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9:正夢

 「ひっ・・・・」


 何これ?何これ?何これ?嘘でしょーー?!


 私は信じられない気持ちでいっぱいで、両手で口を抑えまともに声が出なかった。


 !!!


 私は思い出した。

 そうだ!夢で見た化け物だ!確か子犬を丸のみした!!

 夢の時は、わずかな街灯の明かりでうっすらとは見えていたが、今は夕焼けで外はまだ明るいから、その化け物の姿ははっきりとわかった。


 口元以外は毛で覆われているからわからないが、夢で見た時と同じように大きな口があった。


『ウ~~ワンワンワンワン!!!!』


 私はジョンが吠えたことでハッとした。

 そうか、最近ペットが行方不明になるっていうのは、夢の通りならこいつの仕業!


 ジョンが狙われる!!

 私はとっさにジョンを庇おうとした。すると、ジョンは私の横をすり抜けて、むしろ化け物に向かって果敢にも飛び掛かってしまった。


 『ガァルルルル!!』


 「ジョン!ダメよ!!!」


 ジョンは私を助けようとしているのだと瞬時にわかった。だけど違うんだよ!私じゃなく てジョンが狙われているのに!


 『ガゥウウウウウッッ!』


 ジョンは化け物の腕に噛みついた!だけど、化け物の手は4本。ジョンはあっけなく薙ぎ払われてしまった。ジョンの身体が地面に叩きつけられてしまった!


 『キャイィィイイイン』


 「ジョンーーー!」


 私は慌ててジョンの元に駆け付けた。


 「ジョン!ジョン!大丈夫?」


 『クゥウゥゥゥン・・・・・』


 倒れたところは雑草が生えているところだったから多少はクッションになってくれてたらいいのだけど…。ジョン死なないよね?大丈夫だよね?!ジョンはヨロヨロと弱弱しくながらも、立ち上がろうとしていたが、痛みのせいか、上手く立てないでいた。


 「ジョン、立って!早く逃げよう!!」


 『ソ・・・レ・・・ヨ・・・コセ』


 !!化け物の声が真後ろで聞こえた!


 振り返ったら、化け物は距離を縮めてきていた。


 「ジョンは食べ物じゃないわ!どっか行ってよ!」


 そうだ!こちらに引きつければ!私はとっさに落ちていた石を拾い化け物へ投げた。


 「こっちよ!」


 私はジョンから離れて少しでもこちらに注意を引きつけようとした!ジョン、ジョン、お願い早く逃げて!だけど願いも虚しく、ジョンはまだ身体に痛みがあるらしく動けないでいる。


 どうしょう?こんなの私じゃどうしようもない!

 だけど、だけど!やらなくちゃ!!

 私は何か武器になる物がないか辺りを見回した。だけど川原ではやっぱり石しか転がっていない…だけど何もないよりマシだ!

 私はそれらを拾い、石を投げた。


 「えい!どっか、どっか行ってよ!!」


 だがそんなものには構いもせず、化け物は迫ってきた!こんなのどうしようもないよ!私の目には涙が溢れていた。

 

 誰か、誰か助けて!!!

 このままじゃ食べられちゃうよ!!!!


 「誰か…誰か助けてーーーー!!!」


 私は助けを求めた。でも周りには誰もいない!

 

 化け物が大きな口を開けて目前に!鋭い歯が見えるその大きな口の中は真っ黒で、まるで深い闇に通じる洞穴のようだった…


 あ…死んじゃう…



 その時だった。


 「頭、下げて!!!」


 私は言われるままに、とっさに頭を下げた。


 ドゴォォオォォォン!!


 眩しい光とすごい大音響がした。

 そして、声を発したらしい人が、私を庇うように前に立ちはだかった。


 あ…この人は、確か転入生の…?


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