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第35話 王都に着いてみた

 何とか遠目に見える場所というのは、歩いてみるとかな~り距離が有ったりするのだが。

 その遠くの場所には大きな町が在った。

 で、だ。入り口辺りに行列が見えるのだが。

「何でヒトビトが並んでいるんですかね?」

「え?何処に?」

 護衛の指揮者さんが返事をする。分かってない返事だが。

「あすこの町に」

 指差して示す。

「見えるのか!?」

 驚かれた。まあ、遠見とおみの魔法を使っているが。双眼鏡でも使うかの様な感覚でね。

「田舎者が!

 王都に入るには審査されるから自然、行列が出来るのだ!

 私は並ばず素通り出来るがな!!」

 徴税吏が何か偉そうに言う。

 誰も反応してあげない。かわいそう!ぶふっ!!

「町に入るにはお金払ったりするんですかね?」

「まあ、そうなんだが、ちいは4歳だからなあ。無料だと思うぞ?」

 4歳というのは数え年ならば、である。満年齢では3歳だ。詰まり、自分は秋頃に生まれたらしいのだ。

 らしい、と言うのも、数え年では個人の誕生日は考えないので、家族に聞いてもはっきりした答えが返ってこないのだ。物心がついた時は三ヶ月以上から半年弱の間だったのだな。

「ふん!貴様は私が連れて入ってやるから、料金も並ぶのも必要ないさ。

 楽しみにしてるが良い!くっくっく」

 徴税吏がわらいながら言う。そう、嗤い。悪意有る笑みである。

 コイツが何考えているかは想像つくが。それよりも。

「王都って、王様に会いに行く訳ですかね?」

「そうとも!私は国王陛下直属の部下と言う訳だ!」

 徴税吏が本当に偉そうに言う。とらきつねって言葉、知ってるか?

 それにしても、いきなり王様って、あんまり大きい国じゃないって事だよな?

 まあ、西洋の中世、群雄割拠ぐんゆうかっきょの時代には町一つが一つの国、なんてのも在ったみたいだから?それに比べたらマシではあるのだろうけどな?

「おれ達護衛は行列に並ばないといけないんだ。余所者よそものだからな。

 町に着いたら……お別れかな?」

「そうだねえ。自分は徴税に付いて行く訳じゃあないからねえ。

 んじゃあね」

「軽いな!!情が湧いたりはしないのかよ!!

 おれ等はちいの事が可愛いって思い始めているってのに!!」

 うわ~……だいおとこが可愛いとか言うと危険な香りしかしねえわ。

 男は言わねえ方が良いよ?

「嫌そうな顔するなよ!!

 ……ちいって、本当に男みたいな奴だよな?可愛いと言われて顔をしかめるとか。

 すっかり騙されたよ!」

「騙しちゃあいないでしょう」

「そうだけど!!言葉ではなく行動がだな!!み………見ちゃったじゃあないかよ!!」

「あー、おしっこ?皆さんは幼女を見て興奮しちゃうの?」

「「「無ええよ!!!何て事言うんだよ!!!」」」

 皆さん全力で否定した。普通に不名誉な事の様だ。ぶふふっ!!

「あー………冗談ではなくだな?

 おれ等ちいに付いて来てもらって本っ当に助かった。全員無事に任期満了を迎えられそうだって思ったよ」

 それはつまり、徴兵された一般人は一定数犠牲になっていると言う事だ。

 真面目な顔にらざるをない。

「ちいから教わった事って、余所じゃあ全然聞いた事もない話ばかりだったよ。ためになった。

 本当に……有難うな!」

 護衛さん達は皆大なり小なり涙ぐんでいる。

「男は涙を見せるもんじゃないよ?」

「本っ……当に男を語る女の子だな!君は!!おれ等恥ずかしいじゃあないか!!」

 護衛の指揮者さんは腕で目元をぬぐいながら言う。強がりでも。涙が引っ込めば良い。

今更いまさらだが……ちいが急に村を出て来て、親御おやごさんは心配してないか?」

 指揮者さんは気遣う顔色になるが。

「本当に今更だねえ。けどほら、自分、ランク5冒険者!!大人だって中々(なかなか)いないでしょ」

 あははは!!

