第78話 脇構え“無間の太刀”
やっぱり此処一週間、忙しかったです!
今回は、先週投稿する筈の分なので、
日曜日の内にもう一話投稿しますよ!
「ちいぃちゃぁぁあん♡一緒に暮らそうよぉぉ♡」
マルゲリータが猫撫で声で言ってくるが。
「無理じゃないかな?」
自分は返す。寝床で。朝、ベッドで目が覚めた所な訳だ。
「家族ごと此処に引っ越して来ちゃうとか♪」
「村中が家族みたいなものだよ?村一つ分のヒトを連れて来ちゃうの?」
まあ、そういう村でよく有る問題は、血が濃くなり過ぎる、詰まり近親婚が多発するって事だが。日本では従兄弟姉妹から結婚が認められているが、理想は全く
親戚関係にはない相手、である。
何故なら、遺伝子的に不味いからだ。劣性遺伝子という部分は、二つ揃う、
詰まり、父母両方から受け継ぐと発現するのだが、遺伝病が発現などしたら
たまらない。遺伝子の病気は治らないからな!血縁的に近い者は同じ劣性遺伝子を持っている可能性が極めて高いという訳だ。
怒るヒトは少なからず居るだろうが、敢えて言えば、頭が弱い子が生まれ易いしな!!
だから本能的に、親しい間柄の相手には異性を感じない様になっている。筈、
なのだが。
ヒトって、結構、ケダモノですからねぇー。本能だって弱いし、結構アテには
成らないんですよねー。
村中引っ越して来れば、血縁問題は一気に解決だな!いや、現実的には
無理ダロってものだが。
「うむむむむむ!……何とかなるんじゃない?」
「無理ダロ!」
「じゃあやっぱり私がそっちに付いて行くとか!」
「駄目ダロ!!」
堂々巡りというヤツですな!現実は何時でも解決しなきゃあ進めない問題が
山積みだ!
「ちいちゃんさあ、一寸位は、私と離れたくないって、思わないカナ?」
「初めから決まっていた事だから」
「其・れ・で・も・だよぉおぉお!!ちいちゃん、ホンットに冷たいなああ!!」
「分かっていたでしょう」
「むわああああ!!どうしてこんな子になっちゃったのおお??」
「失礼だな!」
こんな子だから、騎士達を勝負の振りして二年間、毎日しばいてあげるなんて
無茶な教練に耐えて、王女殿下の護衛にまで就いたりしちゃったんだぞ?普通の
幼児には絶対!絶対だ!無理だろうが!!
マルゲリータはいきなり自分を抱き締め、思いを絞り出すかの様に言う。
「此れ私のぉぉぉ……私のなの……………」
「ヒトを所有物扱いしちゃあいけません」
だから自分は「こども」という言葉に供という字を使わないのだ!
「其う言う事じゃあないんだよぅぅぅぅ」
マルゲリータは悲しげに零す。
自分に付いて来る事にしたライナとメイは、マルゲリータに遠慮して自分を
抱き締めるのを只眺めている。ライナが気遣いしている!!ビックリだ!
「さてさて、今日も元気にお勉強といきますか!起きた起きた!!」
「ちいが冷たくて元気出ないよぉぉぉぉ」
「そっすね。朝は温かいものを食べると元気が出るって言いますね」
どっかのCMとかで。
「ちいって……ちいって本当に………」
本当に、何だよ!!
起きたらマルゲリータはお勉強、自分はメイとライナを連れて騎士の教練だ!
うん、珍しくメイザスの奴も居る。
「さあて、今日は自分、木刀を使うぞおお☆」
「今日はって、何時もは何使ってんだよ?」
何時もは見ていないメイザスはやっぱりボケた事を言う。
「色々」
「いろいろって?」
「一言では言えませんなあ」
本当に足並みが揃わない奴が居ると話が進まないな!
「そろそろ自分の任期は終わりなので、仕上げを見せて貰っちゃうぞ!」
刀対様々な武器、という構図になるか。ふむ!面白い!!
「先ずはおれだああああ!!!」
やっぱり出て来る我が強いメイザス!
持つ武器は。自分が作った木製の野太刀!!一端の使い手になる程に鍛えたか?薬丸自顕流!!
コイツの事だ!半端は無い!と思っておかねば!!
メイザスはしゃがむ程に腰を落とし、右脚は曲げ、左脚は真っ直ぐ伸ばして横に突っ張る!
そして上半身は野太刀を構える!天を衝く様に!!
薬丸自顕流蜻蛉の構え!!!
対して自分は。
右半身を大きく引く。詰まり、相手に対して左半身になる。
木刀を、鋒を真後ろに向けて構える。相手には完全に見せない様に体で隠す。詰まり。
「…何だ?其の、構え?」
丁度メイザスが訊いてきたので答える。
「脇構え」
「未だ隠している技が有ったのかよ!」
「隠していた訳じゃないけれど。見せる機会が無かっただけ」
「ほーぉ。今出すってこたぁ、コレに対抗出来る技って、事か?」
「どうだろうねえ」
蜻蛉の構えを八双の構えの変形と見てこう構えてみたけれど。
勿論、考え無しで只構えてみた訳ではない。
幾ら木刀で、試合、とは言え、薬丸自顕流の野太刀をまともに食らったら死んでしまう!
