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第ニ話:ループダイバー1

6時に投稿しても…まぁ、誤差でしょ!!

…竜斗の通う高校の前に黒塗りの車が止まっており、門の外には二人の女性がいた。



「…」



「えっと、遠坂先輩?」



「…なんだ?」



遠坂先輩と呼ばれた女性は竜斗と同じで黒髪に赤い瞳をしており、金網に背中を預け、手と脚を組みながら部下の女性に手で目隠しをされている。対して、その部下の女性は片方の瞳が紫色に淡く光っていて、その視界は校庭にいる竜斗達が映し出されていた。そして、それを竜斗の義姉も共有している。



「いつまで見てればいいですか…?」



「…もう少しだけ」



「それもう5回目ですよ?」



「…」



その指摘に遠坂祐奈は押し黙る。その言葉に反論できる余地がない事を分かっているからだ。



「心配なのは分かりますけど、過保護は良くないですよ?それに…」



「?」



「…それに、あんまりベッタリしすぎると逆に嫌われますよ」



「よし、早く仕事に行こう」



祐奈はその言葉を聞き即座に車に乗り込んだ。それを見て部下の女性は苦笑いを浮かべたが、『義弟のこと以外なら欠点のない人』という評価をしているので、信頼は厚い。



「…」



…それでも、窓から竜斗がいるであろう校庭へ顔を向けているのはちょっと拗らせ過ぎだと思うが。



「それじゃあ、行きますね」



女性は瞳を元の茶色(・・)に戻し、自身の先輩である遠坂を乗せて仕事へ向かった…




………



……





「はーい、それじゃあ今から適性検査をしま〜す、いぇーい!!」



「じー…」



「じぃー…」



「…」



海雪が盛り上げようとするが、両端から深月と立夏に何故か視線を向けられ、竜斗は何となく居た堪れない雰囲気になる。



「おーい、玲ちゃんはまだ分かるけど、何で立夏まで竜斗の事を見つめてるの?」



「いやー、さっきから複製(・・)しようとしてるんだけど…あははっ、すっごい頭いたーいっ♪」



立夏は笑みを浮かべながらも、突然鼻血を流して身体をふらつかせる。



「お、おい!?大丈夫か?」



「んひゅっ…う、うん…」



竜斗は咄嗟に抱きとめ、ハンカチでその鼻をおさえる。心配そうに顔を覗き込む竜斗に対して、立夏は変な声を漏らしてしまうが、すぐに返事をした。



「…女誑し…」



「え?」



「なんでもないよ〜?」



海雪がボソっと呟いた言葉は、どうやらよく聞こえていなかったようで、竜斗は聞き返すが、彼女は手をひらひらとさせて誤魔化す。



「とにかく、まずは君に色々と説明するから早くこっちに来て〜」



「えっと…」



「…あぁ、立夏はそこら辺のソファーに置いといていいからね?」



海雪にそう言われ、竜斗は立夏をそっと降ろしてから向かった。



「始めに、君のお姉さん…遠坂先輩がやっている仕事については知ってる?」



「えぇ、まぁ…ある程度は」



「一応説明するけど…」



…まず、この世界とは別の世界が複数存在している。



私達がいる世界と、もう一つの世界は密接に関係しており、私達の世界で感情が蓄積すると、もう一つの世界…神秘(アルカナ)を引き寄せてしまい、それと接触することでエンティティを同時に呼び寄せてしまう。



基本的にエンティティは私達人間を見つけると問答無用で襲いかかる。まだ仮定だけど、そのエンティティーの目的は私達の世界の侵食、要するに支配だとされている。



それに対処するのが、私達神秘の調査員アルカナ・オブザーバーなんだ。



アルカナ・オブザーバーの仕事は主に3つ。



一つは調査員(オブザーバー)

主に神秘空間を探索し、未知の物質やアイテムの確保、危険ならば現れるエンティティを倒し、その空間を沈静化させて事前に侵食を防ぐ。



次に、執行部隊(エクスキューション)

