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第19話 刀鍛冶始めました

 いよいよ刀の蘊蓄うんちく本格始動となります。

 創作物と言えば大体どれを見ても主人公だけの特殊能力を使ってますよね。その方が派手なのもありますが、それならケチ付け様も無いですからね。これはそういう話でそういう特殊能力なんだ!と。

 希望が膨らむ妄想能力もそれはそれで結構なのですが、現実的な能力でも強く!凄く!格好良くなれるんだぞ!と言いたいのです。

「ちい、見知らぬ人物が」

 シャールは言う。自分は物見の塔……ぽい木の上で広く見回していたが、シャールが村に駆けてくるのを見付けてさっとシャールの方に向かったのだ。

「旅人の様なのですが服装が独特と言いますか…

 それからワットと僕の木刀を目にした時ニヤッとした気が…」

 ふむ、シャールからの情報を吟味しながら共に現場に向かう。

 そこには。

 ワットと村の大人達と向かい合った人物が居た。何より先ず目に付いたのは。

 笠、である。頭に被る。時代劇位でしか見ない様な。

 そして右腕が妙に太いのに気付いた。全体的な服装も妙に和服っぽい。

 今時日本人でも晴着、詰まりお出かけ用のバカ高い服しか知らないだろうが、もっと日常感の有る、それこそ時代劇に居そうな服装だった。

 そしてそして、特筆すべきは腰に差したもの。武器は全体的に造りが粗いが、何より上向きに弧を描いている。

 成る程?そういう事ね。

 もう大体自分はその人物像を把握した。その人物は笠をクイッとつまんで持ち上げる。

 目は青かった。髪は茶っぽい金髪だ。日本かぶれの外人さんみてえだな。

 そいつは自分を見てにやあっとした。相手も自分をある程度察したか。さて。

「貴方は何者ですか。この辺りに何の用が?」

「わしの名はオロチ!流浪人るろうによ!」

 武器を抜き、野球のバッターにちょっと似た姿勢になる。おい!

 その武器は拵えこそ粗かったが、間違いなく刀だった。真剣だ!

「何だよおっさん!そのヘンなポーズはよ!」

 ワットが指差しながら無防備に近付こうとする!ドアホウ!!

「離れて!!近寄っちゃあ駄目!!!」

 ビクリとワットは足を止めた。が、足りない!!!

「な…何だよ急に」

「早く!!!!」

 いつもの如くぼやこうとするワットにピシャリと言い放つ!やっとワットは下がり始めた。

 正直、オロチとやらは剣客だとは思えない。が、真剣を抜いた以上、ついうっかりにでも斬っちゃいましたじゃあ済まんのだ!!

 皆が自分よりはオロチから離れたのを確認する。自分は既に木刀を構えて居る。

 切っ先を後ろに向け、木刀を右半身ごと思い切り下げた構えだ。武器をオロチから隠す様に、と言うより意図的に隠して居る。

 そして自分は口を開く。

「此処にオロチなんて名前無いよね。何て言うの?」

「オロチで構わんよ」

八岐大蛇やまたのおろちだとでも言う気?」

 オロチは更ににやあ~っとした。

「訳分かんねーよ!!」

 ワットが絶叫した。が、村人達皆共通の気持ちだろう。

「八岐大蛇というのは頭が八つ有る巨大な蛇の化け物。神話級の怪物だよ。

 で、オロチの構えは八双はっそうの構え。あの構えから八種類の攻撃が繰り出せるという意味」

「成る程!八種類の攻撃!それで八岐大蛇!!」

 シャールが言葉の意味を呑み込んでいる。

「そして八双の構えを蜻蛉トンボの構えと呼んで主体とする流派が在る。

 東郷示現流とうごうじげんりゅう雲耀うんようの剣!」

「うんよ?」

 ワット…もう少しそのカッコ悪い言い方どうにかならんか。

「雲間に光る稲妻」

「何ですかそれは!まさかいかずちの迅さで敵を斬るとでも言うんですか?!」

 シャールは驚いて言う。いくら刀が迅いと言ってもそれは無茶苦茶だろう!てな。けども。

「言ってるね」

 実現出来るかは兎も角………いや無理だろ。だよね?

