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4.異なる世界(4)

「こっちは女神として初めてのお仕事が転移者のサポートっていうレアな役職だからそれなりに予習もしてたけどやっぱり緊張もしてるし役に立てるよう努力もしようと思ってるのに登場していきなり言われるのがこれってなに!?」


「いやあ、無礼を承知で言うけど俺が求めてたのは頭脳明晰で超優秀な女神様でして、中途半端というか低ランク気味なあなた様に来られてもこの先ちゃんと生きていけるか分かんないし反応に困ると言いますか……というか一気にキャラ変わってません? あと近い……」


 最初の女神らしさはどこへやら。リゼと名乗る女神はもはや女神としてのキャラを清々しいほどに放り捨てていた。

 思い切り幸輝に詰め寄り怒涛の言葉攻めは止めてほしかったりする。普通に距離も近くて女神だからかは知らないがめちゃくちゃ良い匂いがするのだ。


「無礼すぎる! 私だって自分で平均以下って言っちゃうのはちょっとアレだと思うけどこれでも見習いなりに勉強とか頑張ったんだから! 女神は色んな人達から敬愛されるような存在なんだからね! その女神に対してこんな言い草はあまりにも不敬すぎるよ!!」


 自分で敬愛されるような存在とか言っちゃうと逆に胡散臭いとしか思えないのは何故だろうか。

 あとこの見習い女神、完全に怒っていらっしゃる。それはもうプンスカプンスカしている。

 彼女の口は留まる事を知らない。


「うん、それはまあ俺もちょっと言い過」


「私が母性と慈愛に溢れる女神だからまだいいけど、女神の私にすらこんな失礼なこと言うんだったらそれはもう一般の人に対しても普段から失礼な態度取るんだろうねえ!」


「や、さすがにそんな事はな」


「はあー! 何でこんな人が転移者になんか選ばれたんだろうな~!? 本当に人を助けるために命を懸けたのかな~? 女神の私から見たらそうは見えないけどな~!!」


「な、なあ、とりあえずちょっと落ち着」


「けど私は女神だし? 寛容で器の大きい女神ですし~!? あなたの無礼で不敬な言動にもまあ女神的に許してあげてもいいですけどぉ~?」


「……」


「はあー不敬不敬! 不敬だなー! ……こほんっ、本来なら女神に対しての不敬罪で即極刑だけど許してさしあげます。さあ、態度を改めてあなたの口から言ってごらんなさい。『リゼ様すみませんでした。もう二度と失言しないよう以後気を付けます。だからこれから僕と一緒に冒険してください。よろしくお願いします』って。はい、どう」


「うるせええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!」


 真道幸輝、女神に対して初の暴言デビューの瞬間であった。

 突然の咆哮。

 これにはリゼも呆然とするしかないようで目をぱちくりさせていた。


「……はえ?」


「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがってこの野郎! こちとらあの大女神のせいで持っていけるはずの能力を一つも持ってこれなかったんだぞゴルァ!!」


「あ、や、あの」


「本来それがあってこその能力がないんだったら何もできねえしあとはサポート役の女神に縋るしかねえってのに何で微妙な女神寄越されなきゃなんねえんだ文句を言いてえのはこっちなんだっつうのバーカ! チェンジだチェンジ! 女神チェンジさせろやあー!!」


「は、はあーっ!? そんなの私の知ったこっちゃないし! さっさと能力選んどけばそうなる事もなかったんじゃないの!? レヴィリエ様から事前に現れる女神の事も少しは聞いてたんならそれを承知の上でちゃんと自分の中で心の整理付けときなよ! それにサポート役女神にそんな便利なリセマラ機能なんてありません~残念でした~!!」


「ああん!?」


「なぁん!?」


 バッチバチにメンチを切り合っていた。

 それはもう相性の悪さを体現したかのような怒号の飛び交いを初対面でやり合う二人。これから共に冒険をするとは思えないほどにお互いの印象は最悪を通り越していたのだった。


 とはいえこのままいがみ合っていても何も始まらないのは目に見えている。そもそも大女神に気に入られたとはいえ、その大女神自身がいきなり有無を言わさず幸輝を異世界に落とすほどだ。あんないい加減で不慣れな大女神が担当した時点で自分に優秀な女神が付いて来るという優遇接待なんてものはあるはずないという事を、浮かれていた少年は忘れていた。

 幸輝としては何も分からない異世界で女神と喧嘩したままむくれて置いてかれたりでもされてしまうと、それこそ路頭に迷ってバッドエンド直通ルートである。リゼもそれは分かっているようで、女神としての役割を今一度思い出していたらしく態度を改めた。


「……あー、ごほんっ、取り乱してしまい失礼しました。私リゼはあなたをサポートするための女神なので、不安もあるでしょうがこれからよろしくお願いします。……微妙な見習い女神だけど」


 どうやら優秀じゃないのを相当気にしているらしい。

 最後だけ少し唇が尖っていた。冷静になってみると自分も少し、というより勢いに任せて思い切りボロクソ言っていたのはどうかと思う。


 ましてや相手は見習いとはいえ女神だ。

 共に支え合う仲間だが、遥かに上の存在と常に一緒にいる以上あまり余計な事は言わない方が身のためかもしれない。

 とりあえずは謝罪からだろう。


「……いや、俺もごめん。初めての異世界だからって少し焦ってたんだと思う。分からない事だらけだし、こちらこそよろしく頼むよ」


 少なくとも最悪の雰囲気はどこかへ消え去ったか。

 それをリゼも察したのか、女神の役割をさっそく果たそうと口を開く。


「はい。ではまずあの街に行きましょう。あそこは初級〜中級者の冒険者が多く集まる始まりの街みたいなものなので安心してください。その道すがらこの世界について簡単な説明をします」


 あらかた予想はしていたが的中だったようだ。

 若干距離はあるが、おそらく道中で色々説明するために大女神レヴィリエが不器用なりに配慮したのだろうと思う。

 と、ここで幸輝は気になる事があり歩き出したリゼに声をかける。


「なあ、別にそんな言葉遣いしなくてもいいぞ。さっきのお前がキレてた時の口調が自然な話し方なんだろ? どうせこれから一緒にいるんだし、畏まった態度は無しでいこうぜ」


「え……? ああ、うん、そっか……そうだね。私もそっちの方が親しめると思うし、じゃあ遠慮なくそうさせてもらう事にするね」


 女神らしい口調ではないかもしれないが、ずっと丁寧語とかでいられると却ってこちらも気を遣ってしまいそうだしちょうど良いだろう。

 馴れ初めはこの辺で、歩きながらリゼの説明は始まった。


「まずこの世界に住んでる人達の事だけど、人間以外にも様々な種族がいるの。一つは幸輝と同じような人間、人族、あるいは人間族とも言われてるね。私もこの世界だとそのカテゴリーに入るのかな。二つ目は亜人族。異種族とも呼ばれるけど、人間に似た容姿に動物の耳が生えてたり身長が普通より一回り小さいのとか色々な名称の亜人族がいるよ。で、もう一つは魔族。簡単に言うとモンスターや魔物と言った異形の生物だね。中には人型とかもいるし知能レベルが高かったり強い魔物だと言葉を話せるのも多いんだよ。と、有名どころはこんな感じかな」


「その辺りは予想通りというか、王道って感じだな」


 まさにゲームの世界と言ったところか。

 幸輝が思い浮かべてるものとほとんど一致したような模範的な世界らしい。


「うん。あ、あともう一つ言っておかないといけないのが魔人族だね」


 ここで突然聞き慣れない単語が出てきた。

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