活動内容は調査員の目を潜り抜けて侵食してきた神秘の沈静化。内部に一般市民がいる可能性があるため、救助も行なう必要があるのでかなりの実力者でないと配属されない。




最後に守護者(ガーディアン)

主に神秘信仰者からの防衛。神秘を崇め、この世界のすべてを神秘に呑み込ませる事が目的の要注意団体から民間人及び本部、支部を守護する。


………



……





「…って、感じなんだけど?」



「…まぁ、姉からも一応は聞いていたので…あ、調査部ってことは、調査員のすることを部活で?」



「そう、この国って人手不足でさぁ〜、慣れさせるためって名目で若者を扱き使ってるんだよ!!…それはいいとして。それじゃあ早速、適性検査をしよっか!!」



海雪は机に長方形に加工された赤、青、緑、黄、黒、紫、そして透明な結晶があしらわれた折りたたみ式のプレートを置いた。



「さ、順番に指で触れてみて?」



竜斗は言われるがまま、赤から順に指をおいていく。その結果、ほぼ全てが反応を示した。



「うん、ちゃんと適性があったね〜…いや、普通は全部に適性があるのは珍しい(・・・)んだけど。あ、透明のやつは何の適性も無いと光るようになってるから…っと」



「うぇっ、おっとと!?」



海雪はそう言うと、机から赤い結晶を取り出して竜斗へぽいっと投げ渡す。竜斗は体勢を崩しかけながらもそれを受け取った。



「ふぅ…で、これは?」



「それは、一番扱いやすい【神秘:憤怒の記録核】だよ。ほら、『自分の中に入れ』って念じてみて?」



その言葉に頷き、念じながら少し力を入れて握ると突然目の前から消え、持っていた感覚も消える。



「本当に中に…って、出てきた!?」



「出し入れ自体は簡単だからね。あとは、軽く実戦で使い方を覚えたらいいかな?じゃあ立夏、よろしくね?」



海雪は部室の隅で白い布を掛けられていたそれから布を剥がす。すると、何処か不気味に感じる白い扉があった。海雪がその扉をギギギっと開けると、鼻血が止まった立夏と共に、真っ暗な扉の先へ入った…





ーーー【廻廊:|憤怒の神秘《Iram Arcana》】ーーー






ーそこは、左右にいくつかの扉がついた長い廊下だった。建材は木を使っているように見えるが、それにしてはやけに赤く、照明は赤い光が小さく灯されているだけであるため少し薄暗い。そして、よく分からない熱さを感じる。



「…」



「やっぱり最初はびっくりするよね〜♪まぁ、そのうち慣れるよ」



竜斗の立夏が完全に通ると、背後の扉がバタンッと音を立てて閉じられた。開けてみようとするが、カチャカチャと鳴るだけで開く気配はなかった。



「あぁ、そうそう。いい忘れてたけど…もし()を見つけたらすぐに視界から外して、写らない範囲に逃げてから、突き当りの扉を開けて逃げるんだよ?結構危ないことになるからね〜」



