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第63話 ドラゴンスレイヤー始めました

 自分は構えて、じっと相手をにらむ。

 但し、顔は相手に向けていても、視界全体を認識する。遠山えんざん目付めつけである。

 とは言え、相手が派手に暴れ回った所為せいだろう、周囲には警戒にあたいする存在は

感じられない。

 構えは薬丸やくまるげんりゅう蜻蛉とんぼの構えだ。

 そして、相手はドラゴンだ。

 ドラゴンは四肢を地面に突っ張り、四つん這いに立っている。

 首を失ってもなお。

 そう、自分は必殺ひっさつ野太刀のだちでドラゴンの首をねた。

 必殺野太刀って何だ?って?

 薬丸自顕流は本式には野太刀を使って、威力的に一撃必殺の攻撃を狙って放つ、という事だ。

 使うのが打刀うちがたなでも、刀の軌跡を太刀たちすじ、初撃をしょ太刀だちとかいち太刀たちとかって言うでしょ?太刀の方が古くから有るので習慣でそう言うのだろうけども、じゃあ必殺野太刀って言っても良いじゃない!ダメ?

 あー、はい。兎も角、自分はドラゴンの首を刎ねるのに成功し、残心をしている訳です。

 ニワトリの話でありますが、農家のヒトがシメた、まあ詰まりは首を切り

落とした時の事。食べる為だったのでしょうね。

 首を失った体だけのニワトリが、一直線にダーっと走って行ったとか。

 生き物と言うモノは、原始的で単純な生き物程しぶといのです。

 ニワトリは体温が有る生き物、恒温こうおん動物です。

 ドラゴン、此処では何故だか魔法を使うオオトカゲだった訳ですが。体温は気温に左右される変温動物です。

 変温動物の方が古いタイプ、原始的な生物な訳ですね。

 首を失ってなお、ニワトリよりも動く可能性が有るのですね。

 なので立ち位置はドラゴンの首側。後ろ側だと尻尾攻撃を受ける可能性が有ったので。

 まあ前でも体当たり攻撃位は有るかも、しかし首が無ければ噛み付きは無いな、と言う訳です。

 その首無しドラゴンが未だ立って居る、警戒するのは当然なのです!

 これぞ残心ざんしん、相手が完全に動きを止めるまで油断しない!という心構えなの

です!

 と、しばらくドラゴンを眺めて居ると。

 ずんん………

 足を地に着く力を失い、ドラゴンは腹を地に着いた。詰まり、たおれた。

 はあー……終わった!

 自分は大きく息を吐くと、構えを解く。

 血振ちぶり、納刀のうとう。本当の意味で血振りする日が来ようとはね…ハハハ…

 疲れたよ。当たり前じゃん!!

 納刀を終えたので真っ直ぐ立つ。と。

   うおおおおおおお!!!

 討伐隊の面々が雄叫おたけびを上げて此方こちらに走って来る。

 どきげろーってか。はっはっは…

 ヤラレャークさん辺りがしっかり見ていて、実況みたく語っていたか?で、

勝ったぞーって?

 踏みつぶされそうで怖い。寄って来たら逃げよう。

 騎馬が先行して寄って来た。当たり前か。

 騎士団の団長さんはかなり距離を置いて下馬げばし、ゆっくり、堂々と歩いて来る。

 あー、団長さん目に涙溜めているなー。

 団長さんは自分の目の前に立つと、ビッと敬礼をする。自分も敬礼!

 すると団長さんはお辞儀をし…と言うよりも崩れる様にこうべれて手を膝に

着き、やっと、という感じに一言。

感服かんぷく……致しましたっ!!」

 あー、団長さん。内心ではドラゴンとの戦いは絶望的だと思っていたな。

 しかし集団の頭を張る者は、ダメだこりゃあとは言えない。何処どこにも明文化は

されてないかなー?とは思うが、言ってはいけない。暗黙の了解ってヤツ。

 内心、何処どこかで何とかならないかと非常ぉーに焦りながら、騎士達を鼓舞して

いたのだろう。

 うわー、リーダーとかいう役割、やりたくねー!

 だってねえ?普通に考えて、武器を持っておりゃーとか掛かって行っても、

風の(エア)竜の吐息(ドラゴンブレス)喰らってお終いだものねえ。

 騎馬だって馬ごと吹き飛んでやっぱりお終いだし。

 接近戦に持ち込んだとしても、二、三人は直ぐられそうだし。そうなると、

誰も接近戦には行きたがらないだろうし。

 いや、騎士の中には、おれが殺られたら後を頼む!なんてのを格好いいとか思う奴が居たりするか?

