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第71話 授業参観(?)されてみた

 分かって居ります。昔、授業参観と言われていたモノは、

今時は違う言葉で言うって事は。

 何て言ったっけ?

 良いやーもう!

今日こんにちはー♪」

「でっ殿下?!」

 此の国の第三王女マルゲリータが何処どこかの国のてんのーさまの様に、にこやかに手を振りながらやって来た。王女なだけに護衛の騎士達やメイドさん達を従えて。

 そうそう、マルゲリータは中学校後半位の年齢かな?

 騎士団の団長さんはとて狼狽うろたえている。そう、此処は騎士の訓練場だ。

 なので自分は至極当然な問いを口にする。

「何しに来たの?」

り冷たいなあー!!」

「武神殿お?!!」

 おろおろお母さんな団長さんが度肝を抜かれる。ああうん、王女殿下に凄い口

()いているよね。

 良いんだよ!マルゲリータだから!!(酷い)

「お勉強はどうしたの?」

「ふっふっふー♡予定を詰めて空けて来たもの!

 うちの子が外で何しているか、気になるじゃない♪」

「誰が何処の子だって?

 王女が外出るなんて大事に成るんだから、大人しく個室に居なよ」

「軟禁みたいじゃないの!!やだよ!!

 其処のおじさんもそう思うよね?!」

「えっ?!安全の為には致し方ないのではないか、と」

「もー!イケず!!」

「も…申し訳有りませぬ」

「殿下!其のヒトは騎士団の団長さん!困らせないで上げてね?

 で、お偉いさんがヒト前に出るのは命懸けになるって、意識はしておいてね?」

「何でぇー?!」

「世の中にはね、誰かを悪者に仕立て上げて、やっつければ全て解決!なんて

思っているバカが本当に沢山居るんだよ。

 だからね、殿下が自分は何も悪い事してないなんて思ってても無駄だからね?」

 悪名あくみょう高き黒歴史、魔女狩りなんて、其のさいたるモノだ。

 黒歴史、と言っても、個人的な恥ずかしい過去などという下らない意味では

ない。

 人類という生き物の汚点、まともな精神ならば目を覆いたくなる狂った奴らの

消せない過去である。まともな精神なんて、割と当てにならないものだが。

 具体的には、西洋の昔の町がやたらと汚かった為に起こった、酷い病気が大流行した頃の事。

 病気が大流行した為、何十万だったかな?沢山のヒトが死んだのだが。

 其れは誰の所為せいだ?魔女の所為だ!魔女を殺せ!!となって、それこそ何千?

何万?のヒトがヒトの手で殺された訳だ。

 現代で魔女、といえば、汚い顔のばばあが悪魔と卑猥ひわいな契約を交わして病気や

不幸を撒き散らす、なんて思うヒトがかなり居るだろうが。其れこそが魔女を悪者に仕立て上げる工作だった訳だ。工作と言っても只の妄想の戯言たわごとだが。頭の悪い

昔のヒトビトは信じちゃう訳だね!

 本来の魔女というものは、只単に薬草にちょっぴり詳しくて、コミュ障なのだか森で独り暮らししているだけの、只のヒト、なのである。うちの村のマジョオ

みたいな!

 で、沢山のヒトが魔女に仕立て上げられて殺された訳だが、当然全く解決は

しなかった。

 世の中バカばっかり!

「世の中には狙撃そげき、なんて攻撃手段も有るしね」

「そげき?」

「凄ぉーく遠くから、目標の一人だけを狙って飛び道具で殺すって攻撃」

「え"っっ?!」

「今はそんなの居ないけど、気にはしておきなよ?」

「う……うん」

 王女殿下に全く威厳が感じられない件。どうしよ。

「武神殿、其の、狙撃が今は無い、という根拠は?」

 代わりに、抜け目の無いお母さんな団長さんが質問をくれる。

「気配察知。今は敵は居ないって、感じる」

 実は敵が居る、と感じるよりも、居ない、と感じる方が難しいのだが。

 悪魔の証明って言ったか?無いものを無い!と断定する証明。

「感じる…ですか」

「騎士さん達にも説明はしておこう!

