第74話 竜の吐息始めませんでした
今年の庶民兵さん達を招いての教練1日目。
魔法を使ってみよう!と思った。
正直言います!ぽっと出の思い付きです!
けどね?騎士達も一生懸命訓練していると言えばしてはいるんだけれどもね?
未だにドラゴンとでも戦えば全滅だな!としか思えないのだよ!
あ、戦争用語で全滅と言えば三割死亡、だったかな?全然文字と意味合わないじゃん!
そっちじゃあなくて、全員死亡してしまうとね?言いたいのだね?
決め手はやっぱり魔法なのだね?ドラゴンの奴、何故か魔法を使うオオトカゲだったからね!
うん、騎士達だって対魔法戦、やってみるべきだね!
何で一年近く経ってから言い出すかって?
忙しいのさ!自分だって!!………ああ、はい。好き放題やらせてもらっている故に今になってしまいましたよう!
何時もの様に、騎士達、それから庶民兵さん達に囲まれて、勝負…に見せ掛けた事を始める。
初めに相手を務めるのはガンバルさん!もう両手大剣が手放せない相棒だ。
そして自分が今持つのは杖だ。魔法を使うのなら何を持っていても関係なさそうなものだが、取り敢えず動きを制限されない所がお誂え向きだ。言い方を変えれば、只振るうだけでは武器としては役に立たないとも言えるのだが。両手大剣とは、間違っても正面からぶつかり合ってはいけない。
さて、相手とも擦り合わせはやっておかなきゃあね!
「突然だけど、今日は魔法を使ってみようと思う」
「む?クツゾコ何とか言うヤツか?」
「違う違う。攻撃魔法だよ。靴底魔法は常に使っているし」
「何?!常に?狡をしていたと言うのか?」
「いや?別に能力が変わる訳じゃあないし」
単に、此の世界の質の悪い靴そのままでは、歩くだけでも耐えられないという
だけだ。寧ろ何時もその分消耗している状態になっているとすら言っても良い。
其れから、ガンバルさんそんな事言うってのは魔法が全く使えてないって事だな。
「ガンバルさん、ドラゴンと戦える様には成りたくない?」
「むっ!!其れを言われると弱いな!!
何しろ、武神サマは一人でドラゴンスレイヤーをやったのだからな!」
「ドラゴンが飛ぶのと吐息とは魔法だったからね。
味わっておくのも悪くないと思うよ?」
「何?!!魔法だったのか??」
「そうだよ?もう把握はしているし」
只、飛ぶのは可能だとしても真似するのは簡単ではないし、やりたくはない所だが。
一方、吐息は利用価値が有るか?と思っている所だ。
と、言うのも、空気を注射器の様に押し込む攻撃ならば、遠慮無く顔面に直撃
させられるかな?と思うのだ。
水鉄砲でさえ、目にでも当たったら危険かな?と思う。相手を傷付けるのが目的ではない試合では使用がためらわれてしまうのだ。空気ならば傷など付く事は有るまい。
「そうか……其れを受けたからと言って、直ぐさま戦える訳でもないだろうが。……楽しみだな!」
「お!良いねえ!じゃあ、行くよ?」
「応!!来い!!!」
ガンバルさんは両手大剣を縦に構える。八双の構えの様だ。重いからね!
で、相手に向けて傾ければ直ぐさま攻撃になる、という訳だ。まあ、試合では
危な過ぎてやっちゃあいけないが。
作り話では、両手大剣を中段に構えるなんてヤツが居たが。況してや小柄な少女が、両手持ちの、でっかい剣を、殆ど真横に構えるなんて画が有ったが。
中段の構えとは、剣を、自分の目の前、高さは中くらいに位置させる構え、
という意味、ではない!!
鋒を、相手の目線に突き付ける構え、である。
と、なると、長くてでっかい剣を中段に構えるとなると、殆ど水平になって
しまう。相手が自分より背が高かったとしても、だ。
…物理的に、オカシイからな?もう、腕力がどうのって、問題じゃあ、ないからな?
現実的にはガンバルさんの様に、縦に構えるのが正しいのだ。ま、重い武器など持っているだけで疲労するのだが!
