないようだ。

 「『転移』」

 入り口まで転移すると、ジュスティーヌ王女が微妙な表情をして待っていた。

 「最後まで行けたように見えたんだけど……戻ってきたってことは、駄目だったってことかな? 」

 「いや、上手くいったみたいだ。今回は自分で『転移』を使って戻ってきた」

 ジュスティーヌ王女が目を丸くする。

 「え? 『転移』って……闇の第7階梯の『転移』かい? 確かに、全階梯使えるとは聞いてたけど……」

 「そういうこと。次に行こう」




 地下3階。

 「この階も部屋が一つしかないな。相当広い部屋みたいだけど。魔物は……一体だけか」

 「僕も戦うよ」

 二人は部屋に入ったが、魔物の姿は見当たらない。

 「あれ? いないな」

 『探索』で表示されている魔物の位置にユウヤが目を凝らすと、確かに何か、ごく小さいものがいる。

 「……部屋の奥の右の隅の方、何かいるな。ずいぶん小さいけど……ありゃ鳥だな。真っ赤な鳥だ」

 「確かに何かいるな。ちょっと近づいてみよう」

 二人は鳥に近づいていくが、動く様子がない。

 20m程まで近づいたところで、ジュスティーヌ王女がつぶやいた。

 「あれは……ハミングバード・ヴァニシュだね。あれを捕まえるなり倒すなりってことだろうけど……これはちょっと……まずいかもね」

 「まずいって……危険な魔物なのか? あんなに小さいのに」

 「いや、魔物というよりただの小鳥だから危険はないよ、危険は」

 「じゃあ、何がまずいんだ? 」

 「危険はないんだけど、倒すとなると……とにかく動きが桁違いに素早いんだよ。人の目じゃとらえることも難しい。「幻影の鳥」って異名があるくらいだ。だから、捕まえたり倒したりするのは相当難しいんだ」

 「そうなんだ。……ちょっと試してみるか。『石弾』」

 ユウヤは蜂に使ったように、密度と範囲をめいいっぱい高めた『石弾』を放つ。

 『石弾』が命中したかと思った瞬間……いきなりハミングバード・ヴァニシュはユウヤの視界から消えた。

 「……は? 何処行った? 」

 「ユウヤ、あっちだ」

 ジュスティーヌ王女が指さす方を見ると、確かにハミングバード・ヴァニシュがいる。

 「……マジかよ」

 「言ったとおりだろう? 」

 続けて魔法を何度か試してみる。ユウヤも少しずつ目が慣れてきたせいか、さすがに視界から消えるということはなくなってきたが、それでもハミングバード・ヴァニシュには全く当たりそうになかった。

 魔法を撃つたびに二人から20m程距離をとって、のんびりと羽づくろいなどしている。

 ジュスティーヌ王女が肩をすくめる。

 「完全に、間合いを見切られてるみたいだね」

 「確かにまずいな、これは。『加速』で対応できるレベルでもなさそうだし……なにかいい方法は知らないか? 」

 「赤い羽が装飾品とか、錬金術の材料になるから需要はあるんだけど、罠で捕まえるしかないみたいだよ。こんなところに罠なんか持ってきてないけどね。最悪、一度地上に戻って罠を持ってくるかい? 」

 「それは面倒だな……うーん……そうだ、要は捕まえればいいんだよな。とりあえず、この手でいってみるか。『結界』」

 ユウヤが『結界』を使うと、二人とハミングバード・ヴァニシュの間に、部屋全体を仕切る形で巨大な結界が現れた。

 ジュスティーヌ王女が目を見開く。

 「……こんなに大きな『結界』を張れるなんて、やっぱりユウヤは規格外だな。でも、『結界』なんか張ってどうするんだい? 」

 「この『結界』は……こうするんだ! 」

 ユウヤがさらに魔力を込めると、ハミングバード・ヴァニシュのいる方向に少しずつ移動し始めた。

 それに気づいたのか、ハミングバード・ヴァニシュが飛び回り始める。

 狂ったようにあちこちを猛然と飛び回っていたが、結界を突破できるわけでもなく、飛べる範囲がどんどんと狭まっていき……最後には無残に押しつぶされたのであった。

 出口が光を帯び始める。

 「なるほど、結界で押しつぶすってことだったのか。あんな巨大な結界も、張った結界を動かすなんてことも、聞いたことないけど……」

 「ま、そういうことだ」

 「……『俊敏性の試練』としてはどうかと思うんだけどね」

 「自分だって罠を取ってくるとか言ってたじゃないか」

 「まぁ、いいじゃないか。『知の試練』でアンジェラ王女に『気にしたら負け』って言ってたって聞いたよ? 」

 「……まぁね」

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