「かっけええぇぇえええええ!!!何だよ!何なんだよ!!教えろよそういうのは!!」

 ワットはやたら盛り上がっている。そして。

「がぁーっはっはっはっは!!!」

 オロチが笑い出した。そして納刀し。更に下緒したお、鞘に付いた紐を鍔に巻き付ける。鍔には相手の刀を引っ掛ける穴が有り、そこに紐を通せば抜刀出来ないというアピールだな。

 その刀をこちらに突き出して言う。

「これをやろう」

「えー、何処でも言われる事だと思うけど、知らないヒトからモノもらっちゃあいけませんって」

「なあに、只という訳ではない!お主の住む所の近くに家を世話して欲しくてな!刀一(ふり)で家一軒!悪い買い物ではあるまい!」

「自分、大工でも地主でもないんだけど」

「そう言うでない。分かるじゃろ?」

「まあね」

「何がだよ!」

 ワットが横槍入れてきた。黙ってられない奴め。

 自分は既に構えを解いており、掌をオロチに向けて言う。

「紹介するよ。刀鍛冶のオロチだよ」

「うむ」

「何でちいが見知らぬ他人を紹介してんだよ!」

 ワットが突っ込むが、シャールも黙ってられないとばかりに言う。

「ちょっと待って下さい?刀鍛冶…ですか?」

「そう。だけど職人仲間にも刀の使い手にも恵まれず旅する事になったと」

「だから何でちいがそのおっさんの話してんだよ!」

「いやあ、全くその通りじゃあ!」

「その通りなのかよ!!」

 ワット突っ込み忙しいね。

「当て処無く彷徨う日々、そしてとうとう木刀としか思えない棒を持つ子を発見!!」

「うむうむ!」

「それもその通りなのかよ!!」

「更に木刀を持つ子が呼んできた子はもっと幼かった。のに何故か足捌きから別格だった」

「それちいの事かよ!自惚れかよ!」

「その通りなんじゃ」

「ぅおおーい!!!」

 ワット絶叫する。何か気に入らないらしい。

「だから抜刀して反応を見たと。危ないでしょうが」

「なあに、腐っても刀を扱う職人じゃ。危ない真似等せぬよ」

「もし攻撃受けたとしてもそれ言えるの?」

「しなかったろう?」

 のらりくらりだなあ。

「そういう訳でこのヒト村に住む事になったから」

「結論早ええよ!大丈夫なのかよ村に住まわせて!」

「村の為になるよ。最大限便宜を図るべきだね」

「ええと…本当に?そういう話なのか?だってちいとオロチは今初めて此処で会ったんだよな?」

「観察と推測だよ」

「うむ。本に聡いのう」

「それでそのおっさん自分の事全然言わないんだけど」

「わしは口が回らんでのう。ちいとやらに任せておけば間違いないじゃろう」

 典型的昔ながらの日本人みたいだよな。見た目は兎も角。

「おっさんはそれで良いのかよ!ちいのことは今初めて見たんだろ?!」

「お主はちいの事を信じておらんのか?」

「う…いや。すげえ赤ちゃんだと思っているけど」

「赤ちゃん言うなあああああああ!!!」

「それよりわしはお主の名をまだ知らんのう」

 うわオロチスルーしやがった。

「わ…ワットだ!」

 それから慌ててシャールと大人達が名乗った。大人達完全に脇役。いや端役だな。

「してワット、お主はわしが村に住むのを気に入らんのか?」

「そうじゃないけど旅してきていきなり此処に住む!とか適当過ぎるだろ!」

「適当でもないんじゃがなあ…」

 オロチは苦笑いする。

「刀鍛冶は世界的に貴重な人材なんだ。けど、真価は刀を正しく使える者と共に在ってこそ、なんだよ」

「正しく使うってどんなだよ」

「素振りは毎日やってるでしょう。それを続ければ良いんだよ」

「うむ!しかしわしは運が良い!こんな所で薩摩隼人さつまはやとと出会えるとはのう!」

 オロチは喜色満面に言う。自分の事を日本人の生まれ変わりという前提で言っている。

 なので自分は記憶にある現代日本の誰だかの出身を言う。

「自分、北の方の出だよ?地主位の立場は有った様だけど農民だし」

 昔はどういう地名だったかよう分からんので取りあえず北の方と言った。それで通じれば問題ないし。

「何じゃとう??!!示現流は薩摩の御家流おいえりゅうじゃぞ!!そこらの民草如きが知っててたまるか!!」

「ところが多分オロチが知っているより凄く後の世では、民草でも知ろうと思えば何でも、幾らでも知れるんだな。コレが」

 まあ、言葉を知らなきゃ検索も仕様が無いだろうけどな!

 そこへワットが言ってくる。

「何言ってるのか分かんないんだけど」

「ああ、薩摩というのは場所。南国、いつも暖かい所。御家流というのはお偉いさんだけが習える流派」

「お偉いさん?村長位?」

 可愛らしい発想だなあおい!まああ、田舎村の幼児じゃあそんなもんだろうけど。

「くくっっ!村長よりもっとだよ」

「何笑ってんだよ!」

「さあ、後は帰りながら話そう」

「あれ?オロチが付いて来るのもう決定なのか?」

 そういう事だ!

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