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第69話 双剣始めました

「お前えええええええええ!!!」

「お前呼ばわりは嫌い!!!」

 未だ分かってない奴が居たか。それとも感情が噴き出してつい言ってしまったのか。

 騎士の訓練場で。騎士の一人が激昂し、自分を唸り付けているのだ。

「それっ……そっ其れは駄目だろうっ!!!

 武神とか呼ばれているからって調子に乗りやがってえええええ!!!」

 因みに。此の、喚いている騎士はドラゴンの討伐に加わらなかったヤツだ。

 直ぐ後ろでソイツを殴りつけてやろうとしている騎士達が何人か居るのだが。

 後ろの方は討伐に行った連中だ。自分をもう、本気で崇拝しちゃっているのだ。

 だから、此の無礼者がああ!と殴ろうとしている。騎士なのに後ろから

殴っちゃって良いの?って程に本気だ。

 殴らないでいるのは、自分が視線で制しているからだ。あー、居合だねえ。

いや、崇拝している連中だから、ちゃんと居合が出来ているかはアテにならない

けれども。

 喚いているヤツは気付いていない。後ろぉぉぉ!!ってな?

 何故騎士の一人が喚いているか。分からなくもないが。と、言うか、

決まり切っているが。

「よっよよ世の中を舐めているだろうっっ!!!」

 呂律ろれつも怪しい位興奮しているねえ。と、言うのも。

 今、自分は木剣ぼっけんを持っている。木刀ではなく。木製の片手剣な。

 片手剣なのだが。両手に持っている。一振りを、ではなく。左右に一振りずつ。

 そう!片手剣を二振り。双剣そうけんだ。

 騎士の一人が喚いているのは、片手剣一筋で生きてきた者にとって、別の武器を使っていた者が何の気なしに片手剣を使う、おまけに左右の手に一振りずつ持っているのが迚も許せない、という訳だ。

「いやー、ゆえ有ってね?」

「故もクソも有るかああああああ!!剣は騎士の魂だあああああ!!」

 そういう話、したねえ。丁度ドラゴン討伐に行く日だったから、コイツは聞いていない訳だが。

「そのっへらへらした態度がっ前から気に食わなかったんだっ!!

 世の中をっ男を舐め腐りやがってぇ!!餓鬼がっ女がっっ女餓鬼がああっ!!」

 …此のヒト、過去に何か有ったのだろーか?いや、自分が女って罵られるのは

違和感バリバリなんですけどね?

「騎士とは剣で語る者。違いますかねえ?」

 故、というのは。

 刀を使うたびに持ち帰る、というのが。可能ではあるが、やりたくはない、という事だったからだ。面倒臭過ぎる!!やっぱり時間は取られたし、疲れたよ!!

 で、此処、王都でも片手剣ならば直ぐ調達出来るかな、と。折角両手利きなのだから、両手に一振りずつ持つのも良いかな?と。そう思った次第なのだ。

「そんな喚いている位なら一勝負、いっときません?」

 実は、コイツの様に突っかかってくれる方が勝負…に見せかけた練習台にして

あげるには都合が良い。

 崇拝している連中は何かキモいんですけどっ?!!

「はっ!!騙されねえぞお?!!

 剣二本持ってる自体狡いじゃあねえか!!一本叩き落としても、まだ負けてないとか言う気だろうがっ!!」

 都合が良い。それは確かなのだが。

 ………はい。自分、ケチ付けられるのは嫌いなんです。大っ嫌いなんです。

 そろそろ、図に乗んなよ?てめえ!!って、思っちゃいます!

「片方落としたら負け、で良いですよー?其方そちらも二振り持ったって良いし」

「言ったな?!もう言い逃れできねえぞ?!

