第62話 ドラゴンと戦ってみた
前話で想定外の修正を行った結界、
肉体的にも精神的にも大ダメージを
負ってしまいまして、休眠に入ったのですが。
今、此の後大丈夫か?という勢いで
話を仕上げました。
はい、今週、忙しいって言ったのですよね。
頑張れ自分!つーか、
自分だけじゃあ済まねえんだよーん!
ドラゴンとの戦闘領域に突入した。もう後戻りは出来ない。
一人で戦う為、毬男さんと類似さんの双子さん(?)みたく、更に双子さんがジャンプ台にでも乗ったみたいにびよよおおおんと跳んで移動したのだが。
普通に死ねるわ!!魔法を今までで最高に駆使しまくってようやく、痛かった
けど何とか着地って所だわ!!恐るべし!毬男さんジャンプ!!只かめさんと
戦っていた訳じゃあないんだね!!
お陰でようやっと落ち着いて立つだけの事で精一杯だよ!!直ぐにドラゴンの
反応が有るだろうし!
やはり、先ずは管結界が此方に伸びて来る!!
では早速!此れが通用しなければ始まらない!!!
上端を攻撃が来る方向に向けた卵形結界!!並びに卵結界ごと包む、先端を攻撃方向に向けた水滴型結界!!
流線形にすると後ろの先端が地面に触れてしまうので!!この場で咄嗟の臨機
応変だっ!!!
ごおっっ!!!
周囲の物体が吹き飛ぶ!!!
水滴型結界は周囲から風に押し付けられて、それで位置固定されている感じだ!
何秒だろうか、強風に吹き付けられ、やがて風が止む。
まあ吹き飛ばされたとしても何とか生きてはいられるかな?とは思っていたが。
この場に留まれたのは面倒が無くて良い!
只攻撃を受け続けても居られない!反撃だ!!
さて、先ずはドラゴンを囲む結界を多重に発生させる。
で、中身を閉じ込めたまま結界を拡げる!!重?!気圧って、想像以上に重いな?!!
けど拡げる!!意地でも拡げる!!!するとどうなるか!!
ドラゴンの周囲に光の粒がキラキラと舞う!!おう!!ダイアモンドダスト
やん!!
ダイアモンドダストとは。極寒の地で時々見られる、空気中の水分が凍って光を反射し、それはもうきらっきらと光る現象だ。
結界内部は想像以上に冷えた様だ。が、それでダメージを狙った訳ではない。
気体は器に合わせて相当に変形する。体積すら変化する。が、当然空気を閉じ
込めているので、中身は薄く成る。それで副次的に冷えたのだが。
がくっ
ドラゴンの態勢が崩れた!と、言うのも。
ドラゴンは魔法結界をグライダーの様な形にして滑空していた。滑空とは空気の上に乗っかる様なものである。空気が薄くなったら乗っていられなくなる!!
ずばあぁぁぁんっっ!!
迚も痛そうな音を立ててドラゴンは地面に叩きつけられた!!!
それでも、何とか不時着した様ではあるが。ヒトだったら今ので即死していてもおかしくはない。
が、ドラゴンは痛みを感じていないかの様に動き出す!
野生生物は。
ヒトとは痛覚が違うのだと言う。
どんなに我慢強いとしても、痛ければ動きも頭の回転も鈍る。
厳しい野生の世界では、鈍っていたら生き続けられない。誰も助けては
くれない。
と、言う訳で、ヒトから見たら痛みを感じていないだろう!!としか思えない
動きを野生生物は平然とする。況してや今回の相手は爬虫類だし。
ドラゴンは又、管結界を此方に伸ばしてきた!!
今度は水平方向からの攻撃なので、卵結界と流線結界を併用する!!!
っごごうっっ!!
今回も吹き飛ばされずに耐えきったっ!!予習ってっ大事だねっっっ!!!
結界に包まれて居る間は呼吸が出来ないので、攻撃が長かったり、後何度も続けられると耐えきれない。
耐え続けても相当に疲弊するっ!何とかしないといけないがっっ!!
………
ドラゴンは動き出す。
此方に直接向かって来たのだ!
爬虫類の頭でも風攻撃が効いていないとやっと分かった様だ!いや、しつこく風攻撃を続けられても困ったのだけどねっ!!
自分は抜刀するっ!うんっ!今回はちゃんと真剣だぞ?
そして。
此処は是れしかない。有り得ない。
しゃがむ程に腰を落とし、右膝を曲げる。が、左脚は真っ直ぐ伸ばし、横に
突っ張る。
そして、刀は天を衝く!!
薬丸自顕流!!蜻蛉の構え!!!
「きええええええええええええええええええええ!!!!!」
気合を発し、突撃を開始するっ!
互いに突撃すれば、間は程なく詰まる!!
ぐんぐん近付くと、ドラゴンのでかさが顕になる!
全長四メートルはないか?そして此方は幼女だ。
正に巨大怪物だ。そのものだ!!
モンハぁぁぁン!!いや何でもないけどっ!!
此の攻防はっ!
チキンレースに似ているっ!!
チキンレースとは何か!!
