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第23話 筆記用具始めました

 オロチに頼んでいた事が有った。

 硬くてもろい金属、はがねを作るにはどうしても大量の軟鉄が出来ると言う。

 軟鉄、文字通り金属としては柔らかい鉄。刀の芯に使われているはずだが、必要以上に出来てしまうのだろう。見本品に使われるとか。

 見本品、鍛冶師の腕がこれ位ですよ、と見せる為の、実用には使えない品。柔らかい金属なので切れ味は悪いし、すぐ変形してしまうのだ。

 アレかね?ウスターソースを作るとどろソースも出来るとか。たとえがヘン?御免ごめんねえ?

 じゃあ硬い金属なら良いか、と言うと脆いのだ。折れたり砕けたりし易いのだ。

 刀は折れず曲がらず良く切れる、をうたい文句にしているが、どう実現しているか、と言うと軟鉄を芯にして鋼で包んでいるのだ。矛盾した性能を実現した見事な例だろう。

 で、だ。使えない見本品を作る位大量に出来る軟鉄で、あるモノを作ってくれないか、と頼んだ訳だ。

 それは大ざっぱに言えば金属板を丸めてつつの様にしたモノ。

 だが先端は筒状になっておらず尖っている。さらに先端には切れ目が入っており、真ん中から縦に割れている。更に更に横にすじが入っている。

 根元ねもとの筒状の部分を、木製のじくに差し込む。そう!つけペンだ!!

 元々つけペンは漫画家さんの専用道具という訳ではない。文章を書くのにも使った筆記用具なのだ。

 それをすずりける。そして紙だ。

 くわという植物を、詳しく知っていた訳ではないが、なんとなく位はそんなに実が成らない植物だと思っていた。

 のに、何で桑畑なんて言う位植えているのだろう、と思っていたのだが、葉は勿論お蚕様の食料として、後は木を材木にして皮を紙の材料にするのだとか。実は食用だし、色々使ってたんだな!

 で、木の皮を砕いて繊維を溶かした水の上澄うわずみを、平ったい広い板ですくっては前後にゆらゆらと揺すって揺すり続けて出来たのがこの紙なのだ!やっぱ羊皮紙ようひしとかいうのより植物の紙だよな!保存さえしっかりとすれば千年()つと言うし!

 ああ、現代日本の紙は駄目だ。インクのノリを良くする為に薬品を混ぜており、それが生物に有害なのだ。植物だって生物なのだから、何十年かでボロボロになってしまうとか。古本なんかで茶色くなったのがやたらと酸っぱいニオイになったりするし。

 ペンと紙を子ども達の前で大公開し、ずは子ども達の名前を書く事にした。

 『純』と漢字を一文字。

 考えたのだ。表音文字ひょうおんもじである平仮名、片仮名、アルファベットを使えば此処の言葉を表現する事は出来る。が、文章を書くと、狂ったの?と言いたくなる様な文字の羅列られつになってしまうのだ。

 なので、会意文字かいいもじである漢字を主体に使っていこう、と思った次第だ。何か半端な漢文みたくなっちゃうけど。

 で、その一文字を書いた瞬間。

 ピュアがいつもに増して嬉しそうな笑顔になり、力一杯抱きついて来た。分かるんかい!やっぱり!

「はあぁ~!それは文字を書く道具じゃったのかい!!鉄が筆代わりになるとはのおぉ~!!

 して、ピュアとはそういう意味じゃったのかい」

 オロチが言う。

 此処、英語圏じゃあないけどな!けどそんな感じなのだ。

 そしてペン先だが、純度の高い鉄はさびに強いのだとか。墨に浸けるペン先に、軟鉄は割とってけなのだ。

「どんな意味なんだよ~!!」

 真っ先にピュアの名を書いたのがうらやましいらしい子が野次やじ気味ぎみに問うてくる。

「純粋という意味じゃ」

 やっぱりオロチ、あんまり説明になってない事を言う。でもまあ、それ位で分かるか。

「次わたし!わたし書いて!後ユキのも!」

 セツがグイグイ来た。自分を怖がってたんじゃなかったの?

 『雪』と一文字書いた。

「二人は両方共こうかなあ」

「なんでぇ!」

「この文字は読み方が何種類か有って、二人ともコレで読めちゃうんだ」

 此処の言葉、実は日本語混ざってないか?と思う所がちらほら有る。この名前もな!

