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第30話 刀始めました。売るのをな!!

 露店が並ぶ大通りにて。

 刀を見せると言って使った抜刀術。

 だったが、本職の冒険者さえも見えていない様だった。

 仕方がない。もっと演武しなければならない。巻き藁は後三つあるしな。

 さて、それで問題なのが、だ。

まとに仕掛けが有るんじゃねえか?!」

「剣で木が斬れるワケがねえ!!」

「「そうだそうだ!!」」

 こう言った野次はあるもんだ、という事。

 村の子達の顔がけわしくなるが、それをなだめつつ言う。

「さてさて、此処でご覧の皆様に、的の確認をして頂きましょう。

 そちらのお強そうな冒険者の方、一般人代表の様なそちらの方、そちらのたおやかな女性の方、それぞれ三つ有る巻き藁をこころくまでご確認下さい」

「誰が一般人代表だー!!」

「たおやかって何??」

 文句言っているヤツと言葉を知らない奴が少々。まあ、サクラではないという信憑性しんぴょうせいは出るかな?兎に角確認させる。

「ふむ、しっかり固定されてるかな?」

 冒険者が言う。実は固定されている方が斬りやすいのだが分かっているだろうか。

「切れ目は入ってねえなあ」

 一般人代表が言う。切った木は支えてられねえよ。

「太い。大きい」

 何言っちゃってんの??!そこの女ぁー!!!

 ……バカは放っとこう。それよりも冒険者が言う。

「試し斬りしても良いか?」

 ニヤリ、と笑う冒険者。しかし、こちらも望む所だ。

 冒険者の得物えもの戦斧バトルアクスだった。持ち運びに不便でない?

「うおおおおお!!!」

 冒険者は遠心力を大いに利用して戦斧を振るう。と、言うか持って構える事が出来なさそうだ。不便だろそれ!

 がすっっ

 巻き藁に打ち付けた。が、両断には至らない。

 冒険者は本気で悔しそうだ。良いヨー!その表情!!

「は~い、有難うございました~!

 では今度こそご確認下さい!!刀の威力というものを!」

 今度は中段に構える。これなら文句無かろう。

 先ず冒険者が試し斬りしたヤツを無造作に袈裟斬りにし、次いで自分から見れば右後ろに有るもう一つも、何気なく逆袈裟さかげさに斬る。

 ごとごとんっっ

 二つ共両断成功だ。良かった。

 冒険者が試し斬りしたヤツだけだと又野次が飛んで来そうだったからな。それはもう斬れかけていたのだ、とかな。

 皆、言葉も無く呆然ぼうぜんと眺めている。

 露店を眺めに来た客達は勿論、村の子達だって真剣の威力をたりにするのは今日が初めてだからな。

 実は自分もー!!ぶふっ!!

 だって現代日本でだって真剣振った事の有るヤツどれ位居るよ?!

 一応勿論事前に練習はしたけどね?!

「はい、如何いかがでしたでしょうか~!

 この刀、こちらでお売り致しますよ~!

 其れからそちらの子達が演奏していた楽器、こちらもお売り致します!!」

 絹糸は今回無し、という事になった。糸だけ売っても仕様が無いという結論だったのだ。

 ティーエと協力して機織はたおり機を製作し、絹織物にして売ろう、という段取りになった。

 そのティーエは涙を浮かべながら呟いている。

「これがカタナ……トナーが夢見ていた武器……」

 そーだったな。

 それはそうと、オロチに話を振る。

「こちら刀の製作者です。

 お値段、いくらになりますか!?」

「金貨五枚から、でどうじゃあ!!!」

 皆また閉口へいこうしてしまった。

 金貨五枚で大体四百万円位。それは現代日本でもそん位だろうけども…

 そんな金持って露店眺めに来る奴居る訳ねえよなぁあ。

「買ったー!!

 あたし、買ったー!!買うよー?おーい!!ちいちゃーん??」

 ティーエが騒ぎ出した。アイツは関係者だから後で良いとして…

「えー、実はこの刀、使うにはとても練習が必要な武器なのです!

 飾って置くだけでもそれなりには価値が有りますが~。

 やっぱり自慢するには使えるんだぞ!と主張したいでしょう!!

 そこで!!練習用の武器、木刀は如何いかがでしょう!

 そして木刀を持ってる方は真剣、本物の刀を購入する意思が有る、という証明になるというのは如何ですか?!

 今なら練習の仕方も御説明致します!!」

「幾らだー!」

 と、声が聞こえて来た。良し!手応え有り!

「木刀は銅貨六枚になります!木刀をご購入された方は使い方の説明まで見て行って下さいねえ~」

 銅貨六枚で四百八十円位だ。安かろ?

