表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/1118

第32話 絹織物始めました

 トナー・リーの町にて。

 この世界の質の悪い靴では一晩位は野宿する事を考えねばならない距離はるが、となり町と言えば隣町だなあ。

 ああ、いや、それはどうでも良いが、今は織機おりきの話を付けにティーエの所に向かっている。

 いやしかし、靴が悪いというのも問題か。職人ギルドを設立するなら靴職人も育ててもらった方が良いな。

 日本の在るあっちの世界の話だが。

 る、西洋の昔の話。世界の名作に数えられる、作者自身が昔のヒトな作り話であるが。

 革靴かわぐつが柔らかい靴だなどと信じられない事が書いてあった。スニーカーに慣れた者が時々革靴を履くと、ふちこすれた所の皮がけて傷になるのだが。靴自体が変形しない、詰まりかたいので、歩きにくいし。古くなって金属製の釘がはみ出た日には履けたモノではないし。

 しかし、それもそのはず。昔は、革靴が柔らかいと思う位もっと堅い靴が有った。

 木靴きぐつである。うわ!信じられねえー!!木を足がおさまる様にいただけの靴とか!!裸足の方がずっとマシだろそれ!!

 此処ここの靴は流石に木靴ではないが、革靴が普通である。

 しかも、細かい事を言えばハードレザーな靴である。革にも大雑把おおざっぱに二種類有って、カチコチに固めた方、なのである。ソフトではないのである。

 これは是非とも改良して貰わねばならんね!

「そう言う訳で!」

「何が??」

 戸惑うティーエ。会って一言目がそれでは当たり前か!

 漫画なんかではソレで話が進行するが、漫画は仕組み上文字は少なめにすべきなので省略しているだけなのだ!

 所で商人ギルドではもう自分は顔パスだ。ティーエに直通だった。

「職人に話を通すなら、靴の改良も視野に入れて欲しいなあ、とね」

「靴?どうするの??」

 やっぱりな反応だ。靴に限らず、ヒトビトが当たり前と思っている事を意識改革するのは手間が掛かるのだ。トナーは堅い靴が気にならなかったのか?それとも改革に失敗したのだろうか。

「今の靴は歩き難過ぎる。もっと歩き易い靴を開発すれば、色々革命が起こるね!」

「革命って!!!」

 ティーエが恐い顔になった。

「いやいや、戦争とかじゃあなく、ヒトビトの意識やら歩く関係の利便性やらが大きく変わるよ、って事だよ」

 そう、元々革命とは物騒な言葉なのである。つい平和ボケした現代日本の感覚で言ってしまった。

「戦争関係じゃなく?だったら違う表現しなさい!」

 今回ばかりはティーエは大人の顔で注意して来る。仕方なく謝っておく。

「………それで、靴の改良ねえ。職人さんに言ってだけはおきますか!」

 有難い。一石いっせきとうじておかなければ何も変わらないからだ。

機織はたおりはもう良いの?」

「そんな訳無いでしょ。そっちが主体だよ」

「じゃあ職人さん達に会いに行きましょうか?」

 ティーエは手をつないで来る。抵抗はしないが正直良い気しないぞ?

「あ~らぁ~♡良いわねぇ~♡」

 商人ギルドの女性職員が何か言ってる。

「良いでしょ~♡あげないよぉ~?」

 ティーエが応じている。何言ってんの?コイツ等。

 職人さん達に会いに行った所。其処そこただの空き地だった。

 そこに集まっているおっさん達。コミュニケーション能力はみな無さそうだ。

「はーい、皆さん!お集まり頂いて有難う御座いまーす!」

 ティーエが自分と手を繫いだまま挨拶あいさつする。

 おっさん達、少々頬を染めている様だ。まあ女性に声を掛けられたら男は意識しちゃうだろうが。

 こいつ、前世は男でしたーとか言ってんだぞ?(笑)

「ここが職人ギルドを建てる場所になりまーす!

