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第17話 剣術指南始めました

こちら第17話となっております。未読の方は前の部分からご覧下さい。ネタばれは…どうでも良くなっておりますが。あははは…

 村の子ども達が皆木刀を持って並ぶ…とも言えないが、集まって居る。やっと皆が木刀を持つことが出来たわけだ。

 自分一人がみんなの木刀を用意する…等想像しただけで気が遠くなるので、大人達の前で作って見せて、大人達が自分の子達のを作ってね、と丸投げ…おっとお願いしたわけだ。

 そうなると、全員分が揃ってから教え始めないと不公平感が生じてしまう、という訳で今になったのだ。

 我が子の為に作った木刀ならさぞ立派なのが揃っているかな、と少しは期待…しなくもなかったのだが………

 軽く見ただけでダメだこりゃあという不出来だった。

 まあ、悪いが応急的なモノだし、仕方ないか。只、棘が刺さったら可哀想なのでひとつひとつ確かめて手入れしていってやる。殆ど全部だけどな!

 見回りが終わり、自分一人が皆の前に立つ。

「さて、じゃあシャールに模範を見せて貰おうかな」

「えっっ?!!」

「はあいシャール君どうぞー!」

「待って下さい!僕よりちいの方が良いでしょう?!」

「ちっ」

「ちっって何ですかぁー!!」

 因みに、それは舌打ちではない。畜生って、言いかけたって所かな?どうでも良い?

「ちいは既に実戦を三度こなしていますよね!ならちいこそ本物って感じの素振りが出来るでしょう??」

「三度?」

 身に覚えが無い事を言われた方が気になってしまった。何が何でもシャールに見本をやらせるべきだったのに。

「獣と戦い、村の大人達と戦い、盗賊団と戦ったんでしょう」

 ぶはっっ村人も数に入ってんのかよ!そりゃあ本気で掛かって来たバカもいたけども!

「僕は村の大人達との勝負しか見ていませんが…それだけでも怖かった…それに堂々としているちいには敵わないって…思って…」

 シャールの目から涙がすっと一筋こぼれた。男の子がそれやめなさい。

「あー分かった分かった。ではつまらないモノですが、自分、素振り始めます!」

「つまらないってダメじゃん!」

 ワットが突っ込んで来る。日本の古き良き挨拶を判らないヤツめ!……あれ?今時日本でも通じなさそうだな?いや~あ自分、古い挨拶なんて分かりませんけどね?

 目の前に敵がいる様な積もりになって、抜き打ち!振る!振る!

 回数的には軽く済ませて気が付いてみると………子ども達は静かになっていた。と、言うより息を呑んでいた。あれ?

「な…何つーか、迫力が増したな?」

 ワットも唖然としてやっとという感じで言う。そうかい?

「じゃあみんなも振ってみよー!ぶつからない様に広がってね!」

 兎に角子ども達に振らせなきゃあ練習にならないからな。

 子ども達全員が木刀を使える様にはならないと思っている。悪口言う訳ではなく。初めから言っている事だ。刀は使い易い武器ではない。

 だから子ども達それぞれに使い易い武器を、と思って全員の様子を見るのだ。だから折角親が作った木刀だが応急なのだ。

 そんな中でもやはり。自分が直接手解きして、自身がとても頭が良いシャールは様になっている。

 ワットには見取り稽古の才が有る様で、獣との戦いを直に見た為かなり身に付いた様だ。実は木刀をおねだりされて、シャールのと共に自分の作品だし。

 ピュアは…弘法筆を選ばず、なんて言うが、親の作った低品質の木刀を、本当に使いこなしている。自分も勝負したらヤバくねえ?て本気で思う。

「えーと、ピュア。自分のと取り替えっこしない?」

 ピュアは使いこなしているのだから、低品質では可哀想だ。自惚れている訳ではないが。それでもそこらの大人が作った木刀には負けられないという自負はあるのだ。慣れが全然違うのだ。