 団長ぅ!!合図お願いします!!」

 相変わらずはらはらしているお母さんな団長さんだが、場が整ってしまっては

止められない。

「始め!!」

「しゃあ!!」

 相手は開始早々、左剣を叩き落としに来る。

 うん、世の中殆どのヒトは右利きで、普通に考えれば左手は、本当に、只剣を持っているだけ、叩き落とすのも容易たやすい、という論理ロジックになるだろうね。

 自分は左剣を、先ずは切っ先を下ろしてからの外回し!する。

 すると相手の剣をすかしたその上で、自分の左剣が上から追撃する訳だ!

 かんっからららん

 相手は剣を振り下ろしている所で追撃されたからだろう。それこそ容易く木剣を落としてしまう。

「ちいの勝ち!」

 団長さんが宣言して勝負終わり!

「ぐっぐうう……」

「ん?まだ負けてないとか言う?もう一回いっとく?」

「があああああああ!!」

 相手は後ろを向き、悔しそうに喚きながら腕を振り回す。まあ地面に叩きつける様な物も持ってなければ、手近に殴り付ける様な物も無いから、かな?

カッコわる!!

「つ……次はおれだ!!」

 また別の、自分に不満が有るらしい騎士が前に出る。

「始め!!」

「ふっ!!」

 次の相手は右剣を狙って来る。あー、初っ端左剣で勝ったから?実は右剣が弱点だろうって?

 次は右剣で、切っ先を下ろしてからの外回しをする。

 かんっからららん

「ちいの勝ち!」

 安直過ぎですね。

「此れならどうだあっ!!」

 またまた別の騎士が、勝ち誇った顔をして木剣を二振り持ち、詰まり双剣で

来た。

 何で勝負はこれからなのに勝ち誇っているの?

「始め!!」

 がんっかららんかあんっからららん

 今度は此方から攻め、相手の左剣を此方の右剣で打ち落とす。

 うん、左剣は本当に持っているだけだったね。

 次いでに此方の左剣で相手の右剣も打ち落とす。これで完全勝利ですね?

「ちいの勝ち!」

「…………」

 相手が呆けて突っ立っているので声を掛けてあげる。

「左手にも剣を持ったからって、使えなかったね?」

「うわああああああああああん!!!」

 相手は恥ずかしいのだか情けないのだかで走って離れて行った。おーい、

帰るなよ?

「君には驚かされてばかりだな」

「おー♪ヘイキンさん!」

 それ程でもありません。愚かな相手が続いただけです。

「では今度は剣での手合わせ、お願い出来るかな?」

「あ、片手剣を左右の手に一振りずつ持つのを、双剣って言います」

 軽口を叩いている様でいて。身が引き締まるのを感じる。

「ははっ。双剣か。楽しみだ!」

 愚かな相手というものは、突ける隙が幾らでも有るのだ。だから勝つのは

容易い。

 ヘイキンさんには油断も隙も無い。もう誤魔化しが通じる相手ではない、という事だ。

 能力も平均値だとして……名前のせい?ああうん、兎も角。平均値というのは

順位が真ん中、という意味ではない。

 数は少ない一部の強者が平均値を上げてしまうので、平均的なヘイキンさんは

順位を付けるならば上位の強さの騎士になるのだ!

 はっきり言うと双剣を使いだしたのは今日、勝負したのは愚かな三連戦だけ。

 ゲームに例えれば初期レベル、ヘイキンさんはボスとは言わないが終盤戦の強さになるんじゃあないかな?無理ゲーだな!!

 しかし!実戦はゲームの様にプレイヤーのレベルに合わせた相手が出て来る

訳ではないのだ!

 実戦とは!!どんな相手が来ようと!今有る力で立ち向かうしかないものなのだ!!!

 …あー、今は実戦ではないけれど。やってやるさ!!

 なあに、本当に最初から、シャールとも話した事だ。

 両手で持つ武器は使い難い。だから世界的に広まるのは片手武器。

 普段から両手で持つ刀を使っている自分がっ!!片手剣を使いこなせぬ道理は

無し!!!

