第38話 遠隔通話始めました
今回新キャラ登場!…の筈だったのですが。いやメイドさんじゃあなく、ですが。
何だか遠隔通話が長引いちゃったので次回に持ち越し、遠隔通話が題名に格上げです!
遠隔通話凄い!遠隔通話格好いい!!……何言ってんの?(自分突っ込み)
「わたくしはメイと申します。宜しくお願い致します」
メイドさんが自分に向かって言った。
メイドでメイって。安直だぁー!!まあ、親だってメイドにしようと思って名付けた訳じゃあないだろうけども!
……いかん!メイ。うん!普通に有る名前じゃあないか!最近ちょっと変な名前が多過ぎて毒されてた!普通!良い事ではないか!
メイさんは両手を下腹部辺りで重ねる姿勢でお辞儀をした。
この姿勢。メイドか、さもなくばどこかの店員さんがする姿勢だが、ラノベのイラストや漫画を見ると間違っているのがちらほら有った。それ処かアルバイトやらの募集の写真でさえ分かってないのが結構居た。
正式には、この姿勢は右手を左手で抑えて、自分はオカシなマネなどしませんよとアピールするポーズなのである。よって、左手が上になる。
メイさんは正しく出来てますよー!
「それではお部屋にご案内致します」
必要事項だけ言って前を歩き始める。
が、少々歩いた所で不意に振り向く。
「!!」
声は出さなかったがメイさんが一瞬驚いたのは分かった。
「自分が付いて来てるか分からなかった?」
そう。自分はなんば歩きをしているのだ。歩きには限らず、日本古来の動きは兎角目立たずさり気なくなのだ。
メイドさんも音を立てずにスッと歩くが、どちらかと言うと西洋的な歩きで音をさせない様に気を付けているという所だ。少々無理が有るな。
メイさんは自分を寝泊まりする部屋まで先導する。その部屋は。
先ず目に付いたのはベッドだった。
「天蓋付きのベッド……!」
気取ったお嬢様ぁーなんかが寝るヤツね。
自分が思わず言葉を零すとメイさんは一瞬蕩ける様な顔をした。直ぐ引き締めたけど。
まあ良い。直ぐにやらなければいけない事が有る。
自分は手近な椅子に腰掛ける。
さて、魔法だが。
千里眼と地獄耳を使うと遠くの風景を見聞きする事が出来る。テレヴィジョンの再現だ。が、これだけではこちらが一方的に見聞きするだけだ。
此処に更に、遠くに声を届ける魔法を組み合わせる。テレビ電話の再現だ。
遠くに声を届ける魔法、口寄せだ。
口寄せなどと言うと、忍法で小動物を操る技みたいな具体例が思い浮かぶが、声を遠くに飛ばす事で小動物に指示を出すという派生した意味なのだろうと恐らく思う。
犬笛とか、実際は声を飛ばしている訳ではないがそういうやり方な。ニンニン。だってばよー。
……はっ?!自分、何も言ってないぞ!?自分、オタクでも厨二病でもないし!ないったらない!!
で、誰に遠隔通話するかと言うとだ。
「もしもーし!村長ですかー?」
「おわあー!!!」
村長椅子に座っていたのだが、驚いて椅子ごと転がった。
所で、今は廃れてしまった感が有るが、以前は電話では必ず言っていたもしもしという呼び掛けだが。
妖は短い音を繰り返す事が出来ないという迷信が有る。と言うか妖自体が迷信だが。なので、短い音を繰り返す呼び掛けをして、自分はアヤシいモノではありませんよというアピールをしているのだ。村長吃驚しちゃったけど。
「村長大丈夫ですかー?」
「ななな何だ??!!」
狼狽えてるなー。そりゃあその場に居ない人物の声が聞こえたら無理もないけど。
「自分、ちいですよー!驚かせて済みません」
「何だ?!空耳か?!」
「魔法ですよー。落ち着いて下さい。現状を報告しますが」
「魔法だと?!本当にそうなのか?!本当だとしたら、ちいの奴どんどん人外じみてきたな!!」
文明の利器を魔法で再現してるだけだー!!!これでもまだ劣っているんだぞー!!
「失礼だなー!!……あー、現状ですが!
現在王宮に客として迎えられて居ます!まだ用事が済むまでは何日か掛かる模様!!」
「本当か?!本当なのか…?」
まだ言っている。が、テレビも電話も無い世界の住人には中々受け入れられないのだろう。
と、思ったら村長少々涙ぐんできた。
「本当にそうなのだったら、今直ぐサラに声を掛けてやれ!サラは泣いているぞ!!」
サラとは自分の母親だ。う~ん、メンド臭え。村長に丸投げしよ。
「何だとお??!!」
やべ!考えが伝わっちゃった。この魔法、電話と違って喋った音声を遠くで再現するのではないからな!
今の自分は椅子に座った途端目が虚ろになって呆っとしてる、と見える筈だ。
「てへ♡」
「てへではない!!!……全く!!本当に儂の幻覚ではない様だな!!」
「見た目には村長独りで喋っている様に見えるでしょうけどね」
お年寄りが独りで喋っている等と周りに見られたら……たーいへんだぞぉー?