 昨日決まったばかりなので空き地ですけど、覚えておいて下さいねぇー!!」

 そんな状態で職人達を集めちゃうとは……手腕は有るって事かねえ。

「皆さんにお集まり頂いたのは他でもありません。

 今回、こちらの子がお仕事をくれるからでーす☆」

 ティーエが自分を示すと職人達はそく疑惑の目…どころか敵意すら混じった視線を寄越して来る。まあ、先ずは信じられん、更に気難し屋ならガキは邪魔だ!って所だわな。

「ご紹介に預かりました、ちいと申します」

 ざわっと職人達がうろたえた。こんな小っこいのが流暢に語り出して驚いたろう。

「先ず、ご依頼申し上げたいのは機織はたおりの機械ですね。

 綿花を細くって糸にしたものをさらに織って布地にする、所謂いわゆる木綿もめんは存在するかと思われますが、わたくしが今回用意した糸は同じ機械には使えないかと思いまして」

「わたくし?」

 ティーエがしょうも無い所に食いついているがスルーだ。

 絹糸の現物げんぶつをスッと出すと、職人達が再びざわめく。絹糸など見たことないだろう。

「それ………見せてみろ!」

 ぶっきらぼうに言うおっさんがいたが。言い方を気にしている場合ではなかろう。興味を示した者が居る、というのが重要だ。素直に糸巻きごと渡す。

「なんだこの糸は!細い!だが意外に強い!!何なんだこれは!」

 気が済むまで調べさせて、れから口を開く。

「木綿を織る機械では目があらいと思われますよね。

 それ用の細かく織れる織機を望む訳です」

「分かった!俺がやろう!」

 ぶっきらぼうなおっさんが即座に言った。決断(はえ)えな!

「俺の名はダイク!よろしくな!」

 握手を求めて来る。

 剣の使い手なんかによくある、おれの右手は商売道具!誰にも触らせない!とか言わないのかな。剣ではなくてもやっぱり右手は大事だろうに。

 それにしても名前!そりゃあ織機は大部分が木工だろうけど!

 まあ、此処ここで拒否したって仕方ないので握手に応じる。

「えー、報酬の話も無く決めてしまって良いんですか?」

「立ち話で決める事じゃないだろ?

 先ずは俺がこの仕事をしたいと思ったんだ!」

 職人だねえ。

「其れから提言させて頂きたいのですが、靴をですね。より良くしたいと思いませんか?」

 職人達がざわめく。これはどういう意味であろうか。変革の予感(ゆえ)、なら良いな。

「靴の話は今は依頼ではないのでここまでと言う事で。

 織機ですが、木材の部分やら金属の部品やら、色々有りますよね。出来ればこちらにいらっしゃる全ての方々が協力して頂ければ有難いな、と」

「俺が信用出来ないってのかよ!!」

 あんじょう文句を言って来るダイク。

「勿論、最初に声を掛けて頂いたダイクさんには中心人物になって頂きたいですが。

 お一人で織機一台(つく)れるのですか?」

「そりゃあ時間さえ有れば一人の方が…」

「折角職人ギルドを建てて職人の皆さんが集まるのですから?

 大勢で協力して一つの物をつくるという経験をして頂きたいですね」

 職人といえばやっぱり職場にもりっぱなしのボッチばっかりだろうからな!

「大勢で協力する経験と来たか!!」

「おれらギルドとやらに毎日通ってたら仕事にならねえよ!!」

 他の連中からの野次も飛んで来る。が、好都合。順番に説明するのに丁度良い。

「皆さんに毎日通えと言う訳ではありません。連絡経路を通すのはギルドを創るこちらの方の役目です。

 ねえ?ティーエ?」

「はへ?」

 何やら蚊帳かやそとみたくなりかけていたティーエに丸投げだ。

 職人を此処に集めるにも商人ギルドの職員をつかったんだろ?