対策は立てているさ!と、言うか、今脳味噌高速回転させて居る!
「只、達人は、必殺技を作ったら破る技も同時に編み出すって、言うよ?」
ハッタリかなり入ってないか?とも、思ったけれども。
師匠は何時か弟子に殺されるかも知れない、等という、殺伐とした世界だったら結構切実なのかねえ?とも、思わなくもない。
「へっ!見せて貰おうじゃあねえか!!」
「行くよ?脇構え“無間の太刀”!!」
持っているのは打刀だけれども!!太刀って言葉はちらほらと出て来る
でしょう!?
「ムマ?!」
「最早問答無用!!」
「お…応!!」
準備は整い。
騎士団の団長さんが合図をする!!
「始め!」
と、同時に!
「きええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
メイザスが気合を発し、突撃開始!!!
所で、此の、きええええっての、猿叫って、言うんですよねえ。おサルが叫んでいるみたいだってか?
けど、済んません!自分、おサルって、格好良いとは、思えないんですよねえ。自然界では弱者だし。
メイザスの奴におサルって、渾名が増えたりして!
と、そんな事を考えている場合ではない!!
けど、自分は迎撃態勢だ。只静かに、刹那を見極めなくてはならない!
メイザスが、野太刀を、打ち下ろす、其の刹那を!!
空手の源流、琉球唐手。正しく、薬丸自顕流に、素手で、対抗する為に!!
発達したのだと言う。
だから、一撃必殺を掲げる流派が在るのだ!!一撃で殺らないと、こっちが
殺られちゃうからね!!
先ずは兎に角、相手の攻撃を外さなくてはならない!受け止めたりしたら、
防御ごと叩っ斬られると評判なのだ!!
野太刀は長いので、此方が先制攻撃、なんてのも現実的ではない!
更に!
脇構え。基本の五行の構えの一つに数えられてはいるが。
鋒を真後ろに向けて、更に体ごと引くのである。打つ、詰まり攻撃するには、
一番長い距離を振らなくてはいけないのである!
同時に打ち合いをしたら、他のどの構えよりも遅くなる、詰まり、負けてしまわないか?と、思ったのである!!
なので、考えた!脇構えで、他の構えに対抗する方法を!!
参考に出来るモノは何も無い!!何故なら、現代日本で脇構えなぞ使うヤツは
居ないからだ!
現代に残る刀の技、と言えば剣道だ。
そして、剣道は竹刀の長さが規定で決まっている。
武器を体で隠す構えである脇構えは意味が無い、という訳だ。で、もう使える所が無い、と、思われているのだな。
使ってやろうじゃないか!自分、捻くれ者なんだよ?
此処で駄目だったら、本気で死ねるんですけどっ!!
刹那が、来た!!
メイザスが、野太刀を、振り下ろす刹那がっ!!
ががんっっっ
…
メイザスの打ち込みの結果は。
メイザスは地面を打ち。
自分は。
野太刀を地面に押し付ける様に打刀を打ち込む。
そういう態勢になった。
種明かしをしよう。
脇構えは、振ると他の構えに負ける。ならば。
振らなければ良い!!
…勿論、只黙って殺られろって、事じゃないぞ?
アレである!素振りは、雑巾を絞る様に振るってヤツ。
シャールは言った。刀を振る積もりで腕を振るのではなく、肩、腕、手首の関節を引き絞ると、結果、刀を振っている事になっている、と。更に。
刀を持つ右手を軸にして全身を回転させると、刀自体は全く移動していない、という屁理屈になる。
刀は全く移動していない。移動距離ゼロ。で、無間の太刀、という訳だ。
只、全身を使って、メイザスとぶつかり合った、という訳ではない。ぶつかり合ったら、当然、負ける。
此処でも工夫、まあ、小細工だな。を、している。
村での大人達との勝負でもやった事だ。攻撃を、受け止めてはいないが、わざと相手に押される為に触れてはいたのだ。結局の所、自力で、ではないが、移動は
しちゃっているな。
で、回転で回り込んで、メイザスの野太刀を上から押さえつける、と。下に
居たら攻撃力を受け止めてしまう事になるが、上からならメイザスの攻撃力は
掛からない。ワニは口を開く力は弱いから、押さえつけちゃう、みたいな感じだ。
だが、未だ決着はしていない。此処から。
ついーっと。
木刀をスケートの様にしてメイザスの方に移動する!木刀なもので、本当に擦り付けたら摩擦が大きくなっちゃうぞ?まるで滑っているかの様に移動、だからな?
そしてメイザスの程近くで、打刀を、体重を乗せて下に押し込む。
「うぉあ?!!」
ずばんっっ
流石にメイザスでも野太刀を持って居られなくなり、地面に柄を押し付け
られる。詰まり、完全に武器を手放して地面に落ちた。
今回は、地面に着いた野太刀の鋒が力点、自分が打刀を押し込んだ部分が支点、メイザスが持っている部分が作用点、という梃子を使ったのだ。
「ちいの勝ち!!」
団長さんが宣言し、決着だ。
「くっそ~!未だ通じねえか!」
メイザスはそんな事言っているが!!
「通じたら死んじゃうから!!意地でも通じさせないから!!」
「そーか?」
「当たり前だろう!!」
自分を何だと思ってんの??