「あ、はい」



「も〜、堅いなぁ〜。そこは息を荒くして後ろから襲うところでしょ?」



「???」



頬を染めて身体をもじもじしている立夏に対して、先程の言葉の意味が全く理解できずに、竜斗の思考は宇宙に旅立ってしまった。



「…まぁ、冗談は置いておいて。最初は扉を片っ端から開けていくだけで良いから」



そう言って立夏は無数にある扉の一つを無造作に開ける。その先には壁があるだけで部屋は無かった。



「外れか〜そっちは?」



そう言われ、竜斗は扉の取っ手を握って開ける。すると、そこには小部屋が広がっており、中には机と棚が置かれていた。



「おお、当たりだね♪私は棚を調べるから、竜斗は机の引き出しをお願いね?」



そう言って立夏が棚をガサガサと漁り出したのを見て、竜斗も机の引き出しを引っ張って漁り始めた。



「調べるって、具体的には何を探すんだ?」



「ん?ここは憤怒だから…赤い宝石みたいなのがついてるアクセサリーとか本とかかな?お、噂をすればネックレスが出たよ」



その知らせを聞き、竜斗は空っぽであった一段目を戻し、二段目を開ける。そこには赤い宝石があしらわれた本が入っていた。



「!!凄いね、本系はあんまり出ないんだけどな〜。運がいいんだね?」



「…いや、なんか泥棒してるみたいで複雑なんだが…?」



「まぁ、そこは目を瞑って…ね?」



その後も引き出しを開けたが、他には何も入っていなかった。立夏の方へ視線を向けるが、どうやらそちらも他にめぼしいものがなかったようだ。



「それじゃ、竜斗の持ってる憤怒の記録核を赤い宝石に触れさせて?」



「ん?了解…っと」



すると、赤い宝石があしらわれた本が粒子となって記録核へと吸い込まれていった。



「いや〜、適正のある記録核を使わないと同じ種類の神秘系アイテムの収納ができないから、最悪の場合大っきいリュック背負って来なきゃいけないんだよね〜。適正持ちが来てくれて助かったよ」



「なっ、ちょっ!?」



立夏は目を細めてそう言いながら、さり気なく竜斗の腕に抱きつき、頬と胸を押し当てる。どういうわけかほんのりの頬をピンク色に染めて上目遣いでーーー



『立夏ぁ!!一体、何してるのかなぁ〜ッ!?』



「ぬぐぉっ!?」



突如、立夏から深雪の音割れ音声が流れ、耳からワイヤレスイヤホンのような物を勢いよく外した。



『さっきからなに竜斗にベタベタしてるのッ!?誰がそんな事をしていいって許可したかな!?』



「待って、海雪ちゃん…小膜が…やられる…」



「…」



「あっ、そんな目で見ないで…ゾクゾクしちゃうから」



立夏がしゃがんで頭を抑えているのを竜斗は少し引いたような目で見つめる。だが、立夏は嬉しそうな声色で返事をしてくるので、どうやら逆効果だったようだ。更に竜斗の目がきつくなって、それにより立夏が喜んでいたのはお察しだ。



「で、そんなに騒いで大丈夫なのか?」



「おっふ…あ、ごめん」



「…ここって、確か敵が出るんだろ?こんな騒いでたらこっちに来るんじゃ?」



「あぁ、大丈夫だよ?ループ一周目は基本的に敵は出ないって事が判明したらしいからね〜」



そんな会話をしながら、竜斗と立夏は廻廊の扉を開けて周っていた…そして、いくつかの角を曲がると…突き当たりに灰色の扉だけがあった。



「…あそこを通ればいいのか?」



「うん、そこの扉を開けたらループするよ。基本的にはこれの繰り返しだけど…ここからは憤怒の神秘固有のエンティティが出現するから、注意してね?」



…竜斗が扉を開けるとそこは先程となんら変わりない赤い廻廊であった。そして、同じように廻廊を探索している中、ある扉のドアノブを回して開けるとーーーそこには、赤い砂嵐のような模様をした人型のナニカがいた…



メモ:


・神秘とは?

人々の感情が蓄積したエネルギーを糧としている存在又は概念。通常、人々が認識できない裏世界で蓄積して廻廊を構築していくのだが、許容量を超えた時にそれが現実世界を侵食してしまう。過去の伝説や怪現象には侵食した神秘が関係しているのではという仮説が立てられている。



・記録核とは?

記録核は人の身で神秘の力を扱えるように、神秘の結晶に手を加えたもの。神秘が初めて発見されてたった3週間で開発されたが、それを成した人物の素性も行方も判っていない。尚、研究所自体は発見されており、そこで過去の神秘に関する文献と、『これで下地は完成した』と書かれた付箋が見つかった。



・憤怒の廻廊とは?

全体的に赤い廻廊。ここでは赤色の宝石や憤怒の神秘結晶とそれに関する本が見つかる。憤怒の廻廊では火や炎などの熱を扱ったり、エネルギーを蓄積して強化するパワータイプのエンティティが出現する。また、憤怒に適性を持つものが入ると妙な熱さを感じることがある。





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