「別な字にして!」

 セツ、遠慮無く言う様になったな。

 『節』と書いた。

「い~よお!」

 今度は満足した様だ。

「次はオレだな!」

 ワットも自己主張するよね。

 『電力』と書いた。

「………何でかな?意味分からないのにすげえ文句言いたい気がするんだけど」

「じゃあどう書けと言うのさ!!」

「分かんねえけども?!!」

 やっぱりワットをからかうと面白いや。

「でんりょくとはなんじゃい?」

 オロチが聞いてくる。

「電気の仕事量。物理的に仕事と言うのは労働するという意味じゃないから」

「はあ?そうなのかい?」

 よく分からないけど頷いたという感じだ。

「しかし、横書きなのかい。しかも左から右に…なのじゃな?」

 れはオロチには馴染みが無かったろう。

 が、細かい字で長い文章を書くと考えた場合、旧日本式だと手がつらいのだ。

 昔のヒトが筆で文を書いてた頃は、絶対内容が薄かったんだと思うね!

 次はシャールが遠慮がちにだが名乗りを上げた。

 『探偵』と書いた。

「…申し訳ないですが、ワットの気持ちが分かった気がします」

「じゃあどう書けと言うのさ!!」

「答え様が無いって分かってて言ってますよね?!」

 やっぱりシャール。切り返しがワットとは違う。

「たんていとは、探す密偵かい?」

 相変わらずオロチは説明になってない事を言う。

「まあ、大体そんなもんだけど、有名なのは犯人はお前だ!とか言うヒト」

「「「はあ…?」」」

 オロチ、ワットは勿論だがシャールもワケ分かんない!という感じだった。そうだよねえ~。

 ちなみに、作り話ではシャーロックホームズ以降そんな感じだが、現実にはそんなの居ねえよ!てなもんだ。警察官でもない者が殺人現場ウロつけないだろうし。

「だったら!ちいはどう書くんだよ!!書いてみろよ!」

 ワットが怒り気味に言って来た。ホントに怒ってる?

 『山椒さんしょう』と書いた。途端とたん

「がぁ~っはっはっは!!成る程のう!!」

 オロチが大笑いした。

「何が成る程なのです?」

 シャールがすかさず聞く。

「山椒は小粒でもピリリとからいという言葉が有ってのう」

「ふむ」

「山椒はは小さいが辛いのじゃ!」

「…」

 オロチは全く、本当に説明になってない事を言い、シャールはちょっと困った様だが。

「小さいけど甘く見るな、という事でしょうか」

 ちゃんと答えに辿り着いた。

「あはははは!!小さいって!!小さいって!!!」

 ワットも笑い出した。あーうん。笑って頂戴ちょうだいよ。

「自覚はしてんだな!あーっはっはっは!」

 そろそろうるせえよ。ワットだって幼児だろうが。

 兎も角。

「これで本格的にお勉強が出来るね」

「………お勉強?」

 ワットが聞き返して来る。

「読み書き計算は思考の基礎だよ。高速思考には邪魔になる可能性も有るけど」

「何言ってるのか分からない」

 ワットはそうだろうね。シャールはどうだろうね。

「そのちいが書いた文字が書ける様になれれば賢くなれる、という事でしょうか?

 しかし邪魔になる、と言うのは?」

 流石さすがだ。ちゃんと要点がまとまっている。

「一文字一文字心の中で読んじゃう様になると遅くなっちゃうんだよね」

 一時期速読術が流行はやった事が在った。流行った位だから方法は何種類か有るのだが、その内の一つが、心の中で読むな!目に映ったものをそのまま認識しろ!というモノだった。

遠山えんざん目付めつけ…ですね!」

「そうそう、その通り!」

 まさしく、その速読術は遠山の目付と同じモノと気付いたのだ。

「何言ってるのか分かんねえよ!!」

 ワットが言ってきた。おっと、他の子達、オロチ含む、が置いてけぼりだった。

「はい、みんな!これから技を一つ教えるからね!」

 これから村の子達の知能は飛躍的に向上するぞ!と展望てんぼうした。

 はい、申し訳ありません。

 この話を投稿した後、前話の技能を付け足しております。足りてなかったやん!って、お気付きの方もおられましたでしょうか。

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