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25.クエストへ(10)

「うぅ、全然寝れなかった……私の馬車で寝るというささやかな夢がぁ〜……!」


「随分安い夢だな」


 馬車に乗ってから約一時間。

 幸い道中は何もなく無事に目的の村まで辿り着いた。


 一時間も馬車での移動ということだからほとんどは暇な時間になってしまうと思っていたが、案外そのような結果にはならなかった。

 何故なら初めての遠出だ。初めての世界、未知の景色が広がっているならそれに夢中になってしまうのが少年心である。ただの平原や荒地なんかも広大というだけで見ているだけでもワクワクして十分に楽しめちゃっていたのだ。


 唯一の不満点は隣の女神が椅子に寝転がって何度も睡眠にトライするも失敗を繰り返し、挙げ句の果てに幸輝の肩に頭を乗せて寝ようとしても結局馬車の揺れで起こされぶつくさ言っていたことだろうか。

 そもそも乗っていた馬車の椅子の幅が狭い時点で寝るのに適してないタイプだったのだ。見習い女神のささやかな夢、破れたり。


「ナラタ村、だっけか。なんつうか……これこそ最初の村って感じだな……」


「言っちゃえば田舎みたいなものだからね。住んでる人も高齢の人の方が少し多いってサラさん言ってたよ」


 見た限り藁や木材で建てられた家が多く、風が吹けば砂煙が舞うくらいまともな舗装もされていない地面。

 むしろ幸輝が想像していた異世界最初の街はこういうものだったはずだ。建築物の数とかを見てるととても街とも言えないが。


「とりあえず荷物届けるか。届け先は村長さんって書いてるけど場所は〜……あれ、そういやどこに住んでるか聞いてたっけ?」


「私は聞いてないよ〜。幸輝がこのクエスト予約してたんだからサラさんに聞いてたんじゃないの?」


「……」


 純粋な疑問が真道幸輝を襲う。

 今日は快晴だ。変に額から流れてくる雫はきっと嫌な汗じゃなくて普通に直射日光を浴びているからに違いない。暑いのに冷たい冷や汗が出てくるなんていったいどういうメカニズムなのだろうか。人間の体は不思議だ。


「……村の人に聞こうか」


「オッケー、じゃあいつも通り私が聞いてくるね!」


 見た目と持ち前の愛想の良さからすぐ他人と打ち解けられるリゼが、さっそく近くを歩いている村人に声をかけに行った。

 当然と言えば当然だが、ラーノと比べると住んでいる人達の服装も結構違う。ここにいる人達は主に生成色をしたチュニック風のシャツやワンピース型のローブを着ている人が多い。


 村の真ん中辺りに一番高い建造物として櫓のようなものがある以外は周りに大きな建物もないことから、大がかりな商いをしている訳でもなさそうだ。

 おそらく農業に林業、畜産などをメインにしている農村ってとこだろう。そこら辺に丸太や角材などが置かれているし、草刈り鎌や木こり用のノコギリを持った男性村人が談笑しながら歩いている。


「幸輝ー、村長さんの家はあっち方面だって〜」


「あいよー」


 場所を聞き終えたリゼが手を振ってきた。

 地面に置いていた大きめの木箱を背に背負う。中々に重たいが、背負い紐が付いていてリュックのように背負えるのでまだありがたい。


 場所を教えてくれた村人に感謝の意味を込めて会釈をしながらリゼに着いていく。

 その道中で時々子供達が元気に走り回っているのを見ると、規模は小さくても平和でのどかな村なんだなと思う。元いた世界では喧騒が飛び交う都会の方に住んでいたため、こういった静かだけど人々の活気がある村はむしろ新鮮で落ち着く。やはり平和なのが一番だ。


「ねえ幸輝、あれ見て! 羊とか牛とかいっぱいいるよ!」


「あっちは畜産系ってことかな。放牧もされてるのか……ってうおっ!」


「ゴゲゴっ」


 リゼの指差した方には牛や羊、ヤギとかもいた。たまに色とか角の形が違う個体も見かけるが、あれはおそらく異世界ならではだからだろう。ということは村の真ん中にある櫓は放牧している動物達を観察するためにあるのかもしれない。

 家畜として飼われているなら別段驚く必要もない。ただいきなり足元でニワトリみたいなのが鳴き始めるから別の意味で驚いてしまった。こんなのもいるのか。というかニワトリとはまた若干見た目も鳴き声も違うが、朝の目覚まし用だったりするのだろうか。


「ラーノじゃ見かけねえ生物だからさすがに身構えちまうな……」


「ほっほっほ、ニワトリで驚く冒険者がいるとは中々に面白い光景ですなぁ」


「どぅわっ!? この世界のニワトリって喋んのッ!?」


「そっちじゃないよ幸輝。今のはこの人が喋ったんだよ」


「どうも、村長です。今回はあなた達が配送を担当してくれた冒険者ですな」


 横を見たらリゼの隣に小柄なお爺さんがいた。しかも髭がサンタさんくらいある。

 なるほど、つまり自分はこのニワトリがいきなり喋り出したと勘違いして勝手にビビっただけか、という結論から初対面のお爺さんにそれを見られる醜態を晒した訳だ。赤面が止まらない。


「は、ははっ……ど、どうもぉ……」

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