白鳩
遅くなりました。
このくらいのペースであげていきたいと考えてます。
しばらく歩いているとバーがある。
辺りからは酒の匂いがプンプンする。
昼間から朝までやっている帆保24時間営業のバーだ。
クレチアはそこに入り、奥の誰かが先に座っているテーブルに腰を下ろす。
その男は他の人とは違い、見た目も身なりも貧相ではない。服は戦時の軍服の様な感じ。
その男から声をかけられる
「待ったぜ。ヴェル=クレチア」
「ご足労感謝します。白鳩。その格好は警察ですか?」
クレチアは微笑みながらその男に返す。
「あぁ。だからなるべく今は白鳩と呼ばないでくれると助かる。」
「分かりました。」
「ほら、頼まれてたもんだ。」
そう言って白鳩と呼ばれた男は服の後ろに着いているホルダーから銃を取り出してクレチアに渡す。
「よく手に入りましたね。」
受け取った銃の造形をまじまじと眺めながらクレチアは白鳩と呼ばれた男に言う。
「まぁな。このくらいは軽い。でも、お前が、解体の奇人様が銃を欲しがるなんて珍しいな。」
白鳩は茶化すようにクレチアに聞く。
「興味がおありですか?」
クレチアは鋭い目付きになり、笑いながら問い掛ける。
「いや、ない。なるべくなら関わりたく無いからな。」
白鳩も笑いながら答える。
「懸命だと思いますよ。」
クレチアの目付きがやわらかくなる。
「あぁ。払いがよくなきゃ、お前みたいなのと付き合うのは勘弁だよ。」
白鳩はこりごりと言った様子で手を首の横で開き首を横にふる。
「偽装しているとはいえ、君みたいな警察が居るなら、世も末ですね。」
クレチアはため息をつく。
「今の警察何て、よっぽど正義感の強い死にたがりか、正義と称して捕まえた悪人をいたぶりたいだけのクズ。俺の方がよっぽどマシだろう?」
「そうですね。世も末です。」
遠い目をしながらクレチアは言う。
「でも、警察は必要なんだよ。こんな時代でもな。警察という組織があるだけで、それを恐れて犯罪の数は減るんだ。そして、恐れが無くならないよう、見せしめに何人か定期的に殺すんだ。そうすれば、上手く回るんだ。」
「哲学的ですね...」
「まぁ、これは俺の持論なんだけどな。」
クレチアは少しでも納得しかけた自分を戒める。
「話は変わるが、警察で最近何人も殺されているっていう届け出が多くてな。しかも死体が不思議なんだ。」
「それはもしかして....」
クレチアの目付きが変わる、何かに飢えている様な目。
「いつも通り商談と行こうか。この情報は多分お前が追っている奴で間違いない。」
白鳩は待っていたとばかりに両手を広げる。
「どこまで分かってますか?それによります。」
「こっちから開示できるのは、行動範囲の分布、活動日時、死体の状況。と言ったところだ。警察に居てもこれしか分からなかった。」
白鳩は丁寧に指を1つ1つ折り曲げていく。
「対価は?」
「銃と合わせて200でどうだ?」
「あぁ。かまわない。」
クレチアは警察の男に懐から出したお金を渡す。
白鳩は金を受けとる。
「こんな時代でも金は要るんだからな。不思議だよな。」
そう言って白鳩は札束をものすごい早さで数え始める。
「まず、活動範囲と日時だが...」
そう言ってお札を数え終わった白鳩はクレチアに紙を渡す。
「これに全部書いてある。」
クレチアはそれを一瞬だけ眺め満足そうに懐に入れる。
「次に死体だが...」
そう言って白鳩は顔をほんのすこし歪める
「なんと言うか全員指やら耳やらが無くて、なんと言うかグロい死体なのに、そんな苦しげな表情じゃ無いんだよ。それに外傷も無いんだ。」
「それは、不思議ですね。可能性は高いです。」
クレチアは口元に先ほどとは違った暗い笑みをこぼす。
「それなら、良かった。まぁ。お前みたいなやつに言うのも何だが死ぬなよ。」
クレチアハ不思議そうな顔をして、意味を理解したように笑い
「心配してるのは、私じゃなくて、私の懐ですよね。」
白鳩も笑って
「あぁ。そうだ。お前の生死に生活がかかってるんだからな。」
「白鳩こそ、死なないで下さいよ。私はあなたの情報しか情報源が無いんですから。」
クレチアは本心からそう言う。
「任せろよ。...じゃあそろそろ俺は警察としての仕事をしてくる。」
そう言って白鳩は人混みに紛れ姿を消す。
情報屋"白鳩"相手を選び値は張るが正しい良い情報を渡してくれると評判だ。深い所までは知ろうとしないところがやり易いし、プロなんだろうなとクレチア思い、そして立つことなく、座ったまま、思考に更ける。
読んで頂き感謝です。