 ピュアは……珍しく困った顔をした。親が作ってくれた木刀に愛着が湧いているのだろう。うーむ。

「じゃあちょっとだけ手を加えさせてくれないかな?」

 正直其れでは万全の作品にはならないのだが。それならピュアも喜んで貸してくれた。

 他の子達は…並以下だな。今日始めたばかりでそう言うのは酷だろうが、現実の世の中は厳しいと思えば悠長な事も言っていられまい。

「セツ、ユキ」

 セツはビクッとした。お蚕様の一件で壁に張り付いていた子である。あれ以来怖がられているのは分かっていたが。

 ユキはいつもセツと組みになっている女の子だ。髪は雪のように白く輝き、目は冷たそうな青白い色だ。勿論生身のヒトなので冷たい訳は無いのだが。

「君たちは木刀を相手をつついて遠ざける様な使い方してるよね」

 ビククッッとセツは身を震わせた。弱みを握られた!とでもいう様な絶望の顔で。そこまで怖がる事ないやん。

「長柄武器を使ってみない?」

「ながえぶき?」

 ユキが応じた。良い子だね。

「相手を近付けたくないなら武器が長い方が良いよね?」

「おー!いいね!」

「そういう訳で」

 自分は用意してあった材木を二本取り、先ずユキ用の武器を加工する。

「君の武器は槍だよ」

「おー」

 珍しそうに受け取る。良い子やなー。現代日本人だったら殆どはヤな顔するだろうな。ゲームなんかじゃ槍はチャチな武器だろうし。現実では全然そんな事無いんだが。

 自分は加工してない方の材木を…そのままでは使えないので柄の部分だけ加工して構える。

 水平に、左手を前にして両手で持つ。実際に長い棒を持ってみれば左手を前にした方が右手で使えると実感出来る筈だ。自分、両手がそれなりに使えるもんでおやあ?ってちょっと思っただけだったんだけども。でも殆どのヒトは利き手じゃないと困るでしょ。

「折角長い武器だけど、あまり後ろの方を持ち過ぎても使い難い。自分で使い易い長さを調節して」

 言いつつ実演する。かなり後ろを余らせる。自分、子ども達と比べても小柄なもんで!

「槍使いの練習は…こう!」

 言ってひたすら突いて引く、を繰り返す。槍の練習はこれで良い…よな?

 戦国漫画で槍を先ずは相手を叩くのに使うみたく描いてあったのだが。それは使い手さんの臨機応変に期待、ということで。

 それからセツ用の武器を完全に加工し。

「薙刀だよ」

 セツの方を向いて言うのだが、受け取ろうとしない。だろうねえ。

 二人の武器を変えたのは木刀の使い方を見てだ。それからやっぱり自分だって試行錯誤してるのだ。

 そのままそれを使って実演する。

「これの練習は…めええん!!!」

 振りかぶって振り下ろす。基本の練習はやっぱり面打ちだろう。刀だってそうだし。セツいちいちビクビクしないで?

「でも使い方にはこういうのも有る。

 っって!!っどおお!!っっき!!っっねえええ!!」

 小手、胴、突き、脛である。

「それ何ですかぁー!!」

 シャールから突っ込みが入った。ああ、木刀では素振りしかしてないものねえ。

「刀でやっても良いよ?」

 剣道には脛は無いが、剣術なら有り…だった……筈。

「持ち方違うじゃないですか!」

「そこは応用」

「うぐっ…」

 シャールは賢いから何とかなるよね。それよりもセツだ。どうしよう。と、思っていると。

「一緒にやろうよ!ながえぶき!」

 ユキがセツに語りかけた。

「これさ!イいよ!父さんが作ったのより!」

 おお、判ってくれるのか!オヤジが聞いたら泣くだろうけど!

 セツは怖ず怖ずと薙刀を受け取り…にぎにぎし………ちょっと振って………

「おお!お父さんなんかよりイイ!!」

 ひでえ!!あははは…

「めええん!!!」

 避けた。当たる所だった!!

「あぶねえな!!」

「あ!ごめーん!」

「みんな!誰かにぶつけない様に!!」

 は~い!と子ども達は返事をする。

「さらっと避けて注意なんかしてしまうんですね」

「オレ今の避けられないと思う」

「僕もです」

 シャールとワットが何やら言っている。さて次はと。

「ナナ、ネネ」

 二人はビククッとする。自分怖がられてんの??