 護衛さん達が笑う。

「確かになあ」

「ホントすげええよなあ!!」

「どうやったのか教えて欲しいよ!」

「冒険者ギルドのランク4判定員にランク認定試合で勝ったんだけどねえ。

 それが、試合開始早々ブチ切れて武器を振り回しながら追いかけて来て、追い付けないとなれば武器をぶん投げてくる判定員だったんだよ」

「「「え"え"!!??」」」

 やっぱり驚くよねえ。

「そんな奴に勝ったんだ??」

「やっぱ凄えな?」

「真似出来ねえ……」

 うん、認定試合なんかするもんじゃないね!!

「あー、こんな事言うもんじゃないとは思うが……」

 指揮者さんが改まって言う。

「おれ等の任期が明けた頃、ちいが近くを通る事が有ったらだけども……おれ等の町に寄ってみてくれないかなあ?」

「ふむ、何処どこの町?」

「ドッカーの町だ!!」

 指揮者さんが誇らしに言うが……

「ドッカーって、名前の、町?」

「おう!!」

 元気に応える指揮者さん……

 ………………

 名前が酷過ぎるうううううぅぅぅぅぅ!!!助けてえぇぇぇぇぇ!!!

 何をだよおおおぉぉぉ!!!……いかんいかん!心の中でセルフ突っ込みをしてしまった。

「……うん、覚えた」

「おう!!また元気で会おうな!!みんなドッカーの町出身だからな!!」

「うん!また元気で会おう!!」

 それは。

 文明度が低い所では。

 本当に切実な願いだ。

 誰もが明日生きているとの保証が全く無いからこそ。

 力強く約束したいのだ。

 少しでも生きる確率を上げたいが為に。

 わらにもすがおもいとはこういう事を言うのだろう。

「くっくっく………そんな時が訪れるのかな?」

 口を挟んでいる徴税吏。それを聞き捨てられなかった護衛さんの一人が。

「お貴族さんよう!黙って聞いていれば……!!」

「待て!!やめろ!!」

 指揮者さんが止める。

「くっくっく。私が陛下に御報告申し上げれば、お前等など簡単に首が飛ぶのだぞ?」

 それは例えではなく本当に、と言っているのだ。

 東西を問わず、昔は庶民がお偉いさんにばったり会ってしまったらへへえぇ~!!となってしまうのは伊達だてではないのだ。

「まあまあまあ!!良いから!!はいはいはい、行きましょう!!」

 自分が徴税吏を抑えてさっさと進む。

 もう行列の最後尾は見えている。護衛さん達は行列の方に向かう。

 最後、護衛さん達と言葉は交わさなかったが、指揮者さんと目で語っておいた。

 下手に喋ると徴税吏のアホウといかっている護衛さん達を刺激してしまうからな。

「くっくっく……貴様、恐れてはいないのか?」

なんも?」

「ふっ!!幼いゆえか?おろかだからか?

 まああ良い!精々(せいぜい)その場で恐怖におののけ!!」

 分かってはいるともさ!少なくとも手前てめえよりはな!

 詰まりだ。

 国王の前に出るという事は。庶民はそれだけで命を覚悟しなければならないのだ。王に意見しようものなら確定だって所だ。

 王に、幼児を処刑するなど忍びないという少々の人情が有った所で、周りが許さない。王の意見は絶対だ、という事にしなければならないからだ。

 王への謁見えっけんとは、死刑が確定している、という所から、自分には此処で殺すには惜しい価値が有る、と、王だけではなく、周り中に知らしめなければならない、心理戦、いな、頭脳戦なのだ。

 出来るか出来ないか、ではない。

 やってやんよ!!

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