 況してや此方が持つ片手剣は二振り!左右の剣を連携させようという意識も

有る!!

 そう!!夫婦めおとだ!!これだけの対抗手段は有るのだ!!!

 行くぞっ!!!

 ヘイキンさんと自分は適度に間を開けて、互いに構える。

 ヘイキンさんはかなり横向きに近い右半身(はんみ)。まあ、フェンシングみたいな構えだな。

 自分は自然体と言おうか。両手はゆったりと下ろし、剣はやや上向き、ヘイキンさんに対してやや右側を前にして立つ。

 空気はぴんと張り詰める。自分の目はぼんやりしているだろうが。遠山えんざん目付めつけだ。

「始め!!」

 団長さんの合図が有り。瞬間!!

  がつっっっ

 ヘイキンさんの剣を自分の左剣が受ける!!っっくうっっ流し切れなかったかっ!!

 自分は幼く、小さく軽い身!それは分かり切った事実なので、ヘイキンさんの

攻撃は全面的に流す態勢でなければ戦いが成り立たない!!

 今のはヘイキンさんの攻撃を、左剣で内に払いつつヘイキンさんの背側へ

回り込む動作だったのだが!

 片手剣はやはり短い!!武器をぶつけ合った重圧プレッシャーが瞬間で伝わって来るという事だったっ!!

 ヘイキンさんの背側から右剣で追撃を掛けたが、重圧で一瞬止まってしまった為しっかり向き直ったヘイキンさんに受け止められる!!

 しかし!戦闘動作は流れる様に、止まらず繰り出すべきなのだ!自分は左剣の

根元の方でヘイキンさんの剣を殴り飛ばしに行く!!

「!!」

 ヘイキンさんははっと目を見張ったが、身を引いて躱す。うああ!!自分、

小さいからなあ!避け易いよなあ!!だが追尾するかの様に左腕を伸ばして攻撃

しつつ。左腕が伸びきったら、左剣を軸にした振り子の様に右剣を繰り出す!!

 ヘイキンさんは焦った風に右剣を払いに来るが。もう少し!!

 右手首をひねってヘイキンさんの切り払いをすかし、空振ったヘイキンさんの剣に向かって左の鉄槌てっつい!!おっと、柄頭つかがしら攻撃だよ!

 鉄槌とは、ひじから先をまさしくハンマーに見立てて、握った手の小指側で叩く打撃技なのだが。

 兎に角ヘイキンさんの剣を叩き落とした!

「………ちいの勝ち!」

 団長さんは少々考えた様だが、そう判定した。槍で石突き攻撃が有るのだから、剣で柄頭攻撃が有っても良いじゃないって所だな。まあ、居合には柄頭攻撃が型に組み込まれてはいるのだが。

「……ふうっ……参ったよ」

 ヘイキンさんは爽やかな笑顔で言う。

「認めちゃうの?団長さんも一寸ちょっとびみょーって感じじゃない?」

 自分としても課題が残ったって感じだしな!!

「正直、悔しいという気持ちは有る。認めたくないとも思う。

 けれども、分かってもいる。

 君は幼く、小さく軽い。其れで我々大の男と対等以上に渡り合っているのだ

から、それだけで驚異的な事なのだ、とね。

 これで難癖など付けたら、格好悪過ぎるじゃあないか」

 ヘイキンさんは苦笑いする。

 囲っている騎士達の中で格好悪過ぎる連中が情けない顔をする。

 自分は……

 危ねえ!!何かほだされそうだった?

 何だか、分かってくれた…みたいな気になっちまったよ!!

 今回訂正が生じてしまった理由は、

平仮名1文字が欠けた所為で文章が

少々おかしくなってしまった為です。

 本文が1文字追加した訳ですが、

内容には変更は御座いません。

 申し訳ありませんでした。

2019/01/03・3時34分

 訂正した筈の所が直ってなくて、

二度目の修正です。

 内容には変更は御座いません。

 はて?何故でしょう?

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