第80話 今度こそ仕上げてみた…かな?
投稿が日曜の朝に食い込みましたが。
今回、先週分の積もりの投稿です!
日曜の内にもう一話投稿します!
今週は月曜も休みですね!
もう一話オマケに行っちゃうか?
期待はせずにお待ち下さい。
騎士の訓練場に来るのも後僅か。教練の仕上げを考えなければならない。
まあ、相変わらず勝負…に見せかけた、実は勝負ではないものを続けているのだが。
此れが武人の在り方よ!…とか?
今度の相手はヘイキンさん!使う武器は、何と!杖ですよ?!奥さん!!
…奥さんって誰やねん。
自分は木刀、勿論打刀仕様のを中段に構える。
対してヘイキンさんは…
「おい!其れ!!どういう積もりだ?!」
メイザスがヘイキンさんを見て騒ぐ。ヘイキンさんは平然としているが。と、
言うのも。
ヘイキンさんは杖を刀の中段の様に構えて居る。詰まり。
右本手の構え!!
「杖にはこういう使い方も有るそうだ。武神様から教わった」
ヘイキンさんは涼しい顔して言う。メイザスを吃驚させて、摑みはオーケーってか?
「けど、良いの?」
一応訊いてみるが。
「わたしがこうしたいのさ!」
成る程ねえ。何がって?其れは此の後直ぐ!
「始め!」
騎士団の団長さんが宣言し!
かああぁん
「っくうっ!!」
自分は遠慮なく打ち込み、ヘイキンさんは呻く!
当然である。木刀はこれでいて、それなりに重量が有る。杖は軽い棒だ。
ぶつかり合えば、重い方が有利に決まっている。
其れでもヘイキンさんは、自分相手に刀の使い方をしてみたかった、と。
そう言う事だ。
あんまり刀の技を見せなかったのが悔しかった?
ヘイキンさんは未だ刀の持ち方のまま上段に振りかぶり、打ち込んで来る!
自分は木刀の鋒を右斜め下にして頭上に掲げる!
かきゅん!
ヘイキンさんの攻撃を右外に滑らせた!そういう訳だ。
「おいおい!見たまま真似の領域は出てねえが!
刀の使い方しても良いってのかよ!其の、詰まんねえ棒!!」
「杖だあああああああああああああ!!」
自分が反発してしまったよ!杖を使っているのはヘイキンさんなのに!
全く!!あほあほさんめ!あ、メイザスの事ね。
「いやはや、厳しい評価だな!武神様はどう思う?」
ヘイキンさんはニッと笑みを浮かべる。余裕だな!
「毎日欠かさず練習すればしっくりと馴染んでくるよー!」
「詰まり、未だ未だだと。な」
おや?一寸落ち込んだ?素晴らしいとでも言って欲しかった?
でも自分、お世辞は言わないよ?命に関わる技術だし。真摯に追求して欲しいな。
「くっ!!」
お!杖の持ち方を変えた!今度は長柄武器の持ち方だ。
「何だと?!次は槍の持ち方だと?!」
メイザスが目敏く反応する。まあ、槍とは限らないのだが。けど、突いて来るかね?
正しい使い方だと思う。杖は様々な使い方が出来る故、相手の武器と同じ使い方をして張り合う事は可能ではあるのだが。そうすると杖という武器自体は、軽くて長さも半端だと露呈してしまう。ので、違う使い方をして相手の武器の欠点を突くべきなのだ。
それとも態々不利な使い方をしておれの方がつええ!とか言う?実戦の観点から言えば愚かとしか言い様が無いのだが。
戦闘で頭を使うと言う事は。出来る限り自分に有利な状況を作り出すと言う事だ。其れで卑怯とか言う奴も間違いなく居るだろうが。そんな下らない文句に
屈してはいけない。そんな文句言う奴こそ卑怯だ。実戦は厳しいものなのだ!今は練習だけどね!
やはりヘイキンさんは突いて来た。対して自分は。
かああんっ
見た目微動だにせず、しかしヘイキンさんの突きは大きく弾く。弾だ!
「其れ!思えば初めて手合わせした時も使っていたな!」
「おお!其れが分かるとは!成長したな!ヘイキンさん!!
大いに見て覚えると良いよ。運が良いな!達人級の技だぞ?」
「ははは。君に成長した等と言われるとはね!況してや達人級の技、か!」
ヘイキンさんは言いつつ槍の技、突いては引く、を繰り返す連続突きを
繰り出す!
