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第四話:宵闇《よいやみ》アンサーコール

「はーっ…疲れた」



竜斗は家に帰るなり、玄関で力尽きていた。というのも、初めて廻廊に潜って物を漁ったり、エンティティと戦闘したり、極めつきには…



「謎の女性に追いかけられたり…はぁ、身体ダルい」



ーーー数時間前ーーー



「ふーっ、危なかった…」



「おい、あのドレス着たような女の人って…」



「ん〜?いや、実はまだよく分かってないんだけど…」



…どうやら、最後に出てきたあの女性は廻廊の番人のようなものだと考えられているが、詳しいことは何も判明していないらしい。しかし、あの女性の出現条件はある程度分かっているようで…


・【廻廊内にエンティティが10体以上いるor長時間エンティティが放置されている】



・【廻廊内のエンティティを30体以上倒す】



・【長時間廻廊に滞在するor複数人で廻廊内に滞在する】



…以上の条件を満たすと、次の廻廊の照明が黒みがかり、黒い靄のようなものを発生させて喪服の女性が出現するようだ。




回想終了…




「…何をしているんだ、竜斗?」



「うおっ!?」



急に声をかけられて飛び起き、声のした方へ視線を向けると、そこにはスーツ姿の義姉…遠坂祐奈がいた。祐奈は不思議そうに首を傾げていたが、突然竜斗の頭を胸に抱き寄せた。



「ちょっ…!?」



「どうした、熱でもあるのか?それとも…どこか痛いのか…?」



「いや、ちょっと…疲れたっ、だけだから…っ!!」




おでこに手を置かれたり身体をあちこち触られていたが、何とか藻掻いて姉の胸から脱出することに成功する。



それから、リビングで祐奈と夜ご飯を食べたり、スマホゲームで寝るまで時間を潰したりしたのだが…



「…眠れねぇ…」



1日に色んなことがあり過ぎたせいか、眠る気にもなれず、気晴らしに夜に散歩をしてみることにした。祐奈は急な仕事が入ったようで、少し前に家を出ている。



「外は結構涼しいなー…ん?」



竜斗はスマホと手をポケットに突っ込みながら、静まり返った街を歩いていると、黒いパーカーを着てフードを被った立夏を見つけた。



「おーい、立夏。なにしてんだ?」



「えっ、竜斗…なんでここに…?」



目を丸くしている立夏の後ろに、コートを着た暗い紫色の髪をした女性がいることに気づいた。



「えっと、そっちの人は…?」



「えぇっ!?竜斗みーーーむぐぅっ」



「あぁ、一応彼女の保護者でね?久しぶりに時間が作れたから一緒にいるだけだよ。それより、君が立夏の話していた竜斗くんかい?」



「あ、はい…?」



紫色の瞳でこちらを見る女性に、どこか既視感を覚えるが、その正体は分からなかった。



「あっと、そろそろ時間だ。先に帰るけど、竜斗くんはこのあと予定はあるかい?」



「いえ…」



「それなら、少し立夏と付き合ってくれないか?家に帰っても寝るだけなのだから、そっちのほうが楽しいだろう?」



「ちょっと、何を言って…」



「俺はこのあとは特に予定とかないのでいいですけど…」



「そうか、それじゃあ頼んだよ?彼氏くん♪」



目を細めて笑った女性はそう言って背中を見せ、手を振って去っていった。横にいる立夏へ視線を向けると、一瞬ぽかんっとしていたものの、こちらを見てから顔を真っ赤にしてアタフタしていた。



「い、いや、ちがうからね!?勝手に勘違いしてるだけだから…っ!?」



「そ、そうか…」



「そ、そそそうだよっ!!あっ、あー、確かこの時間でも開いてるゲームセンターがあるんだけど、今から行かないっ!?」



立夏に手を引かれ、竜斗は月明かりが照らす夜の街に躍り出た…




………



……






月明かりの下、裏路地にて一人のコートを着た女性がいた。



「遠坂竜斗、かぁ…それに、あの子…どっかで見たことあるというか、関係があるというか…ま、いいか」



女性はコートの懐から白いのっぺりとした仮面を出して、なんの躊躇もなく被る。そして、パチンっと指を鳴らすと…そこには、最初から誰もいなかったかのように、静寂だけが支配していた…




………




……







あれから、格闘ゲームの台やシューティングホラーゲームの台、UFOキャッチャーを周っていった。


「…あのさ」



「ん?どうした?」



「…竜斗はさ、大切な人っている?」



「大切な人か…んーと、姉さんかな…?」



竜斗と立夏は、街にある噴水広場のベンチで途中の自販機で買ったコーヒーを片手にのんびりしていた。



「もし、もしもだよ?自分でも知らないうちに、大切な人を騙して、傷つけてて…何もかも手遅れになった後に、そのことに気付いたら…竜斗ならどうする?」



立夏は俯いて、少し震えた声でそんなことを聞いてきた。



「うーん、難しいな。まぁ、俺だったら…好きなものでも買って、土下座して許してもらうかな…?」



「うわっ…ろ、露骨にご機嫌取りするんだね?」



「そりゃそうだろ、うちの姉は手ぶらで許してくれるとは思えないからな〜…ま、誠意を見せれば許してくれるんじゃないか?」



「…そうかな?」



「そうだよ」



「そっか、そうなんだ…うん!!聞いてくれてありがと♪」



立夏は立ち上がって、竜斗に対してとびっきりの笑顔を向けた。



「役に立ったみたいで良かったよ」



「えへへ、色々と付き合ってくれてありがとね♪」



立夏は後ろ手に組み、上目遣いで竜斗を見上げて頬を緩ませる。それを見て、竜斗は気まずそうに目を逸らして頬を掻く。



「…なんか、デートみたいだったな」



「〜〜〜ッ!?」



「えっ、どうした?急に…」



「なななっ、何でもないっ!!そ、それじゃあまた学校でねッ!?」



急に顔を真っ赤にした立夏はそう言って、軽く手を振った後、フードを被って走り去っていった。竜斗は立夏の慌てた姿に対してちょっと可愛いなと思いつつ、空が白くなってきたのを感じながら家に帰った。




…そして、家の前に着き玄関の鍵を開けようとした瞬間、ドアがガチャッと開き…そこには、姉である遠坂祐奈が仁王立ちしていた。



「…おかえり」



「…えっと…ただいま…?」



…そして、太陽が登るまで玄関先で説教された。






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