 まあそれ以前に、空を飛んでいる限り、一方的にやられ放題だったろうし。

 飛び道具使えば~とか、現代日本人は思っちゃうだろうけど、現実的に、

飛び道具は先ず当たらないモノ、と考えるべきなのだ。

 作り話に飛び道具を使う主人公が居たら、撃てば必ず当たるみたく見えるだろうけれども、何度も外れた!外れた!あ、やっと当たった!なんて展開、描く方も

面倒だろうし、読む方だって読みたくないだろうし。

 作り話は現実通りには作れない所が有るって事ですな。態々(わざわざ)話を作るって事は、聞かせるなり見せるなりしなきゃあいけないのだし。

 で、飛び道具は先ず外れるモノ、なのだが。それでも敵に近付く事無く、

遠くから一方的に攻撃出来るという特性はとても魅力的なのだ。だから飛び道具は

存在している。

 騎士達は飛び道具を見下しているみたいだけどね。弓は見当たらないし。

遠くから一方的に攻撃するのは卑怯だ!と思っているのだろう。

 まあしかし、対ドラゴン戦、騎士団はどう考えても詰んでいた訳ですよ。

団長さんの心労、お察し致します。

 それが自分一人で勝っちゃいました!ってな。そりゃあもう、感謝するやら、

もう体を投げ出して平伏ひれふすやら、逆に、実は恐ろしい存在だったんだね、とか

悪い方向の感情を抱くとか。色んな感情がごちゃ混ぜだろうな、団長さん。

「あー、どーもどーも!」

 わざと軽い調子で返す。気にすんなー?ってな?

「所で、ドラゴンの死体、どう処理するんですかね?」

「近くの冒険者ギルドに持って行きます。

 世の中には、所謂いわゆる素材と言われる生き物が居りまして、生き物を解体する施設が冒険者ギルドには在る訳です」

 成る程成る程!ゲームみたーい!とは言え、モンスターを斃せば直ぐお金と

ドロップ品に成る訳ではない。なので。

 搬送魔法!

 ドラゴンの死体が地面から少々浮く。まあ、おみせやさんの品物を搬送するのに比べたら楽なモンだ。

「そ……それは……魔法ですかな?!」

「うん」

 さも当然の様に返す。根掘り葉掘り訊かれるのも面倒臭いし。

「さああ帰りましょうかー!」

 そして。

 諸々(もろもろ)の処理を終え。

 あ、所で。ドラゴンは捨てるところが無い、全身()れ素材なのだとか。

アンコウかよ!

 あー、兎に角。

 謁見の間、王の御前。それは、呼び出されますヨネー!

 国王陛下が重々しく口を開く。

「武神ドラゴンスレイヤー・ちい・タダノ!」

「げぶぉうぶぐばぁ!!!」

「……お主、新しい返事でも開発しておるのか?」

「滅相も御座いません」

 国王、絶対自分を悶え転げさせる気満々だよ!厨二臭パワーアップしてるよ!!

「まあい!

 しかし!くっくっく!とうとう一人でドラゴンを討伐してしまうとはな!

 騎士団は観客として連れて行ったと言う訳か?」

「騎士団が討伐に向かったのは勅命では御座いませんか?」

「しかし、騎士団を置いて、一人でドラゴンの元へ飛び込んで行ったのだろう?」

 伝わっているなー。軍の手柄はリーダーが独り占めみたいな所が有ると思って少々羽目を外したのだが。あの団長さんはそんな事しないか。

「ドラゴンと戦っては騎士の方々が皆死んでしまう!と、思いましたもので、

つい」

「ぶっ!くっ!くははははははは!

 あーっはっはっはっはっはっは!!はーっはっはっはっはっは!!」

 何がツボにまったのか、国王大笑い。

「つい!か!!騎士達が皆死ぬ様な相手を、つい、で斃したのか!!

 はーっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 そんなに面白い?

流石さすがだな!流石武神!いや、武神ドラゴンスレイヤー・ちい・タダノ!!!」

 ぐはああああ!!やめてええええ??!!!

「え……それで、あの、少々里帰り致したい次第なので御座いますが」

「ああ、カタナを使ったから、修繕しに、だよな?」

「左様で御座います」

「ふむ、一週間も帰って来たらどうだ?」

「…おうかがい致しますが、帰省している間の期間は、兵役に含まないので御座いますよね?」

「それはそうだな」

 兵役終わるのが一週間先送りになるだけじゃあないかよ!何日帰っていようが、余計なお世話じゃん!

 …まあ、それが後々何か意味が出て来るかも知れないか。

「それでは、御言葉に甘えさせて頂きます」

「その間わたし達はどうなるんです?!」

 毎度お馴染み、ライナが口を出す。

 王の御前だぞ?!何時か死刑とか言われちゃうぞ?!!

「あー、付いて来る?」

 仕方なし、自分が先ずライナに返事する。王が何か言う前にね!!

「行きます!!絶対に行きます!!!」

「はっはっは!元気な娘御むすめごよの!」

 あれぇぇぇぇ??!国王、其れで済ませちゃうのぉぉ??!!

 有難いけれども!!

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