自分は武器を構えるなんてモノではない。杖を、地にこそ着かないが、歩きの
補助にでもするかの如く左手で、下を長めに持ち、右手でガンバルさんを指差す。典型的魔法使いみたい。
魔法には、言葉も動作も、勿論姿勢も、全く必要無い。只、これから魔法攻撃
しますよ、というアピールの為だけのポーズだ。
「始め!!」
騎士団の団長さんが合図し。
「風の竜の吐息!!」
自分は叫ぶ!勿論、只のアピールだ。
空気を注射器の様に押し出す魔法だからして。
相手とは距離が有った方が威力が増す。詰まり、距離で威力を調節出来る。
相手を傷付ける目的ではない試合だから、試合開始の距離は丁度良いと思って、即座に顔面に放った!
ぶうおっ!!
ガンバルさんの顔は。
正しく強力扇風機を食らったコメディアンの顔になった。
「ぶはははははははぅあはははははははあははは!!!」
もうポーズを維持して居られなかった。
まるで、最初から指差して笑う為のポーズだったかの様になってしまった!
ガンバルさんは戸惑って声を掛けて来る。真剣な顔で!!
「武神サマ?」
「あはははははははひははははあはは!!」
そのツラこっちに向けるな!!(酷い)
「えーと?今攻めちゃあダメだよな?」
「はははひはふふははぁはぁあ……」
「………落ち着いたか?」
「真面目にやってよおおおおおっ!!!」
「おれが悪いのおおお??」
ガンバルさんからすれば、理不尽だったろうが!駄目だろおお!!
「…はぁ…気を取り直して…」
「武神殿?改めて開始致しますか?」
団長さんが訊いて来るが。
「いや、このままで!」
再びガンバルさんを指差す。ガンバルさんも身構える!
「風の竜の吐息!!」
ぶぉおっ!!
「「ぶはははははははあはははははははは!!」」
あれ?誰か一緒に笑っている?あ、ヤラレャークさんだよ!目敏いだけに、アレを見てしまった様だ!
しばらくお待ち下さい。
「はあっはあっはあっ…
恐ろしい攻撃であった!!」
「おれ、何もしてないんだけど?」
「こっち向かないでよおお!!」
「酷ええええええっ?!!!」
今耐えられないんだよおお!!
勝負は今は待った、となった。しかし…
「風の竜の吐息…なんて恐ろしい攻撃なんだ!!封印するしか無いな!」
場面を選ばず気軽に使えるかと思ったが、とんでもない!!実戦でやったら
死んでしまう!!自分が!!
「恐ろしいって……只食らっただけのおれの立場は?」
後ろ向きにはなってくれたが、ガンバルさん、口は止まらない様だ。
「そんなモノ無い!!」
「ホントに酷ええ!!」
男ってのはな?こうやってキャラクタを確立していくのだよ?
目指せ!三枚目(ネタ担当)!!嫌?
「はぁー……
攻撃魔法は元々、別なの持っているから、それで練習しよう!
避けられるか?防げるか?考えながら勝負してね?」
「ああ。今度は笑わないでくれよ?」
「武神殿、さらりと言っておられるが、尋常ではありませんな?」
団長さん、気付いちゃったな!流石お母さん!
兎も角、勝負を始めて…
「水鉄砲!水鉄砲!!」
びしっびしっ!
毎度お馴染み、零距離凝縮水鉄砲だ。
「ほら、避けて避けて!」
「無理だあああああ!!!」
「じゃあ防いで!」
「出来るかああああ!!」
うん、攻撃を当てる位置に発生させるから、考えるまでも無く無理か。
剣を前に翳しても、直接当たるからな。防御無効って所か。
今回、魔法は防具を着けている部分になら当てても良いという取り決めに
なった。
威力的に武器よりも不利、当たっても防具の上なら問題無し、だったからな。
けど、威力的には当たっても問題無しでも、精神的には非常に辛そうだな。
「降参!降参だああ!!!」
頑張るヒト、ガンバルさんにも耐えられなかったらしい。
作り話では飛び道具でも魔法でも、ひらりひらりと躱すキャラが時々居るが、
現実にはそんなヤツ居ねえよ!ってものだよな。玩具の水鉄砲で良いから試して
みると良い。誰も躱せはしないから。
「結論!手に持つ武器で、魔法には対抗出来ないね☆」
「やる前に言えよ!!そういうのはっ!!」
ガンバルさん、荒げてしまっているなあ。
けど、只言っただけで素直に聞くヒトって、そう居ないんだぜ?
理系の学会なんて、ケチ付け大会みたいなモノで、それに耐え抜いた学説だけが世間で認められるってモノだってよ?
第一、自分が素直に聞けない捻くれ者だものね?
「武神殿、さらりと言っておられるが、ドラゴンを斬り捨てたのであるよな?」
団長さん、やっぱり気付くお母さんだよなあ。




