17:再会 前編
シャーロットは変わった。
メソメソと泣く自分に腹が立っていたのもあるが何もせず何も出来ない自分が嫌でしょうがない。
手紙を出した翌日にジュリエットの母親から大量のドレスと同時にお針子がパウエル家にやってきた。
実家の母親からは店を開けそうなくらいの靴が届けられた。
中にはいくつかの本物の戦闘服が混じっていたがユーモア溢れるジュリエットの母らしい。
母親からの荷物にはナイフを仕込ませたゴツいブーツが入っていたのはジュリエットの母と打ち合わせでもしたのだろうか。
(・・・これを着ていったらキチ○○になったと思われて離縁になるんじゃないかしら)
一応袖を通したシャーロットは鏡を見ながら最後の手段はこれにしようとニンマリ笑った。
ボディアーマーのようなデザインは銃で撃たれても死にはしないだろう。
この足を全て放り出した短いスカートはさぞかしキックがしやすいだろう。
「レイチェル、とりあえず私を淑女にしてちょうだい。ドレスはその背中がざっくり開いたやつがいいわ。」
「奥様、ざっくりではなく大胆にと。」
「・・・ふぅ、まずはそこから始めなくちゃいけないわね。大胆なそのタイプを集めてちょうだい。私そこまで胸は大きくないけれど背中は綺麗だと思うの。」
「そうですね。とても美しいスタイルをされています。小柄ですが腕も足も細く長くてどんなドレスも着こなすでしょう。」
レイチェルもうんうんと頷きながら真剣にドレスを選んでいる。
「でも胸を大きく見せることって可能なの?」
「もちろんですとも。お望みなら。」
「ならやってちょうだい。プリンプリンに仕上げてね。」
レイチェルは跪いたままでシャーロットを見上げると優しく微笑んだが眼は悪戯に輝いていた。
パウエル家の従者や召使は全て男性で女性はレイチェルだけだ。
今では全面的に信頼を寄せている。
「奥様、誰よりも輝く淑女になりますよ。任せてください。」
レイチェルの言ったとおりその日のシャーロットは別人だった。
元々細いウエストを締め上げ昔ながらのコルセットで胸は強調されている。
背中も肩も大胆に露出しているが淡いピンク色のおかげか柔らかい生地のおかげか清楚にも見える。
「・・・なんだ、そのドレスは。」
結婚してからほとんど口を聞いたこともない夫がそう言った。
女を強調したドレスが気に入らないのだろう。
パーティーの主役である陛下の前で挨拶をした時以外は顔も合わせず夫は友人(もしくは隠れ恋人)の元へ去っていった。
レイチェルが言っていたが昔の晩餐会と違ってパートナーとずっとくっついていなくてもいいらしい。
見渡してみるとほとんどが同性の友人と固まって話している。
遠くの視界には懐かしいラスティとダニーが見える。
そばにいるのはノエルとあのアンディだ。
(いいわねぇ。友人ならずっと一緒にいれるものね。アンディの婚約者も私のように身綺麗なまま生涯を終えるのかしら。どなたか存じないけれど友達になれそうな気がするわ。)
友人のいないシャーロットはひとりぼっちにされてどうしようか考えていると話しかけられた。
うろ覚えだがどこぞの伯爵や男爵や子爵の娘たちだ。
「・・・ちょっとバルコニーでお話しできないかしら?」
五人もの女の子に囲まれて笑顔が引き攣ってしまったが小さく頷いた。
(いじめる?いじめる?)
慣れないドレスでただでさえ気後れしているのにジュリエットも見当たらず背筋を伸ばしているのがやっとのシャーロットだった。