かかかかかんっ
どういう理屈でだか。空手での突き、まあ素手の拳だが。連続突きは奇数、とか誰かが言っていた。アレかね?突き終わった直後、ほぼ構えの状態になっていたい為に、前に出して居る左手から突き始めて左、右、と交互に突き、左手で
突き終われば構えに近い状態だ、と。
格闘技の標準的な構えは左手が前だからな?間違えるなよ?
槍の使い方でも影響はするものか?空手の突きは槍を模しているとか描いてある漫画があったし。刀を模しているのは手刀な!チョップな!空手チョップな!!
何れにしろ、見た目微動だにせず全て弾くのだが。
「やはり通らないか!」
「通ったら当たるじゃん。痛いじゃん」
「あははは!其うなのだがな!達人級の技をそんな軽い口調で出されてはな!」
今度はヘイキンさん、薙ぐ攻撃を繰り出す!
「今度はナギナタの真似だとう?!!」
メイザス、普段はぼーっとしている癖に矢鱈反応するね?やっぱ戦闘狂なんじゃね?
兎角、薙刀の使い方だったら、先程の女性騎士さんの時と同じ対応をする。
詰まり、間合で外して追い打ちで木刀を引っ掛けてやる。
かああん!
「っく!!」
先程の女性騎士さんと違って、ヘイキンさんは右手だけは離さずに耐えた。
まあ、長さも半端、重さも無い杖だから耐え易いのだ。
次の杖の使い方は。うーん。
「其れはお勧め出来ないかな?」
「此処は訓練の場所だからな。武神様、胸をお借りする!」
ヘイキンさんは片手剣の持ち方をしたのだ。其れには杖は長く、軽過ぎる。
所で胸を借りるって、相撲か何かから来る言葉なのかね?其れ以外じゃあ、胸を貸すって、何だよ!!って、思っちゃうよね?ああ、此処ではそういう意味に
当たる言葉、であって、ヘイキンさんは胸なんて言ってはいないからね?此処には相撲なんて無いからね!
ヘイキンさんは膝のバネを利用して体ごと突っ込んで来ながらの武器での突きをも繰り出す!フェンシングで言う矢突ですな!しかし。
自分は何気なく杖を払う。其れこそ無造作に。雑に。大雑把に。何だ?!此の、へなちょこ突きは!!とばかりに。やはり、杖で片手剣の使い方は無理だった!
「やはり無理か!」
「まあ、今は練習だしね」
「ふふっ!済まんな!やはり、此れしか無いか!」
ヘイキンさんも半ば分かっていて只の確認だ、という感じか。で、此れ、と言う次の使い方は。
長柄武器の持ち方には近いが短く持つ。詰まり、左手から杖の端が近い。
其れから、長柄武器と違う所は、両手の間がもっと長い。言うなれば、長柄武器の持ち方とビリヤードのキューの持ち方を混ぜた様な。ビリヤードは格闘技ですら
ないけれどもね!!
梃子の原理を最大限に使う為の持ち方だ!しかし自分とは違うが。左手側の
端だけを使う持ち方だな!
仕方ないな!世の中、殆どのヒトは右手専門だからな!勘違いするなよ?左手側の端だから右手の力で使えるんだからな?
「今度は何の真似だ?」
メイザスはボケた事言っているが。いや、長柄武器とは持ち方が違うとは見抜いている様だな。
「是は杖だけの使い方だ。基本、杖は軽めの棒だが、是ならば力強く使える
のさ!」
ヘイキンさんはさらりと言う。説明も堂に入っているな!流石親衛隊隊長!
ヤラレャークさんとは一味違う!
「どうして軽い詰まんねえ棒で、力強く使えるんだよ!」
「梃子の原理、という世の仕組だそうだ」
「いい加減詰まんねえ棒は止めろ!」
本当にもう!あほあほさんはっ!!ヘイキンさんは淡々としているが!
「しかしだな。武神様はわたしとは又持ち方が違うぞ?武神様は両端を使って、
何と!二人の槍での連続突きとも打ち合えるのだからな!!」
ああ、ヘイキンさん。フォロー有難う。やっぱり隊長は違うねえ。
「あー、所で、だな?さっきから気になってんだが。武神サマって、何だ?」
「………此の子の事さ!」
ヘイキンさんは含み笑いをしつつ此方を目で示す。あほあほさん、今更かよ!!
