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2.異なる世界(2)

 異世界。文字通りの異なる世界。

 幸輝はこの単語に聞き覚えがあると言えばある。子供の頃からヒーロー物の特撮やアニメは見ていたし、その影響で今もマンガやアニメはそれなりに見ている。


 そういうのを見ているとたまに出てくるのが『異世界』という単語だった。

 主人公が元にいた世界で何らかの死を遂げた後、異世界に転生して他を圧倒する能力をふんだんに使い無双する痛快で爽快な物語。このような類似した展開のアニメも何度か見たことある。


「そうです。あなたが今想像しているようなイメージと似たような世界です。もちろんあなたが別の選択肢を選んで少女を助けず生存したままの平行世界やあなたが元々存在しない別世界もあります。それとちなみに言っておきますがあなたには生まれ変わりなどをしてもらう予定はありません。その身のまま異世界に行ってもらいます。これは決定事項なので」


「そこは強制なのか」


「ええ。さて、今回あなたに行ってもらう世界はゲームにも出てくるような分かりやすいファンタジー世界です。ただし文化レベルはあなたの世界に近いものでもありますから、所々古かったり現代化されてたりと馴染みがあるものも結構溢れていますよ」


「ゲームって……じゃあ、まさかその異世界にはモンスターとか、魔物みたいなのがいるって事かよ? それって普通に危険なんじゃないのか?」


「基本は大丈夫です。そのためにゲームという例を出したんですよ? そこには当然人間などが住んでいますし、魔物を倒すための手段として武器や防具もあります。それに何の異能もない方からすればこれを聞くだけで魅力に感じると思いますが、その世界に行けば『魔法』だって使えるのです」


「魔法……だと……!?」


 少年心というか男心をめちゃくちゃ刺激する言葉を聞いてしまった気がする。

 世の男子と言えば、週刊少年漫画などで一度は特殊な能力を身に付けたいと思った事があるはずだ。手から何か光線的なものが出ないか、ある日突然覚醒しちゃったりしないか、巨大な何かに変身できないかとか、そういった妄想を繰り返していた者も少なくはないだろう。


 かくいう真道幸輝もそれだった。

 ヒーローに憧れていた頃があったが故にそういう感情は人一倍強かったのだ。誰かが助けを求めている時に颯爽とどこからともなく現れて悪を倒す正義のヒーロー。そこまでとはいかなくても少なからずこの異世界に行けば似たような異能が使えるようになる……?


「はい、魔力に関しては本人の力量次第ですが、使えるのは使えます。あと言っておく事は……そうですね。あなたは異世界で自由に生活してもらっても構いません」


「自由に……? あれ、普通こういうのって転移者とかに目標を課すんじゃないのか? 例えば世界征服を目論んでる敵を倒せ〜的な」


「何を基準にそう言っているかは分かりかねますが、私にとってはあなたが異世界に行くならそれで目標達成なのですよ。ですがその辺りはあなたの自由です。壮大な冒険に出るも良し、自由気ままに異世界生活をのんびり満喫するも良し。それにあなたは私のお眼鏡に適ったので特別枠としてサポート役の見習い女神も付いてきますよ。とても良い条件だとは思いませんか? ね? ね?」


 にっこり笑顔で言葉にできない威圧感を放ってくる大女神。

 ノーと言ってもごり押ししてきそうな雰囲気しか感じないが、幸輝にとってはもはや生まれ変わるよりも異世界への興味が強くなっていた。どうせ元の世界に戻れないのなら前へ進むしかないのである。それにサポートしてくれる女神もいるのはとてもありがたい。


「……分かった。元々死ぬ運命だったのに助けてもらったんだ。その異世界ってのに行かせてもらうよ。個人的に魔法とか色々興味もあるしな」


「ふふ、あなたならそう言ってくれると思っていましたよ。やはり私の目に狂いはありませんでしたっ。ではさっそく異世界へ転移する手続きをしましょう!」


「ああ、けどその前に質問していい?」


「何でしょうか?」


「転移とか転生って俺の知ってるイメージだと、異世界に行く前に何かしらその世界で活躍できるような能力とか武器を貰えるのが定番な気がするんだけど、そういうのって実際ある?」


「……あー、えっとぉ……あ、はい、一応ありはしますけど……」


「マジでか! ははっ、やっぱそうじゃないかって思ってたんだよな~。それって俺も貰えんの? もしくは自分で選ばせてくれる感じのやつ?」


「えーちょっと待ってくださいね。今確認しますから……」


 何かを確認しながら答えたレヴィリエに分かりやすくテンションが上がる真道幸輝。

 子供の頃から使ってみたかった能力や魔法にウッキウキであった。実際転移特典なんてものが貰えるのか分からなかったが案外言ってみるものだと思う。あくまで創作物の定番だと思っていたけど日本の漫画文化はやはり偉大だ。妄想の範疇でしかなかった定番ルールが本当に適用されていたのだから。


