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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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『知の試練』 4

 地下6階は、1階と同じく巨大な迷路構造になっていた。

 (2番煎じとは、芸がねぇな)

 『探索』を使うユウヤ達が道に迷うわけもなく、3時間ほどかけて、迷宮入り口と同じような彫刻のある扉の前に着いた。

 ただしこちらは、高さ5mほどの巨大な扉であったが。

 『探索』で見る限り、扉の向こうは広い部屋で、行き止まりとなっている。

 「……言い伝えどおりならば、この扉の向こうに『守護者』がいるはずですわ。用意はいいかしら? 」

 「大丈夫です。扉を開けてもらえますか」

 アンジェラ王女が扉に手を触れると、迷宮入り口と同じように扉全体が光を放ち、軋み音を立てながらゆっくりと開いていく。

 警戒しながら中を確認するが、部屋は完全にがらんどうである。ただ、部屋の奥の壁には巨大な魔法陣のような物が描かれていた。

事前に『探索』で確認したとおり、『守護者』らしきものも含めて、魔物一匹いない。

 「何もいませんね……とりあえず入ってみます。アンジェラ様は警戒を怠らないようにして、そこにいてください」

 「わかりました。奥の魔法陣はかなり複雑で、大規模な魔法が込められていると思いますので、くれぐれも気を付けてください」

 ユウヤが部屋に入ると、同時に人の形をした影のようなものが魔法陣から出てきた。

 全身が黒いため表情等は見えないが、片手に剣を持っている。

 ユウヤが黒い影にダッシュすると、同時に黒い影もユウヤめがけてダッシュしてきた。二人は同時に剣を振るう。

 互いの剣がぶつかり、鋭い音を立て、火花が散る。

 そのまま五十合も打ち合ったが、剣の腕は互角なようで、膠着状態に陥った。

 (一筋縄ではいかないな。それなら)

 ユウヤは黒い影から飛びずさり、『魔弾』を放つ。

 しかし、黒い影も同じタイミングで飛びずさり、『魔弾』を放ってきた。

 二人の魔法は部屋の中央でぶつかり、衝撃を残して相殺される。

 「『魔弾』! 『石弾』! 『水流』! 」

 魔法を何発も放つが、全て同じ魔法で相殺される。

 それならばと、ユウヤは魔法と剣とを織り交ぜ戦うが、黒い影も全く同じタイミングで魔法と剣を織り交ぜ、膠着状態は果てしなく続く。

 (これは……)

 ふと、ユウヤは大きく後ろに飛び、そのまま止まってみた。

 すると……黒い影も同様に後退し、動きを止める。

 (やっぱりな)

 そのまま後ずさり、部屋から出てみる。

 黒い影もやはり後ずさり、魔法陣に消えた。

 アンジェラ王女が声をかけてくる。

 「大丈夫ですか? 」

 「ええ」

 「それにしても、ユウヤ様とあれだけ撃ち合えるとは……でも、何かがおかしいような……」

 「おかしいとは? 」

 「剣も魔法も、全てユウヤ様と同じ動きをしていたようですが。まるで鏡像みたいに」

 「気づいておられましたか。確かに鏡像みたい、というか鏡像そのもの、でしょうね。思い付きを一つ試してみようかと思います。危険なので、アンジェラ様は扉から離れてもらえますか」

 「私には見届け人という務めがあります。扉から離れることはできませんわ」

 「では、なるべく扉の端の方に寄ってください」

扉の端に寄ったアンジェラ王女に、『結界』をかける。

 「さて」

 ユウヤは再度部屋に入って部屋の中央へ歩いていき、部屋の中央から5mくらい前で止まった。

 それと同時に、やはり魔法陣から黒い影が現れた影がユウヤに向かってきて、部屋の中央から5mくらい前で止まる。

 「『反射』」

 ユウヤが魔法を唱えると、部屋の中央に光の壁が現れた。

 黒い影も『反射』を唱え、もう一枚光の壁が現れる。

 ユウヤは『反射』の光の壁に向かって『魔弾』を放つ。黒い光弾が発射され、光の壁にぶつかると、ユウヤの方に跳ね返される。

 そのままユウヤをかすめるようにして、扉を抜け、通路の壁に当たって爆散した。

 それと同時に……黒い影は歪んでいき……霧のようにかき消えた。

 「アンジェラ様、お怪我は」

 「結界のおかげで大丈夫です。……それより、今のは一体? 」

 「『反射』という魔法をご存じですか? 」

 「……確か、一度のみ魔法を跳ね返す光の壁を張るというものですわね。宮廷魔導士で使える者が何人かおります」

 「『反射』の光の壁に向かって『魔弾』を放ち、反射させました。黒い影は鏡像ですから、当然同じことをし……魔法陣を破壊したというわけです。魔法陣は黒い影を召喚するためのものだったようですね」