「するってえと、詰まんねえ棒で二人の槍と打ち合えるってのは……ちいなのか?」
「其の通りさ!」
「おい、ちい!其の詰まんねえ棒まで使って見せて、くれてやったのかよ?!」
「詰まんねえ棒は止めろおおおお!!」
あほあほさん、いい加減にしてくれる?
「是は詰まんねえ棒ではない。杖!武神様から賜った武器さ!」
やっぱりヘイキンさんがさらりと纏める。隊長格なんだねえ…
「ちい!武神サマってのは、何だよ?」
「一寸黙っててくれる?」
「ああ、今は勝負、の様なモノを見なきゃな!」
「勝負の様なモノ?」
あーヘイキンさん、訊いちゃったよ。
「だってよお、何人掛かってってもちい一人に軽くあしらわれてんだからよう、
勝負って言えねえだろ?」
うっっっ
あー………何人かの呻き声が!明らかに意気消沈しちゃってんじゃあないかよ!全体が!!
「ヘイキンさん!実戦は、どんな妨害が有るか分からないよ?」
「そ、そうだな!!」
ヘイキンさん、動揺しちゃっているよ!メイザスだってあしらわれている一人の癖に!妙に鋭いと言えるのか?!普通はあしらわれている本人は認めたがらない
のにあっさりと!此れも、心が受け付けない事は認識出来ないという一例と
言えよう!
「本気で、全力で!」
「応!!」
意気を戻せたか?!元通り、とはいかないのがヒトの心理の難しい所だが。実戦はそんな甘い事言って居られない、厳しいものなのだ!
がきゅうっっっ
今度こそ。激しくぶつかり合う!!ヘイキンさんは杖の端で、自分は木刀の根元で!
鎬を削るぶつかり合い、等と言う言い回しは有るが。実戦的には褒められたものではない。けど、此れは練習だからね!所で、鎬というのは刀の側面の部分だからね!今は真っ正面で受けているけれども!だって、杖もそうだが木刀だって鍔は
無いもの!お互い程々にしておかないと、手にぶつかっちゃうよ!
「おお!ホントに力強く使えるんだな!詰まんねえ棒も!」
…
大いに文句言いたい所だが今は言える状態ではなかった。
分かるだろう。梃子の原理的には杖の方が圧倒的に有利なのだ。元から体格でも差が有る…処ではないし。
端的に言えば力比べなどしたら負け決定だ。ぶつかり合う部分に力を集中し
つつ、打開策を練らなければ。
映像で見た事有るのだが。集中力を使って、一人が複数の相手との押し合いに勝って見せるとか。其れが出来ればヘイキンさんをも押し返せるだろうけれども。一寸見ただけの事を自分も出来るぞ~とか自惚れるのは愚かというものだろう。
「ぬっ……ぐぐっ………」
今でも充分ヘイキンさんは苦しそうだが。
うーん。うっちゃると、ヘイキンさん危ないだろうしなあ…
と、思ったら、ヘイキンさんの方から離れた。
「参った!」
「あれぇー??良いの??」
「ちいの勝ち!!」
団長さんが宣言しちゃったよ!
「説明してくれるかな?」
「うん?何?」
ヘイキンさん、突然話を切り換える。
「梃子の原理では、今わたしは何倍位の力が出ていたのかな?」
「三倍位?」
「他の武器では三倍も力は出せないよな?」
「そうだね。両手の間の長さ的にも、持ち手から攻撃部位までの長さ的にも、一寸無いね」
薙刀は長い柄の先端に小さい刀が付いている、みたいな形だったと思った。
詰まり、鍔も付いていたと思ったので、持ち方に因っては出来るか?と思うが。
長柄武器で力も出せるとは、反則的な武器め!
まあ、実戦は出来る限り敵には近付きたくないもの。態々薙刀を短く持って使う等しないだろうが。
「わたしは三倍の力を出して受け止められた。ならば他に敵い様は無いな!
みんな!こんな幼い体の子が大の男であるわたしの三倍の攻撃を受け止める等、どんなに凄まじいか分かるだろう!」
何だか自分が宣伝されちゃったよ。
隊長って、ヒトを持ち上げるのが上手いの?




