2.視線と興味。
次回でオープニング、終わりですかね?
応援よろしくお願いいたします。
「おい、なんだったんだ? いまの……」
ルインとデルタが酒場から逃げ出し、しかし喧騒はいっそうに大きくなっていた。その場にいた冒険者たちは、口々に自分たちが見た光景を確認する。
彼らの目には、このように見えたのだ。
ルインへ向けられた魔力が、打ち消されたように。
そんなはずはない。
そんなことが、起こるはずがない。
したがって多くの冒険者は、ある一つの結論に至った。
「もしかして、不発だったのか……?」
口にしたのは、事態を遠巻きに見ていた一人の魔法使い。
彼がそれを口にした瞬間、場はシンと静まり返った。
そして――。
「おいおい、マジかよ!」
「うっそだろ? ホントの役立たずは、アイツだったのか!!」
「あー! 腹がいてぇ! 馬鹿じゃねぇの!」
ルインに怒りの矛先を向けた魔法使いへ、嘲笑が向けられた。
「な、違う……!」
「お? 今度は、なんて言い訳するんだ?」
「俺は魔法の不発なんてヘマ、していない! アレは――」
対して彼は言い返そうとする。
だがしかし、魔法が発動しなかったのは変えられない事実。
そのため喉元まで出かかった反論を呑み込むしかなく、大きな恥からその顔を赤くするのだった。その様子を見て、他の冒険者はまた笑う。
その晩、その魔法使いは完全に玩具にされてしまうのだった。
◆
「まったく……。みんなして、下らないことで盛り上がりやがって……」
そんな冒険者たちを見ながら、そう口にしたのは一人の青年。
肩ほどまでの金の髪に、青の瞳。顔立ちは整っているが、どことなく捻くれた性格が滲み出ているように思われた。そんな彼は大きなため息をつきつつ、隣の席に座る女性に声をかける。
「なぁ、アミナ。お前もそう思わないか?」
「……………………」
その言葉を受けた女性――アミナは、表情を一つも変えずに酒を一口。
そして、盛り上がる冒険者たちを見た。
腰までの水色の髪に、赤の瞳。
感情がない、と思われそうなほどの無表情。しかし相方の男性よりも綺麗で、あたかも人形のような愛らしさを感じさせる容姿をした彼女は、少しだけ考えてから言った。
「あの剣士、もしかして……」――と。
それ以上の言葉はなく。
再度、顎に手を当てて考え込んでしまった。
そんなアミナの様子を見て、また一つ男性はため息をつく。
「どうしたんだよ、難しい顔して」
「…………ねぇ、ネオ?」
「あ……?」
そして、彼――ネオが訊ねると。
彼女はようやく、静かな声色でこう告げるのだった。
「わたし……あの剣士に、話がある」
若干だが、目を細めて。
その表情を認めて、ネオは少し驚いた。
「へぇ……? 珍しいな、アミナが他人に興味を持つなんて」
「………………」
そして、そう返す。
するとアミナは、たいしたことではない、と言いたげに酒を口にした。ネオから視線を外して、中断していた食事を再開する。
そんな彼女の態度に、ネオは思った。
あの剣士には、なにかがある――と。
「へっ……面白そうだな」
青年はそれを確信して、口角をわずかに歪めた。
そして、言う。
「【世界最高の魔法使い】が興味を持つ剣士が何者か、ってのには俺も興味があるからな……!」――と。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより★評価など。
創作の励みになります。
応援よろしくお願いいたします!