 「……なるほど、そういう手がありましたか」

 見ると、魔法陣があった壁が一部崩れており、奥に空間があるようだ。

 その空間は小部屋になっており、部屋の奥には祭壇が設置されていた。

 祭壇には兜が安置されていた。

 兜は黒曜石のような漆黒で、全体に精緻な、それでいて煩くならない程度の美しい模様が施されており、溢れんばかりの深い魔力と、名状しがたい風格を湛えていた。

 アンジェラはうっとりとした表情で、

 「これが……アーティファクト、ですか。何と美しいのでしょう」

 「そのようですね。強い魔力が込められているようですが、どんな効果があるんでしょう

かね」

 「戻ったら、宮廷魔術師に鑑定させてみましょう」

 ユウヤは『収納』で、兜をしまいこむ。

 「では、帰りましょうか。『転移』」

 こうして、二人は一日目にして『試練の迷宮』を制覇し、王都に戻ったのであった。




 明くる日。

 謁見の間にて、『試練の迷宮』の制覇を王に報告した。

 昨晩のうちにアンジェラ王女から報告はされているわけだが、やっぱり正式な報告というものは必要らしい。

 「まさか、僅か一日で『試練の迷宮』を突破するとは……さすがは神から遣わされた者じゃな」

 「王のご援助あればこそです。いただいた装備は素晴らしい業物でした」

 「それは重畳。ともかくこれで、我が国でなすべきことやり終えたということじゃな。これからユウヤには、他国への協力要請と『試練の迷宮』突破のため、各国を回ってもらうことになる。とりあえずは隣国のアクィタニア王国からじゃな。ただ、迷宮の突破が想定外に早かったこともあり、こちらの準備が整っておらん。1週間ほどかかるゆえ、その間は休息するがよい」

 「地図があれば自分一人で参りますが……」

 「……そうはいかん。『飛翔』を使える其方なら、確かに時間をかけずに着くことはできよう。じゃが、幾ら添え状を持たせたとしても、顔も知られておらぬ其方が一人で王城に赴いたところで、不審な者として追い返されるか、捕まるかするだけじゃ。正式な形で使節を立てねばならぬ。協力についての協議もせねばならぬしな」

 「……それもそうですね」

 「其方の使命は重大ゆえ、万全な状態で臨むことが肝要じゃ。それ故、休めるときはしっかりと休むがよい」

 こうしてユウヤは、転生して初めての「休暇」を迎えるのであった。




 翌日。オリバー宅で目覚めたユウヤは、オリバーと遅めの朝食をとっていた。

 (朝食だけあって軽めだけど……やっぱり旨いな。味付けもだけど、素材がいいんだろうな。さすが食いしん坊将軍)

 ユウヤがそんなことを考えながらパンを口に放り込んでいると、慌てた様子で部屋に入ってきたメイドが報告する。

 「ご主人様、お客様でございます」

 「ん? 本日は来客の予定はなかったはずだが? 」

 「それがその……アンジェラ殿下でございます」

 「何だと? ……客間にお通ししろ、直ぐに向かう。ユウヤ、貴公も来い」

 二人は急いで朝食を片付け、客間に向かう。待っていたアンジェラ王女は、町娘のような素朴な服を着ていた。

 とは言っても、布地や縫製をよくよく見ると、かな質の良いものようであったが。

 (ドレス姿や、武装した姿もよく似合ってたけど……これはこれでアリだな)

 などと思いながらも、顔に出さないよう努めるユウヤ。

 「本日はどうされましたか? 」

 「いえ……ユウヤ様が休暇ということで、今日はどうされるのかなぁ、と……」

 「特に決めてはいませんね」

 「では、その……今日は王都をご案内しましょうか? 私、こう見えても結構詳しいんですのよ」

 「アンジェラ様が直々にですか? それは少し畏れ多いかと。それに、王女様が町を歩き回るってことは、護衛も大勢ついてくるのでは? あまり物々しいのもどうかと……」

 オリバーが口を挟む。

 「心配いらん。アンジェラ様はこう見えて結構なお転婆娘でな、昔から城を抜け出しては町をお忍びで徘徊するなんてのはしょっちゅうだったしな」

 「言い過ぎですわ」

 とアンジェラ王女は頬を膨らませる。

 「もちろん、目立たぬ形で護衛はついている。そもそも、貴公と一緒ならば、何の危険もないだろう? 」

 「そういうことでしたら、案内をお願いします」

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