 気配察知を身に付ける方法ですが…兎角、ずっと警戒し続ける事です!寝ている間も警戒し続けられれば完璧です!」

「正しい呼吸の時も、そうでしたな」

 団長さんは苦笑いをする。此れ以上は説明し様が無いし、後は気長に頑張ってね?

「今日は仕様が無いし、見て行きなよ。帰りは一緒に帰ろう」

「うん」

 コレ、王女殿下。どうしよ。

 マルゲリータの手下達が椅子を設置する。

 そして、いつもは騎士達に周りをぐるっと囲まれて勝負する訳だが、今回は

殿下の前は空けて囲われる。

 さーて、今日は今日とて使うのは双剣だ。相手は誰だかな?

 本来は刀を使う自分だが、現状刀を手入れ出来るのはオロチしか居ない。

 使ってしまうと、後々非常ぉーぉぉぉに面倒になってしまうのだった。

 そこで、此処らでも調達出来る片手剣を使えないかな?と思った次第。

「コレ、何をするの?え?ちいってば剣を二つも持ってるの?

 うわー、何か凄いね♪」

 はしゃいでいるらしき、マルゲリータ。

 まあ、自由が無い生活、年頃の娘さんにはこたえるのかねえ。

「武神殿はひたすらに実戦形式でわざを見せて下さるのです!

 そして、周囲から良く見ろ、と。おっしゃるのです。

 剣を二振り持つのは双剣、というそうです。

 まるで左右の剣が別々の生き物の様に連携して舞う、それは見事な御技です!」

 団長さんが解説する。何処か誇らしげだな?

「え?………

 ちいは男達に囲まれてひたすら勝負し続けるの?

 其れって、地獄じゃない?」

 初見なマルゲリータの感想だ。

 団長さんがうっと言葉に詰まる。あれ?感覚が麻痺していたけど、コレって、

いじめじゃね?って顔だ。

 それから細かい様だが、あの世には修羅道という、地獄道とはまた別の所が有るからな?まあ、あの世自体自分は信じちゃあいないが。

「自分が望んでこうしているんだよ。

 団長さんはいつもハラハラしているお母さんなんだから、めちゃあダメ

だよ?」

「武神殿…どうしても私をそう呼びたいのですか?」

「ぶっふ!お母さんなんだ!おじさんなのにね☆」

「殿下、武神殿は未だ幼い故、そう思いたい年頃なのでしょうが…」

「分かったよ☆お母さん!!」

「……」

 団長さんはもう何も言えなくなった。一応、コレ(マルゲリータ)王女だものね。

 はい、勝負だ!双剣の戦い方だが!

 双剣、というか、片手剣。武器としては短い部類だ。片手剣の中でも騎士の剣、ロングソードは、馬上から攻撃する事を想定し、比較的長さを気にする武器ではある。が、片手武器は長過ぎては自在には使えない。ランスの様にな!

 短い武器を使うとなると、どうしても体全部を使って攻撃しないと届かない。

体術を武器扱いに組み込む練習だと思って使っている。

 更に、此方から攻撃すると、必ず相手からの迎撃が有るもの、と心構えをして

おかなければならない。

 短い武器を使うって、もう徒手空拳と変わらなくね?位に思った方が良い程だ。が、実戦と言うモノは当たってはいけない攻撃が当たり前に来る。ので、それでも素手ではるものではない。

 相手からの迎撃が必ず有る、という前提なので防御が大事に成るが。防御は相手の攻撃()を受け止めてはいけない。触れないのが最上、最低でも払わなければ

ならない。パリィという奴ですな。

 払う、と言うと、もう少し攻撃的な意味になる。触れはしても出来る限り相手に影響は与えない、という段階も有る。流す、という事だ。

 其れから、体術を使う戦い方で重要になって来るのは、単純な動作一つ一つを

流れる様に繫ぎ、決して止まらない、という事。音楽記号で言えばスラーみたいな。

 長い武器なら使い手自身は動かなく成る、というか、体を安定させなければ

長い武器を振るえなく成るからな!槍を使った時は思いも寄らなかったぞ!