 そんな幸輝とは裏腹に大女神レヴィリエは色々と四苦八苦しながら幸輝の目からすれば見えない何かを操作していた。


「手続きってそんなに大変なのか?」


「……いえ、こういうのは普段案内役の女神に任せているんです。普通の死者自体もまずはここに来て女神に案内されてから魂を移動させるので。いわばここは死者の案内所みたいなものですね。つまり天界で普段から様々な世界を覗いてるだけの私にとっては慣れない事なんですよ。まったく、大女神の私が特例としてこういう雑務をしている事自体珍しいんですからね?」


「お、おう……それはとてもありがたい……です」


 自分を大女神と言って案内役の女神だとか、先程はサポートをしてくれる見習い女神だとか言っていたが、やはり大女神と言い張るものだから普通の女神よりも位が高いのだろうか。

 そういえばさっき出会った一言目にコスプレかとか言ってしまっていたけど、そう考えると普通に不敬すぎる反応だったかもしれない。


(いやまさか女神とは思わなかったし、何なら大女神とか余計思わなかったしっ。普通の高校生にそれを分かれってのもだいぶ酷だよな……?)


 平凡な高校生が一目で女神だのという存在と判別できたらその時点でもう平凡ではないのである。あくまで真道幸輝はごく普通の人間であり高校一年生の少年だ。

 超常なる現象に遭遇しても普通の人間の反応しかできないのは当然だろう。

 と、単なる高校生が必死に自分を正当化している内にレヴィリエは何かを見つけたようで、今度は手慣れた動作で指を動かしていた。


「あ、あったあったありました。こちらが今から案内する異世界に対応している転移者特典の武器、もしくは能力の一覧ですね。どれも異世界で通用するようなそれなりの力が備わってるらしいです」


「おお、すげえ。ここに書かれてるの全部特典で持っていけんの!?」


「一覧はそれで全部ですが選べるのは全部ではありません。持っていける特典(ギフト)は基本一つだけです。たまに個人によってランダムで他の能力が恩恵として付いてくる事もありますけど、それはその方の類稀なる才能と本質が合わさってこそなので滅多にないのですよ」


 幸輝の目の前に表示されたのはまるでゲームのアイテム欄を模したような画面だった。

 そこにはありとあらゆる武器、能力が書かれている。見たところその全てが特別な力を有している特典(ギフト)と考えていいだろう。


 基本的にこういうのは何を選択したとしてもその異世界では想像を軽く超えるような威力を発揮するものだ。まさに夢の溢れる宝の宝庫だが、何せ数が多すぎてどれを選べばいいのかよく分かっていない。

 それに幸輝にとっては何を選ぶかで今後の異世界生活も変わってくる。できる事なら戦闘にも使えて、日常でもそれなりに使えそうな便利なモノがいい。


「うーん、迷うな……。炎系の馬鹿げた能力とか割と定番だけど、やっぱ武器を使ってみたい気もするし……いっそのこと全部盛りみたいな能力とかないのかこれ」



 強欲すぎる欲望を吐露していた幸輝とは別に、大女神レヴィリエはそもそも何故この少年を今更ここに呼んで異世界へ送り出そうとしていたのかを思い出していた。


(あ、そういえばこの方に特典(ギフト)を授けるのは逆によろしくありませんでしたね。大女神の私とした事が、不慣れな事を二回もするものだからすっかり忘れていたわ)


 そうと決まれば話は早かった。

 レヴィリエは異世界へのゲートを開く準備を始め、その照準を幸輝の真下へと合わせる。当然、謎の円型の光がいきなり足元に来れば気が付かない少年ではない。


「ん? 何これ?」


「異世界へ通じているゲートです。これからあなたには異世界へ行ってもらいます」


「いや、それは分かってるんだけどさ。俺まだどの能力持ってくか選んでないんだけど?」


「大丈夫、後の事はサポート役の見習い女神が全部説明してくれるでしょう。ちなみに女神にも個性というか性格というのが色々ありまして、女神といえど彼女達にも得手不得手があるので決して完璧な存在ではありません。できれば優しくしてあげてくれると幸いです。大丈夫、みんな良い子ですから」


「うん、話聞いてる? 俺まだ何も選んでな」


「むしろあなたにそんなモノはいりません。真道幸輝にはもっと相応しい力があるでしょうし、ここにあるモノを持っていけたとしてもそんな都合の良い世界でもないので。あ、おまけと言ってはなんですが、その服装だけは唯一異世界に持ち込める特別品として特殊な加工を施しておいてあげます。ということで真道幸輝さん、自由気ままな異世界生活をお楽しみに。……そして、期待していますよ」


「いやちょ、だから待ちやが」


 瞬間。

 大女神は幸輝の話を適当に流したまま彼を真下に落下させたのだった。


「ふぅっっっざけんなァァァああああああああああああああああああああああああッッッ!?」


 まさに急降下。

 紐無しバンジーよろしくといった感じで、真道幸輝は死にそうな思いをさっそく味わいながら落ちていく。


とりあえず一章の終わりまでは毎日投稿できるよう頑張ります。


なろうの仕組みをまだよく理解できていないですが、評価?などを頂けるとたくさんの人の目に留まる可能性が高くなると聞いたのでどうかよろしくお願いします。

モチベーションに繋がるので。

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