「ぬあっ!!!?ぐぐ……それはもう良い!サラに声を掛けて安心させてやれ!」
「自分、村の税の話を付けに出掛けた訳ですが。母を落ち着けるのは村長の責任なのでは?」
「そう言う事ではない!!そう言うものではないだろう!!お主は!!全く!!」
何で聞き分けの無い子どもを諭すみたくなってんの?
「ええまあ。オロチは差し出さなくても良いので。それでは又!」
「ちい?待て!待たぬか!!」
通話終了ー!!みたく言ったが、まあ、母の様子は見ておくか。
千里眼の視点を転じて…と。
うおあ!!酷え場面に出くわした!
どういう場面かと言うと。
家にはキョーダイの下二人は母の乳吸ってろみたいな暗黙の了解が有る。と言うか、村の何処の家もそうな様だ。
恐らく、誰もが腹一杯食えない世の中ではなるべく母に多くを食わせろ、という方向にどうしてもなるのだろう。で、子ども達の下二人の分の食い物は無いよ、と。
自然界でもチョウチンアンコウはちっちゃいオスがでっかいメスに食いついてメスの体の一部みたくなっちゃうし。
カマキリは、メスが卵を産む為の栄養としてオスを食うし。
抑も乳は血液から出来ている。少ない食料を分け与える手段へと安易になり得るだろう。
作り話で吸血鬼キャラがやたら多い、処か吸血鬼主人公が結構居るが、無意識的に授乳を強く意識して…日本語一寸変だな。無意識的だろうがおっぱい大好きなヒトが吸血鬼の話を作っちゃうんだと思う。
まあ人類は哺乳類な訳だしぃ~?自分、ケチ付けられるのが嫌いなんだからヒト様の作品には何も文句言いませんケドぉ~?ふぅ~ん、そっかー。好きなんだー?(ニヤニヤ)
あぁいや兎も角!!
キョーダイの下二人は母の乳吸ってろ、で、自分が今抜けちゃってます。となると、だ。
タクとネネが、母の、ねえ。後は想像にお任せします。いやもう答え言ってるも同然だろお!!って?
はっきり言って気まずいのでそっと魔法を解除しよう。と、思ったら。
母と目が合った。え?自分、其処に居ないんだよ?
「ちいちゃん!」
母はタクとネネを抱えて立ち上がった。ナニコレ恐い。
「ちいちゃあああああああああん!!!!」
「ぎゃああああああ!!!」
「どっどうなさいました?!!」
メイさんが慌てて寄って来る。自分、本当に叫んじゃった様だ。
「母が一寸ね……」
なんで目が合っちゃうんだよ。恐えーよ!!
と、思ったらメイさんがチャンースみたいな顔をして。
自分は抱きしめられた。いきなり何やってんの?!
「わたくしはまだ未婚で体も未熟ですが!!今はわたくしを母と思って良いんですよ!!!」
何か恍惚の表情を浮かべているんだが。
「何言ってんの?」
物凄く冷めた声で言ってやった。のに。
「お母さん恋しいですよね?甘えたいですよね?良いんですよ!!
ああ!!赤ちゃんって暖かい♡お肌すべすべ♡♡抱き締めるのに丁度良い♡♡♡」
「赤ちゃん言うなあああああ!!!」
ズビシッ
突っ込みチョオォォォップ!!
メイの額に炸裂!!今はメイに抱えられている上頬ずりされているので手が届くのだ。
が、メイはまだ怯まず言う。
「ああ!素直に甘えられない子なんですね!でもそれも可愛いです!!ヒトは追われればつい逃げちゃいますけど、逃げられればつい追いかけてしまいますものね♡」
何だよその屁理屈!!
押すなよ!押すなよ!とか言う芸人かよ!!でなきゃあ追いかけっこを遊びだと思う犬っころかよ!!
「落ち着け!!」
「へえ?あ、はい!」
未だツラは緩んでいるメイだが、暴走は止まった。……かな?
「部屋は分かったから、次は剣の練習する所教えてくんないかな!!」
ちょっと乱暴に言ってみた。離せよ!と思ってさ!
所で剣をけんと読むと刀も含む。のはもう常識だよね!
「剣……で御座いますか?
お客様が剣の練習をなさるとは想定されて居りませんので、少々手続きが発生するかと思われますが」
「それで良いよ。剣の練習は毎日続ける事が肝心だからね。一日辺りが少なくなっても」
客室でも素振り位は出来る程に広いが、それは最終手段にしておくべきだろう。
木刀を手に、さあ出発!
「え?…それが剣…で御座いますか?」
メイ!質問が多くなったな!作り話でも、怖い上司なんかが質問はしないのが良い部下だとか言うんだがな!打ち解けたとでも言う積もりか?
で、木刀を見て曲がったひょろい棒とか思ったんだろうな!
やっぱりそれが一般の評価なんだろうな!
ちいちゃんの人となりは描けていますでしょうか?
そうです。ヒトの心の機微がちょっと分からない子なのです。
可哀想な子なのです。……って!誰がじゃあごらあ!!…
今回またもやルビを修正した都合上、投稿後直ぐ題名に(改)が付いてしまいました。お詫び申し上げます。
しかし毎度ですが、内容に変化は一切御座いませんのでご安心下さい。
1文字に付けるルビが3文字に広がっちゃっただけなんです!区切りが大事だったんです!