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第4話 今日から彼氏彼女の関係な俺たち

「結局、昨夜はほとんど寝られなかった……」


 昨晩のキスの感触を今でも思い出せる。

 あれから、父さんと母さんが帰って来る前に唯菜(ゆいな)は帰った。

 で、父さんと母さんも挙動不審な俺を見て、不思議がっていた。

 とりあえず、ごまかしたけど、その内、報告しなきゃだな。


「それは、ごめん。私が急に、キス、とか言ったから」


 登校中の俺たちは、今は隣り合って、手を繋いでいる。

 手を繋ぐくらいなら、もう平気ってのも不思議だ。


「いや、嬉しいからいいんだけど。でもなあ……」

「うん?何か、心配?健斗(けんと)


 不思議そうな顔をして、俺の方を見てくる唯菜。


「いや、唯菜のとこの常連さんに、今度こそ言い訳できなくなるよな」


 元々、仲が良かった俺たちだ。

 常連さんには、しょっちゅうからかわれていた。

 今までは、スルー出来てきたけど、これからはそうは行かない。


「言い訳、したいの?」

「しなくていいんだけど。さんざん、否定しといて恥ずかしいだろ」

「私は、堂々としてればいいと思うけど?」


 昨夜、あれだけ動揺してたくせに、今はケロっとしている。

 後に引きずらないのは、良くも悪くも彼女らしい。


「なーんか、お付き合いのお祝いとか、いっぱい渡されそうだ」


 地域密着型の唯菜のとこのパン屋。

 常連さんも、近くに住んでいて、情が厚い人が多い。

 だから、そんな様子が簡単に想像出来てしまう。


「そうかも。でも、素直に受け取っておこう?」


 唯菜も否定しない辺り、同じことを予想してるらしい。


「あとは……クラスメートの奴らにも、言われそうだ」

「私達、さんざん否定してたもんね」

「そうそう。お前は無自覚だっただろうけどな」


 この天然娘が、という想いを込めて睨みつける。


「昔のことは、昔のこと。水に流そ?」

「ま、いいけどな。俺も彼女自慢くらいしたかったし」


 恥ずかしい事は、恥ずかしい。

 でも、それはそれとして、自慢したいのも本音だ。


「そっかー。彼女かー」


 何か感慨深げな声を漏らす唯菜。


「まだ、実感湧かないか?」

「そうじゃないの。でも、初めて会ったのって、小3の頃でしょ?」

「ああ、そのくらいだったな。昔から、可愛かったけど」

「あの時は夢にも思ってなかったなーって。それだけ」


 初めて会った時か。ふと、脳裏に浮かぶのはパン屋を訪れた時の光景。


「あ、そうそう。あの頃から、お客さんに愛想振りまいてたよな」


 もちろん、当時の彼女が店の業務をこなせるはずもなく。

 店にとっては、一種のマスコットだったんだろう。

 でも、その時から、どこか惹かれていたのかもしれない。


「だって、嬉しかったから。ウチのパン屋は凄いんだって気持ちになったの」

「ま、その頃のガキの心情なんてそんなもんだよな」

「でも、あれから、何度もウチに通ってくれたから、今があるのよね」

「まあ、俺としても、お近づきになりたかったんだよ」


 ちょっと照れくさいが、正直な気持ちを伝えてみる。


「そっか。ありがとね、色々」

「お礼を言うのは、俺の方だと思うけどな」


 仲良くなった頃には、すっかり、彼女の家が俺の居場所だった。


「でも、運命っていうより、健斗の執念よね」

「執念って……。まあ、否定しないけど」


 自然に育って、自然に仲良くなった間柄とは少し違う俺たち。

 今の関係があるのは、行動の結果といえばそうなのかもしれない。


「冗談だってば。でも、私だけだったら、気づけなかったのも本当だから」

「そういうところ天然だからな」

「天然じゃないよー」


 そんな、いつも通りのような、少し違う会話を交わしあう俺たち。

 これからも、苦労しそうだな、なんて思ったのは秘密だ。

ちょっとだけ天然入った鈍感な彼女と、一途な(?)主人公のお話でした。


何か感じ入るところがありましたら、感想などいただけると嬉しいです。

あと、「いい!」と思っていただけたら、ブックマークや評価もいただけると嬉しいです。

ではでは。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつもだと三部構成なのが、今回は四部構成なのがちょっと目新しい。基本的に男性視点-女性視点-男性視点なのはいつも通りかな。 結局のところ告白を受けたらすぐに心が固まったように、心の中では恋愛…
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