電柱のライトは救いなのか?
夜、道を歩く
家に着く
1人と誰かと。
家に入り、玄関の扉を閉めるまでその誰かは私を見ている。
「さようなら」「また今度」なんて言いやしない。
ただ、じっーと私を見つめている。
その誰かの存在を感じる度にじとりとした汗をかく。
夜道、誰かは私をじっと見つめている。
何も言わず、ただじっと私を見ている。
暗闇だけ歩いて私と共に歩いている。
私が携帯を触っていると誰かは隣に歩いている。
私が音楽を聴いていると誰かは顔を近づけてくる。
私が振り返ると、誰かはただじっと見てくる。
私は誰かの名は知らない。
誰かに名はある訳が無い。
誰かは私と共に歩くしかない。
夜道を歩く私は恐ろしくなった。その誰かという存在が耐えられなくなった。私は駆けた。家まで駆けることにした。
誰かも駆けてくる。
私は光へ逃げた。電柱に抱きついた。
誰かはただ静かにじっとこちらを見ていた。光の無い暗闇から。
私は言ってやった。
「帰れ!」
誰かは表情は無くただ、こちらを2つの眼……いや、目は実際には無いのかもしれない。ただこちらを見つめていた。
誰かの名は知らない。
今日も誰かは私と共に歩く。
私は玄関に滑り込むように入る。
誰かは今日もじっと私を見つめていた。