 なかなか大盛況だった。そして木刀を購入する際、パーティーに勧誘してきた冒険者サエンが言う。

「君、戦士だったのか?」

「いやー、冒険者証は魔法使いってなってますけどね~」

「…何者だよ君は!」

「村人の子です」

「「「「んな村人居るかぁー!!!」」」」

 周りから野次が飛んで来た。

「くっくっく。確かにな!俺もそう思うよ!」

「えー?此処に居るんだけどなぁ。

 それよりも練習の仕方、見てって下さいね~。安全の為にも」

「安全?」

「全くの素人が刀を使おうなんてすると、自分を斬っちゃいます」

「「「「「怖いな!!!」」」」」

 おや?ちと客足が遠のいたか?けど、此処等ここらに出回っている片手剣だって事情は同じだろ?

「其れからですね、両手で持つ武器というものは、実は使いづらいのです。

 なので尚の事、正しい練習は覚えておかないといけません」

「正しい練習って、小っこい君が言うのもなあ…何処どこで身に付けたんだい?」

「そりゃあ刀の国ですよ~」

「「「「何処だよそれ!!!!」」」」

 異世界ですってなぁー。言えないよなぁー。

 村の子達はこんな遣り取りを聞いても揺らいでいないな。実績が有るからな!

 兎も角、木刀は売り捌いた辺りで再び演説を始める。

「はい、よろしいですか~?

 ずは刀の部分説明から始めますよ~?

 ご覧の通り、刀という武器は曲がっております。細かく言えばっています。

 反るとは後ろに曲がっているという事。先端が向いている方向が後ろですよ~」

 ここまで言って客の反応を見る。皆が了解したかな、という所で説明再開だ。

「木刀には鞘は有りませんが、今左手に持っている状態を鞘におさまって腰に差している所と思って下さい。

 はい、気付きましたか?納刀のうとう状態では前の部分、詰まり刃が上を向いているのですよ~」

 自分で問題提起しておいて自分で答えを言ってしまう。

 大勢があーだこーだ考えていたらキリが無いからだ。

 ところで、だ。刃が上向きなのは打刀うちがたなならば、という但し書きが付くのだが、余り色々言っても話がごちゃごちゃになるので省く。

「なので抜刀、鞘から抜くには右手を上向きにしてつかを握ります。

 そして右手で抜くと同時に左手で鞘を引っ張り、一気に抜刀!」

 シュッと抜刀の動作どうさをする。木刀なので真似事なのだけど。即座に中段に構える。

「これが基本中の基本、中段の構えです。

 ここから振りかぶって振り下ろす。これが基本の練習、素振りです。

 さて、他のヒトにもやって貰いましょう。ティーエ!」

「はへ?」

 突然呼ばれ、お間抜けなツラをするティーエ。良いだヨー!ぶふふっ!

 さて、前世は戦士だったとか言っているティーエ。如何いかほどの物でしょう!

 結果は………

 どっと沸いた。

 観衆は大爆笑。村の子達だって大爆笑。余りにも不格好ぶかっこうだったのだ。

 笑いが収まった所で演説再開。

「はい、お分かり頂けたでしょうか!

 やってみれば結構難しいのです。これが自然に出来る様になって一人前ですよ~!」

「あたしを笑い者にしたのかー!!」

 後ろで何かがわめいているが放っておこう。

「悪い例で終わっては皆様に変な記憶が残ってしまいます。

 自分の素振りを記憶に焼き付けておいて下さいね~」

 言って素振りを始める。

「誰が変な記憶よー!!もぉー!!!」

 まだ後ろで何か喚いているけど良いや~。

「やっぱり…刀の方が格好いいな…」

 三番目の兄、タクがつぶやいていた。片手剣を勧めたからなぁ。

 村の外でなら何処でも手に入りそうというのは大きなアドバンテージなのだがなあ。

 そちらも問題だが、もう一人そわそわしている者が。

「オレも巻き藁斬ってみて良いかな?」

 ワットだ。巻き藁一つ残ってたからな。

「ダメ~!」

 勿論答えはノーだ。

「何でだよー!!」

「言ったでしょう。素人が使うと自分を斬っちゃうよ?」

 自分だって内心ドキドキだったのだ。子ども達には使わせられないよ。

「どうすれば素人じゃなくなるんだよ!!」

 それは難しい問題だ。が、今言う事は決まっている。

「今は練習を続けなよ。少なくとも自分が納得出来るまで」

 そして、その上で真剣を抜いた結果、何が起ころうとも後悔しない!と、覚悟が出来れば一人前かね?

 例えば自分で指を落としちゃったなんて事になろうとも、だ。

 こわいでしょ?そう考えると武器を使うなんてとんでもねえ!って思っちゃうでしょ?

ずりぃーよ!いつもちいばっかり!狡ーよ!!」

 子どもには分からないかねえ。自分は苦笑いしてワットをでた。ワットの方が体大きいんだけどな!

 ワットは不満そうではあるものの、大人しく撫でられていた。

 この辺り、ワットは内心どう思っているのかねえ?

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