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序章.次なる遠征


少しずつですが書き溜めたので順次投稿再開していきます。

 

「もう薬草の採取クエストは飽きた!」


 開口一番に文句を垂れたのは見習い女神のリゼだった。

 ギルド内にある酒場の椅子から立ち上がって堂々と腰に手を当てながら眉を吊り上げている。


「しょうがねえだろー。俺達の実力じゃ簡単なクエストしか受けられねえんだし、安全且つ自由に動けるとなったら採取クエストが一番効率いいんだって」


 対してリゼの正面に座りながらだらしなく顎までテーブルに乗せちゃっているのは真道幸輝。

 人の命を救おうとして死にかけたところを大女神に選ばれ、今いる世界に転移させられてきた現代っ子である。


 そんな二人は今日もクエストを受けて報酬のお金を貰わないとまともなご飯にありつけない状況に陥っていた。

 理由はとても簡単。

 二人ともまともに戦えないので討伐系のクエストも護衛クエストも受けられず、採取クエストや配達クエストなど簡単で報酬が少ないものしか受けられないからだ。


「だからってナラタ村から帰って以来二日間ずっと薬草採取だよ!? しかも近場の場所を選んで一日に二回も! もはや何回洗っても手から草の匂いがするんだから! いい加減他のクエストもやりたいー!」


「それはお前が帰る前に村長がくれた食べ物ほぼ全部食べたせいだろうが! おかげでその日の夜はお子様ランチにも及ばない肉と野菜食って余計に腹減ったんだからな! 貴重な食料を独占したお前に文句を言われる筋合いはねえ!」


「うっ……それはごめんだけど……で、でもそれはもう過ぎちゃった話だからどうしようもないじゃん! 今はクエストの方向性の話をしてるんだよ! 手が薬草臭くなるのは嫌なのーっ!」


 一瞬申し訳なさそうな顔をしたと思ったらすぐにまたわがままを言い出した。

 この女神、もはや女神というよりただのわがまま娘の生まれ変わりとかではないだろうな。


「つっても他に俺達がいけそうなクエストあんのかよ? 討伐クエストは返り討ちに遭うだけだからなしだぞー。命懸けの戦いはもうバロッグとジュレオン戦で懲り懲りなんだ。それに簡単な魔物討伐つっても大したお金にはならないしなぁ〜、何より俺にとっちゃ割に合わなすぎるし」


 ナラタ村から帰ってきたあの日、幸輝達を待っていたのはギルドの冒険者達と受付嬢からの賞賛の言葉と、元々受注していた配達クエストの報酬金だった。

 そう、命懸けで戦い文字通りボロボロになりながらも生き残った幸輝だが、あくまで報酬は配達クエストでのお金のみだったのだ。


 追加報酬なんてものは無し。盗賊達と戦ったのも言葉を話す魔物ジュレオンと戦ったのもボーナス扱いにはならなかった。

 いわば給料が支払われないサービス残業扱いである。


(そりゃあ突然のトラブルだったしセレナだけに任せず残る選択をしたのは俺達だけど、せめて酒場のメニューの割引くらいはしてほしかった……)


 まあ救援に来てくれたセレナも報酬を貰っていなかったので幸輝が何かを言えるはずもなかった。

 受付嬢のサラはとても褒めてくれていたが、それで幸輝の貧乏生活が潤う訳でもない。やはり村長からの食料が一瞬で尽きたのが痛すぎる。


 酒場のテーブルで項垂れているのも空腹からによるものだ。

 ちなみに村から帰ってきてからはまず生活必需品を揃えようという事になり、夜寝る時用の服とか寒い場合の毛布やその他諸々を追加で買っていたらあっという間に資金が尽きた。


 おかげで食事は味が薄めのスープと量が少ない野菜炒めで何とか賄っている。

 全体的にひもじい。せめて肉は無理でもお米なら何とかならないかなと思う日本人少年である。


 うーん、とクエストボードの前でにらめっこしているリゼを遠目から見ていると、視界の端からこちらに近づいてくる影があった。

 受付嬢のサラだ。


「おはようございますコウキさん。その様子だと、あまり良いクエストはありませんでしたか?」


「どもです……リゼが採取クエストは飽きたって言うから他のを探させてる最中ですよ……」


「なるほど……コウキさんはなんか、ぐで〜ってされてますね?」


「絶賛空腹中なんで」


 改めて毎日お腹いっぱい食べられていた元の世界って恵まれていたんだなと実感している。

 いっそここの酒場でしばらく働かせてもらうのも一つの手かと、キッチンやら周りの席から漂ってくる良い香りだけを堪能しながら少年は思う。


 そんな幸輝を見てサラは後ろに持っていた一枚の紙をテーブルに置いた。


「あのぉ、ではこういうクエストなんかはどうでしょう?」


「んぁ?」


 近くに置かれた紙が気になり顔を上げる。

 見た目はクエストボードに貼ってあるような普通の依頼書だった。


「何々〜? なんか良いクエストでもあったの?」


 幸輝に話しかけているサラに気付いたリゼが戻ってくるのを確認すると、サラが依頼内容を簡潔に読み上げてくれる。


「ラーノの近くにナラタ村とはまた違う村があるんですけど、そこにある孤児院の人手が今少ないらしく、そのお手伝いも兼ねて子供達の面倒を見てほしいという依頼です」


 依頼書にも同じような事が書かれている。

 子供の面倒を見る仕事、というのも何だかクエストより子守り感覚が強い。


「えっと、具体的にはどういった内容で?」


「そうですねぇ……この孤児院は子供が多いので一緒に遊んだりお勉強を見てあげたり寝かしつけたりするのがメインになるかと」


 まじでただの子守りと変わらなかった。

 普通に子供達と遊んだり色々教えたりするだけの仕事なら、サラが幸輝達にこのクエストを持ってきたのも納得だ。


 ただ。


「う〜ん……なあリゼ、子供の面倒見るって結構体力使ったりするって聞くけど、空腹状態の俺達がもつと思うか?」


「私なら途中でばたんきゅーする自信があるよ」


 自信満々に言われても困る。

 かくいう幸輝もおそらくそうなるだろうが。


「その辺は多分問題ないと思いますよ」


 営業スマイルでそう言ったのはサラだ。

 まるで幸輝達の食料事情を知っているかのような口ぶりだった。


「クエスト中は孤児院の方からお食事が出される予定となってるので」


「「食事ッ!?」」


 見事な食い付きっぷりである。


「それってお金いりますか!?」


「いえ、いらないと思いますけど……」


「幸輝幸輝っ、子供達のお世話をするだけでお金貰えるし食事付きだよ! しかも無料! こんなの行くしかないよね!」


「ついでにこのクエストは二泊三日の条件が付いていますが、逆を言えばその分だけの食費を浮かす事もできますね」


「「そのクエスト受けまぁすッ!!」」


 もはや断る理由などどこにもなかった。


この作品をカクヨム様の方でも投稿し始めました。

あちらでは一話毎にサブタイを付けてるので、気になる方はそちらも是非に〜!

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