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6:ホワイトパーティー(ちょろっと出ただけ)

マーサの母のサラは意外にも控えめな性格で屋敷の中で大人しく生活をしていた。

元は子爵家の出だったそうだが裕福とは言い難く自分のことは自分でするように躾けられたらしい。

なので食事を用意するのもお菓子を焼くのも手慣れていた。


「あら、良い匂いね。サラ様は器用なんですのね。」

「マーガレット様、他にすることがないんですの。クッキーが焼けましたのでご一緒にいかがですか?」


マーガレットは謙虚なサラが思いの外気に入った。

仕事であまり家にいないのでたまにしか会わないが夫に見放されたとしか思えない愛人が気の毒に思えてマーガレットからお茶に誘ったのが始まりだった。


「伯爵からは何か言って来ましたの?」

「いいえ、何も。生活費も貰えていませんわ。」

「そう、お気の毒ね。必要なものがあれば言ってちょうだい。夫は伯爵とあまり良い関係ではないからあなた達に冷たくあたって申し訳ないわ。」

「そのようですわね。長兄しか目に入らない様子でしたから。あの、でしたら娘に白いドレスを買ってくださいませんか?」

「あぁ、王妃様のホワイトパーティーね。シャーロットのも必要だわ。靴やバッグもいるわね。アクセサリーはあるのかしら?」

「私のを貸すつもりでいます。」


昨日本当に招待状が届いて驚いたのはマーサよりもサラの方だった。

マーサは買ってもらって当たり前のような顔をした為にマーガレットの逆鱗に触れたがサラの取りなしでひたすら謝り白いドレスを手に入れた。

肩と腰にリボンの付いたものを頼んで希望の物を貰ったにも関わらずオーダーではなく既製品だったことに文句を垂れたマーサはマーガレットに床に座らされて二時間ばかり説教をされ最後は泣きながら謝った。


「図々しさは貴族級ねだわ。だから大人しくなったのね。パーティでもやらかさなければ良いけれど。」

「ラスティはやらかしを楽しみにしてたわよ。そんな事でもなければつまんないもんね。残念だけど私の目には見えなかったわ。」




シャーロットの未来視が発動しなかった通りにその心配は全くなかった。

マーサは王宮に怖気付き同じような白い衣装の令嬢の華やかさを前に自分がいかに田舎者出身なのかを思い知った。

指示された席に大人しく座り挨拶をする双子の王子様の美しさに感嘆しているようだ。

マーサの隣に座った令嬢もこの場にあまり慣れていないようで二人は少しづつ話すようになった。


「シャーロット様のお姉様ってことかしら?」

「そうね、少しばかり血は繋がっているわ。」

「シャーロット様もジュリエット様もあまりお茶会にはいらっしゃらないから珍しいのよ。もっと小さい頃にお会いしたきりだけれど本当に可愛らしいわね。あの髪!日に透かすとピンク色に見えるわ。」


マーサは心の中で小さく舌打ちをした。


シャーロットとジュリエットは令嬢に囲まれた双子の王子から一番離れたテーブルで静かに談笑していた。

王妃の気に入っている令嬢は王子のそばのテーブルで少し離れた席には予備軍がいる。

当然ジュリエットとシャーロットは一番遠くの離れたテーブルだった。

予備軍には所々にご子息も配置されご自由にお選びくださいと言っている様なものだ。

全ての座席は王妃様の指示らしく考えていることがわかる。


誰もが同じような白のドレスを着ているのでせめてもと髪を複雑に結い上げた女の子が多い中でジュリエットとシャーロットは長い髪を下ろしたまま髪飾りのひとつもつけていない。

このパーティーは子女にとって大切な場なのだが二人にはどうでもいい事なのだろう。

だからドレスもフリルやリボンはなくとてもシンプルなデザインでマーサはこのドレスを用意したシャーロットの母親を恨んだ。

もっともこのドレスは自分でこのようなデザインがいいと希望したものなのだが。



「マーサ様、私たちも王子殿下にご挨拶に行きましょうか。」

「でも他の女の子たちが・・・。」

「いつもああなのよ。待っていてもあのままでしょうからご挨拶だけしましょう。みんな殿下の妃になりたいのね。私は無理だわ。」


席があんなに離れているならばシャーロットも候補にもならないのだろう。

アシュフォード公爵令嬢は血縁だから結婚なんてできないだろうしとマーサはほくそ笑んだ。






「何あれ。神々の遊び?」

「ぷっ、そうね、ぷぷっ。最後の晩餐にも見えるわ。」


双子の周りに侍った白いドレスの塊は教会に飾られた絵画のようだった。



「あら?ティーパーティーなのに火を起こしてあるわ。」

「何を焼くのかしら。」


二人が遠くから見ているとコックが小豚を運んできて徐に火の中へ放り投げた。

手足を縛られたままで生きながらに焼かれた小豚はキーキーと悲鳴をあげていたがやがてその声も消えた。


「悪魔だ、悪魔の料理だ。」


シャーロットはドン引きしている。


「わかるわ。あれが伝統料理だなんてね。美味しいけれどわざわざ目の前で焼かなくてもいいでしょうに。」

「みんな平気なのね。私だってお肉は食べるけれど丸焼きはね・・・。あれ中までちゃんと火が通るの?」

「さあ、どうかしらね。ここにいても蚊に刺されるだけだし帰りましょうか。私の家でお茶にしましょう。」


ジュリエットは持っていた小さな扇子で大あくびを隠すと眠そうな目でシャーロットを見た。


「王妃様に何か言われないかな。私は言われてもいいんだけれどジュリエットは平気?」

「平気よ、もちろん。」


帰ろうと立ち上がった二人の元にやってきたのは友人のノエル・アンダーソン公爵子息だった。


「待って!帰らないでくれ。」


そう言ってジュリエットの腕を引っ張ったノエルは帰ってしまいそうな二人を見つけて走ってきたようだ。


「ラスティが寂しがるよ。」

「大丈夫よ、あんなに大勢の女の子がいるんだもの。また学校でね!」


ノエルがしつこく食い止めたが二人は帰ってしまった。

報告を受けた王妃は満足そうに微笑むとあとは王子の側から女の子を離すようにと言い付けて去っていった。





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