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14:いらぬ知識

同性愛


聞いたことはあるけれどこんな身近にいたなんて。

獣のように交わる二人を見ても嫌悪感は不思議と感じなかったのはなぜだろう。

男同士とはいえ愛し合う二人の愛情の証だから?


(でも部屋でやりなさいよ。)


パウエル家の末子のジョージ

女ばかりの姉妹の中でたった一人の男児

さぞかし甘やかされて育ち女の醜さを見てきたに違いない。


(そう思えば男性が好きになるのもわかる気がする。女は怖いもんね。)


王妃は知っていてシャーロットに嫁がせたのだ。

ラスティと踊ったのが気に入らないのか、ランカスターが気に入らないのか知らないが偽装結婚の為に嫁がされた、そう考えるとそれが正解な気がする。


(ふうん。それで私は一生あの男と仮初の妻として生きなければならないわけね。子供を産むこともなくずっと一人の寝室で夜会の時だけはエスコートしてやるぞ、と。)


シャーロットは沸々と王妃に対する怒りが湧いてきた。

怒って国を出た父よりも。


(でも私にはどうすることもできない。考えなくちゃ、冷静に。逃げ出すだけじゃだめ。)




シャーロットはあっさりと自分の置かれた境遇を受け入れた。

何も出来ない自分、何になりたかったのかもわからない自分、これからどうしたいのか。

そんな事を考えながら日々を過ごした。

ジョージのお相手はどうやら一人ではなかったみたいで三、四人の男が交代で時々屋敷に居た。

最初に会ったジャガイモのような男はあれから一度も会っていないが二番目に会った男は気さくに話しかけてくる。


「シャーロットって呼んでもいい?僕はロン。一緒にお茶にしない?ローズティーは好き?」

「ええっと、シャーロットって呼んでもいいわ。一緒にお茶はするけれどローズティーみたいなお花系のお茶は好きじゃないわ。お花のジャムも。」

「OK、OK。じゃあ柑橘系は好き?レモンとかオレンジとか。」

「ええ、それは大好きよ。今朝レイチェルがオレンジチョコレートを持ってきてくれたの。貴方も食べる?」


声の高いロンはジュリエットと話しているような感覚で初めて会うのにまるで昨日もその前も会っていたかのように懐に入ってくる。


「わあ!ぜひ食べてみたい!嬉しいな。」

「貴方女の子みたいね。話しやすいわ。」

「あ、わかっちゃった?僕女の子になりたかったんだよね。女の子になって男の子と結婚したかったよ。まあ夢だけどさ。」

「ジョージと結婚したいの?」

「うーん、内緒だけどジョージとはちょっと。僕の好きなタイプではないかな。」

「ふうん。そこは気が合いそうね。じゃあどんなのがお好きなの?」


ロンは本当に女の子みたいだった。

食べる時も肩まである髪をかきあげる仕草も時々首を傾げて笑う時も女の子そのものだ。


「ジョージの所へ来るのはなぜ?呼ばれたら来なくちゃいけないの?」

「うーん、まあね。」


シャーロットは寂しげなロンを同情の目で見ていた時だった。


「ロン、あなた湖へ行く予定がある?行かないほうがいいわ。」

「あ、何か見えた?ジョージが言っていたけれど未来視の力があるんでしょ?」

「たまーーーーーーに見えるだけよ。」

「すごいね。湖かぁ、落とされちゃうのかなぁ。僕たち同性愛者の関係ってね、驚くほど狭いんだ。だから痴情のもつれ?みたいなのが多いの。」

「やきもちって事ね。」

「そう、僕の彼もすっごく束縛してくるんだよ。でも愛されてるって感じがして嫌じゃないんだよね。」


なんと彼がいてもジョージのところに来なければならいのか。

複雑な彼らの関係は大変そうだ。


「そうそう、来週このお屋敷でパーティーがあるんだよ。もちろん僕たちの為のパーティーなんだ。国中の同性愛者が集まるから楽しみー。」

「彼がいるのに?」

「君には理解できないだろうけどお付き合いとワンナイトの関係は別なんだよ。君は見ないほうがいいかもね。お部屋で大人しくしてなよ。」



この屋敷から逃げ出す方法もないままシャーロットは同性愛者の知識だけが無駄に増えていった。


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