「二人は攻撃する事自体が怖いのかな?」

「う…うん。痛そうだし」

「じゃあこんなのはどうかな」

 しゃしゃしゃっと二本の棒を加工する。太過ぎず細過ぎず長過ぎず短過ぎない、端から端まで同じ幅の棒、そう――

「ただの棒?」

 ナナ!何て事言うかなああ!!

じょうだよ杖!不殺ころさずの武器!」

「ころさず?」

「相手を死なせないって事!それなら思い切り使えるでしょう!」

「弱そう」

 ごらあああぁああ!!

右本手みぎほんての構え!」

 もう戯言には構わないことにする!杖を構えた。実は杖の構えで知っている言葉はそれだけなんだけど。

「ああ!カタナの構えみたい!」

 ネネが言った通り刀の中段の構えだ。

「杖は刀の様にも槍の様にも薙刀の様にも使え、勿論杖だけの使い方も出来る」

 言いながら杖の両端近くを持って左手側を前に出す構えに移行する。

「狡い!!」

 自分を怖がっていた筈のセツが叫んだ。よっぽど聞き捨てならなかったか。

「どんな使い方してもそれらより弱いからね。だから色々やって相手を混乱させなきゃいけないんだよ。

 ほら薙刀より短いでしょう」

 ぶら下げて示してやる。長さは中途半端なのだ。

 目の前に相手が居て杖の両端を交互に当てるかの様に振る。創作物を見てみても刀の様に使って見せながら、バカめコレは刀ではないわ!とばかりに柄の様に持ってた部分で殴る、というのが常套手段みたいにしてるし。

「何か手でぶつみたいなうごきだね」

 まあそうなりますよね。両端持って交互に打てば。でもナナ、身も蓋もない事言わんで?

「はいこれ」

「「う…うん」」

 姉二人ははっきり言って嬉しくなさそうに受け取る。

「タク」

「おう!」

 次に兄に呼び掛けると待ってましたとばかりに応じる。

「使い方が雑過ぎるね」

「おう?!」

 ダメ出しするとタクはずっこけかけた。

「刀は繊細…傷み易いから扱いは丁寧でなければいけない」

 木刀はそこまで繊細という訳でもないが、それは刀を使えていないという事でもある。

「どうする?どうしても刀を使いたい?それとも頑丈な武器にする?」

「どっちが良いんだよ」

「それはタク次第。お勧めは頑丈な方かな」

 やはり他の子達はシャールやワット程扱いが上手くない。となると頑丈な方が合っている。

「じゃあそれで」

 それを聞いたら木材を加工し始める。もう変更出来ないぞ?

「片手剣だよ」

 所謂普通のswordである。

「短いな!」

「片手用だからね」

 柄はギリギリ両手で持てなくもない長さにしてある。刀の様に両手の間を拳一つ分開けられないが。

「練習はこう」

 フェンシングのアンギャルドみたく構える。詰まり右半身になって剣をゆるく上向きにして前に突き出す。それから相手に対して完全に横向きみたくなって真横に…相手から見たら真っ直ぐ剣を突き出す。直ぐ引いて構えに戻る。それを何度か繰り返す。

「そんだけ?」

 刀の素振りを片手剣に応用したらこうかな?と自分なりに考えた結果だ。そんだけ?とか言われても困る。

「さてどうする?」

 タク用に作った片手剣だが他の子が気に入ればそちらに渡してもまあ何とかなるだろう。

「う~ん、今はそれにしておく!」

「あんまりしょっちゅう取り替えてたらどれも上達しないからね」

 今一生の事を決めろなんて言うのは酷いだろうが一応注意はしておく。

 結局、子ども達一人一人を見て全員分その場で武器を作った。やっぱり刀は少数派になったなあ。


 皆様お知らせがあります。

 サブタイトルの部分には傍点が付けられないのです!

 直せて良かった!変なのがずっと残ってしまう所でした。ふう。

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