 相手の攻撃を流す。自身の動きも流れる様に。というのを踏まえて、片手剣での戦い方を流動るどう、と呼称しようか。

 で、自分は左右の手に二振りの片手剣を持つ。左右の連携、夫婦めおとだ!

 此れ等を使った自分の双剣術!始めるぞ!

 出て来た相手はヤラレャークさんだった。出て来た癖に乗り気ではなさそう。

 ヤラレャークさんはフェンシングの様に片手剣を構え。

 自分は自然体、目付きはぼんやりだ。自然体、と言うのは、一応真っ直ぐ立っては居るが、関節には余裕を持たせてゆったり、という状態だ。

 と、言うのも、指先までぴっしりと伸ばして気を付け!の姿勢は立っている

だけで疲れるのだ。それに、関節を開き切って居ると、動きが迚も制限されるし、ちょいと関節が曲がらない方向に力を加えられたら、関節を外されるか折られるかされてしまうぞ?

「始め!」

 団長さんの合図が有り。

 ………

 ヤラレャークさん、攻めて来ないなあ?

 目線を遣る。居合みたい。

「ひぇあ!!」

 情けない掛け声と共に突いて来た。自分との勝負に限り、突きを解禁して居る

のだ。練習しておかないと、感覚が掴めないでしょう?と言って。

 他のヒトは突きを防げないだろうから禁止だぞ?危ないからね!

 自分は左剣を外回しで絡めて、ヤラレャークさんの剣をもぎ落とす。

剣喰らい(プリーズドフェール)!!」

 かららん

「ちいの勝ち!」

 団長さんが宣言する。

「時々技名みたいなの言ってるが、何なんだ?」

 ガンバルさんが突っ込んで来る。

「技名だよ?今使っているの剣なんだし、みんなどんどん真似しちゃいなYO!」

「済まん!何処がどう技なのか分からん!」

「あー…今のは剣を絡めて相手からもぎ取っていた訳だね。

 ガンバルさん、勝負しようよ」

おう!!」

 そしてガンバルさんとの勝負が始まったのだが。

「うおおおお!!」

 ぶんぶんぶん!

 何と言うか、技術は少々お粗末で、力で振り回すという感じだ。

 まあ、ぱっと見、頑張るヒトなんだなあとは思うよ?

 悪いが、今の練習に丁度良いという感じだ!

流動るどう!!」

 先ずはかわし切るという前提で機動する。

 とは言え、誰がどうやってもたい移動いどうよりも武器を振る方が速いので躱し切れる

ものではなく。其処は…

 しゅっ!!

 まるで相手の武器の上でスケートでもするかの様に。自分が剣を擦り付けた瞬間だけ自分の動きが加速し、攻撃を躱す。そしてガンバルさんの攻撃自体には影響が無い。

 流れる川に浮かぶ物を手に取ろうとしても、川に手を浸けると避けるかの様に

流れ去ってしまう。そんな風に。

 実現するには、随分気を使っているんだよ?

「うおおおおおおおお!!」

 ガンバルさんは更に頑張って武器を振り回す。疲れるだろうに。勿論躱し切る。動きも止めない。だけでなく連動させる。

「踊っているみたい…格好いい………!!」

 マルゲリータが言葉を零す。うん。さまになってきたって事かな。

「ぶはっぶははっくはっ!!」

「ご苦労さま、有難うね」

 こんっからん

 言って疲れ切ったガンバルさんの剣を軽めに打ち落とす。

「狡いよ!!ちいは武器を使っているじゃない!!」

 何かマルゲリータが喚いているが。

「そりゃあ、自分、殿下の護衛なので」

 何言っているの?本当に!

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