複数のバイク乗り、まあ大体は二人だろうが。壁に向かってバイクで走り、壁の近くまで走れた方が勝ち!という下らない競争だ。
当然、壁に激突すれば只では済まない。が、壁より遠くで止まれば臆病者、と
言う訳だ。
何処が似ているか!
此方が先に動きを見せてしまった場合、直ぐに反応されて食われる。
野生生物は反射神経も、ヒトにはどうにもならない位早いのだ!!
一方、此方が勝つには先に動いたドラゴンに対応するしかない!
ドラゴンが先に動いたとて勝てるとは限らない、否!分の悪い賭けなのだが、
其処が強さの差だ。どうにもならない!
何故、ドラゴンが先に動けば勝てる目が有るか!
どんなに身体能力が有ろうとも、始めてしまった動きは無かった事に出来ない
からだ!!
此方がきっちりと対応すれば、どんなに反射神経が凄まじかろうと、まるで相手から此方の攻撃に当たりに来る様に動いてしまうのであるっ!!!
しかし此方が勝利するには、分の悪い賭けを三段階越えなければならない!
先ず、ドラゴンが先に動かなければならない!言い換えれば、自分が後に動かなければならない!
次に、自分はドラゴンの攻撃を完全に避け切らなければならない!
何故なら、実戦には当たってはいけない攻撃ばかりが有るからだ!
相手が毒持ちならば当然だが、野生生物は皆、迚も汚い!掠り傷でも負えば傷口からバイ菌が入って、今生きてても後で死ぬ羽目に成る!それも相当苦しんで!!
そして、一撃で終わらせなければならない!
野生生物は一撃で終わらなければ又動く!そして、ヒトの身体能力では後の動きにまでは迚も対応出来ない!
手負いの獣は恐ろしい、と言う。
現代日本人は其れを聞いたら、死なない程度に怪我した獣は怒り狂って暴れる
から恐い、としか解釈しないだろう。世の中は広いので、其れも否定は出来ない
だろうが。
もう一つ、狩人なんかが獲物を仕留めたと思ってのこのこ近寄って行ったら最期の一撃を喰らって共倒れ、なんて事になる、と言う事だ。
この最期の一撃が恐ろしいのだ。自分は狩人なんて職業、特に趣味で狩るなんてヤツはキライなので知った事ではないが!
今回の相手はドラゴン、爬虫類だ!首を落としても少し動くかも知れない!!
更に、此処はファンタジー世界!!ヒトより大きい巨大昆虫なんてのも居るかも知れない!!
よく創作物には出るだろう!!虫は首を落としても、少し処ではなく平然と動くのだ!!!
カマキリなんかが、オスはメスに食われるが、下半身だけで交尾とか、ヒドい
事態になってたりするし!メスはオスを食いながら交尾されているんだぜ?ヒドい生き物!!
兎も角、実戦というものは、相手が完全に動きを止めた、と確信するまでは油断出来ないのだ!!それ故の残心なのである!!形だけ構えていれば良いってもんじゃあないよ?!!
分の悪い賭けを三段階、と言うモノは数学的に言うと小数、詰まり1より小さい数字の掛け算である。すると、掛ける前の数字よりももっと小さく成るのである。三段階も掛け算すればもう天文学的小さい数字に成る。分母が分子より途轍もなくでかい数字な!!HAHHAHHA!!
戦うのが馬鹿らしく成ると思うか?しかし!!!
此処で勘違いしてはいけない事実が有る!
全くの運のみの賭けと、少なくとも結果までの過程は自分で決められる賭けは
違う!!と言う事実だ!!
全くの運のみ、の場合、半分以下の確率の賭けなどやるものではない。以下、と言うのは半分も含むんだぞ?具体例はギャンブル!!の子、やら客、やらだ!
ギャンブルなぞ全くの運のみの賭けを、確率は低くして客にやらせるモノだ!!イカサマなぞ有った日には賭けには勝てる訳が無い!!
ギャンブルの経営は、確率の低い全くの運のみの賭けを、如何に客の腕で選んでいるかの様に見せ掛けられるかがキモ、なのではないか?
過程を自分で決められる賭けの場合、どんなに確率が低くても賭ける価値は
有る!!
言うなれば、確率の低い賭けとは成功の具体例と失敗の具体例が有った時、失敗例がやたら多いという事であり、成功の具体例を目指して過程を構築すれば良い!という事なのだ!
まあ、確率が低いと言う事は成功を目指しても失敗する確率が高いという事だが。
其処は実力と努力で何とかするしかあるまい!
ドラゴンとの戦いに勝利するまでの、分の悪い三段階の賭け!!
掛け算すると天文学的に小さく成ると言うならば!
三段階を一気に踏み抜き成功させる!!!
自分で三段階とか言っておいて、ソレひでえ!とか思う?
是れが何が何でも勝ちをもぎ取るって事だ!!!行くぞおぉぉぉぉぉ!!!!
「ええええええええええええええええええええあああああああああああああああああああ!!!!」
ドラゴンが!
自分が走る軌道上に顎を開く!!!
自分は体をずらす!!詰まり、走る勢いと姿勢は変えぬまま、かくっと走る方向を変える!!
ざんっっっ
肉体が分かたれる音が上がり!!
……どさりっっ
モノが落ちる重い音が低く響いた………