「ギルドというものは、客と職人、職人間の橋渡しが役目。皆さんの仕事時間を奪う様なモノではないのです。だよね?ティーエ?」

 ティーエはただコクコクと頷く。

「それにですね、技術の追求というものはやはり他者からの刺激が無いととどこおるモノなのです」

「何を知った風な事を!!」

「お前が仕切ってんのかよ!!」

 やっぱり野次は飛んで来る。が、えず。

「お前呼ばわりは嫌い!!!」

「お…おう」

 それだけはピシャリと言っておく。

「技術というものはですね。突き詰めると単純な動作を只ひたすら繰り返す。そうやって鍛えるものですが。

 ひとり閉じ籠もって単純な動作を繰り返しているとゲシュタルト崩壊ほうかいと言って、精神が壊れてしまうモノなのですね。拷問ごうもんにすら使われる手です。

 なので適度に交流をして貰って、息抜きするのも皆さんのためになると確信しております。

 ねえ、ティーエ」

「げしゅたるとって何?」

 お馬鹿がバカな質問をする。

「その場全体を一纏ひとまとまりとしてとらえる概念がいねん。それが崩壊って事は心がバラバラに壊れちゃうと、そういう事」

「はあ………?」

 一応頷いているから良いという事にする。

「ちいってばホントによく分からない難しい事言うねえ…」

「商人さんよう!その子何なんだ一体!」

 商人さんってのはティーエの事だ。

「あんたの子かよ!」

「えへへぇ~♡」

「赤の他人です」

 自分は只淡々と言う。ティーエは何喜んじゃってんの?

「それよりか、織機の事ですが。早く、それでいて性能の良い物が出来ればこちらも嬉しい訳ですね。

 折角皆さんが集まっているのですから、取り敢えずの話は纏めてしまいましょう」

「ああ、役割分担なんかは俺等に任せて貰いたいがよう、そもそもこの糸何なんだ?」

 ダイクが言う。それはすっきりさせといた方が良いか。

「絹糸と言いまして、虫が吐いた糸です」

「虫ぃ?!」

 大声出したのはティーエだ。何?元男の戦士が虫苦手なの?

「その虫は繭を作るのですがね、繭を煮込んで糸をほぐす訳ですね」

「繭!?蝶々(ちょうちょ)がオトナに成る為のからさなぎって言ったよね?!」

「そう。繭を作るのは蛾だね」

「蛾ぁぁぁ!!!?」

 オーバーだなあ、ティーエ。職人達も引いてる様だが。

「良く蛾から糸をろうなんて思ったね……」

「あっちの知識だよ」

「!!」

 ティーエには通じた様だ。

「絹糸って言ってね。砂漠を渡っても買いたいって程高級な糸だよ」

 シルクロードというヤツだ。

「さばく?」

 分からないか。此処の文明度じゃあ仕様が無いね。

「一面、砂ばかりの大地の事。日中は夏よりも暑く、夜は冬よりも寒い。水も無い。砂も纏わり付く。

 この世の地獄と言って良いね」

「………そういう所を通っても買いたい糸だと……うん分かった」

 呆然とだが了解した様だ。

「そいつは……気張らなきゃあいけねえな!」

 ダイクは乗り気な様だ。良かった。

「でえ、結局この子は何なんだ?職人技まで語ったりしちまってよう」

「まあ仕事の依頼主って事で」

 それ以上でも以下でもないだろう。

「いやいやいや!それだけじゃあ収まらねえだろ!

 何かよく分からねえ謎知識をベラベラ喋くってからに!!」

「ん?分からなかった?もっと説明する?」

「もう良い!!腹一杯だ!!!」

 あー、腹一杯って表現有るよね。感覚的に意味が合わないだろうって個人的には思うけどね。

「じゃあお仕事始めましょう!」

「……仕切ってるな……」

「あははは……」

 何だか大人どもがほうけてるなあ。やれやれ。

 お知らせです。

 漢字の繰り返しに使われる文字、「々」は漢字と認識されないのですね。

 なので、漢字の直後に読み仮名を振る感覚で《》を付けると、ルビにならずにそのまま文章に出てしまいますね。

 と、言う訳でそこを訂正したので投稿早々(改)となってしまいました。

 お詫び申し上げます。

 例によって内容には一切手は加わっておりません。

 その点はご安心を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