第25話 試合してみた
大事件です。
そろそろポ○モン貰えなくなっちゃいまーす!
日付は題名の横をご覧くださーい。
あれ?誰も聞いてない?これまた失礼いたしましたー!
冒険者のランク認定試合。
革の防具を身に着けて木の武器で、ギルドの判定員と勝負する。
革の防具は着けるものの、武器をぶつけ合って勝負し、相手の武器を叩き落とせば勝ち。
身を打ったら反則負け。冒険者が反則負けになれば試合自体が無効。というか、ランクがどうこう言ってる場合じゃなくなると思う。
ラノベなんかでは刃引きの剣をボコボコ身にぶつけ合っているが、現実にやれば怪我人続出、再起不能な者も一定数出ると思う。刃引きと言っても金属の塊だぞ?革如きで防げるものか。
剣道で防具を着けて竹刀を使うのは何の為だと思っているのか。それでも事故を完全には防げないというのに。
と言う訳で試合だ。が、自分の身に合う防具が無い。自分、想定外に小っちゃいだろうからな!!
「もう防具無しで良んじゃね?」
「いやいやいやいや!危ないから!!」
判定員に止められる。が、ここまで来ておいてやっぱり無しとか言われてられるか!食い下がってやる!
「判定員は冒険者の攻撃を受けるのが基本姿勢でしょう?でなければ判定にならないんだから」
「そ…そうだ!」
判定員はハッとして言う。おーい!
コイツひょっとしてムキになって冒険者をやっつけて勝ったイエーとか言ってたんじゃねえの?今まで。
「じゃあ危なくないんじゃない?」
「いやいや安全第一だから!」
「けどせこせこ仕事で上げてくヒマ無いからねえ」
「本当か?!本当に町に住んでないのか?!!」
「見に来るなら案内するけど?ちょっと遠いよ?」
「本当かよ!本当だったらランク3には相当するけども!!」
「ふむ?ランク3ってどんな条件?」
「えーとだな、先ずランク1は何でも良いから何か冒険者ギルドの仕事をしたことが有る、で、ランク2は町の外に出る仕事をしたことが有る。
とは言ってもその日に行ける町に街道を通って、野盗も狙わない様な価値の無い届け物をするって仕事だな」
「野盗…盗賊ね」
「あのな!冒険者にも盗賊って職業があるからな、野盗や山賊と一緒にされたら怒られるぞ!」
「あー、警戒や斥候、罠外しなんかを専門にする分野の冒険者ね。
盗賊を犯罪者っぽいと言うなら戦士や魔法使いなんかは生き物殺しまくりだし、ちょっと考えてみればトレジャーハンターや遺跡の発掘屋なんかも泥棒だしね」
盗賊団に盗賊か?と訊いて答えなかったのはそれも有っての事か?
盗賊って職業の冒険者が居るならヤツ等にとっては敵だからな。
「そ…そうだ。良く知ってるじゃないか」
だってゲームまんまの職業なんだもの。
「それでだ!ランク3は野営前提の仕事を達成出来れば上がれるランクだな」
「んー、自分、日帰りするから野営前提じゃあないけども」
「近いのかよ!」
「だから来てみろって言うのに!」
埒開かねえなあこの判定員!
「じゃあ魔法戦なんて如何っすかねえ」
「ま…魔法?!」
「魔法使いは相手を近寄らせず遠くから攻撃する者!
ほら防具必要無い!」
「いや魔法使いって言ったらどんなに才能有るヤツでもそれなりの年齢になってるだろ!」
ほー、じゃあウチの子達はみんな優秀なんだな!最低でもみんな靴底魔法は使わせているからな!
「浮遊!」
宣言すると自分の身がふわりと浮く。要は自分に搬送魔法を掛けたのだけれども。
「「「え………??」」」
呆然とする判定員達。判定員は当然、試合をする一人だけではなく、周りで見ている主審や副審みたいなのも居る。
「近寄らせませんので、幾らでも突撃して来て結構です」
言ってやってもまだぼーっとしている判定員。受付のおっさんより反応悪いぞ!
「はぁー。ではこちらから攻撃させて頂きます」
言って判定員を指差す。本来魔法には言葉も動作も必要無いのだが、今自分が攻撃しましたよ、と言うアピールの為だ。
「水鉄砲!」
ビシッ
「うお?!!」
判定員は革の防具を着けている。何か当たったとは感じても痛くも痒くもなかった筈だ。
考えたのだ。水鉄砲の魔法はどんなに力んでも水をぶっかける以上の攻撃にはならない。どうすれば威力が出せるのか、と。
先ず、魔法と言えば使い手の目の前に発生させて相手に向けて飛ばす、というのが一般的かと思う。が、飛ばす距離の分だけ無駄だと思う。
なのでゼロ距離に攻撃を発生させる。当てようと思った所そのものに。
そして口径を絞る。詰まり、小さい穴から無理矢理水を押し出した方が威力が出る。
それだけやってやっと、直接殴るよりは弱めかな、という程度の威力だ。
が、これが工夫して作り出した攻撃魔法、零距離凝縮水鉄砲だ。
作り話では、気軽にウォーターカッターだのエアカッターだの言って何かをスパスパ切り裂きまくっているが、そうそう出来るモノではなかったのだ。
あー、判定員まだぼーっとしてるなー。
「水鉄砲!水鉄砲!水鉄砲!」
ビシッビシッビシッ
「うっ………うがあああああ!!」
ようやく動き出した、と、思ったら。
何だか判定員鬼の様な形相で突撃して来たんだけれども!
けどネネを運ぶ時自分の後ろ一定の距離に位置固定した様に、今は自分を判定員の前一定の距離に固定している。それだけでは足りないと思うのでもう一細工してあるが。
詰まり、今判定員は、目の前にニンジンぶら下げて走らされている馬状態なのだが、もう何も考えず無茶苦茶に突撃して来ている。
…こんなのに判定員させて良いのか?防具着けなきゃ危ないってコイツがコレだからじゃあねえの?
一定距離に固定だから追い付く訳無いので落ち着いて判定員を眺めていると、突然景色が横に流れた。
これがもう一細工だ。後ろに壁が迫っていたので、壁に沿って移動したのだ。
流れる水に浮いているモノを手に取ろうとすると手を避けるかの様に流れてしまう風に。
魔法流水浮遊とでも呼ぼうか。
ごつっっ
判定員はそのまま壁に激突した。一瞬動きが止まる。痛かったのだろう。
痛みをこらえたらしい判定員がぐるっとこちらを向く。
憎き仇敵を睨むかの様だった。なんでやねん!!
「があああぁおらあああああ!!!」
木剣を無茶苦茶に振り回しながら再び突撃を開始する。何でコイツに判定員やらせてんの??
まあしかし、靴も良くなく一応防具も着けている判定員は直ぐに息が上がる。そして。
ぶんっっ
木剣投げてきやがった。
ビシビシビシッ
がらららんっ
無言で水鉄砲を放って撃ち落とした。三点バースト!!なんてな!!
障害物を避ける様に調整した搬送魔法でも流石に投げてきた物は避けられないのだ。
判定員は大の字に転がった。
「くそおおおぉおお!!」
………大丈夫か?此処のギルド。
「「冒険者の勝ちとし、ランク5に認定する!」」
「それより人選と職員の教育どうにかした方が良いんじゃありません?」
審判みたく見ていた方の判定員が呑気に試合結果なんか言ってるからつい口出ししてしまった。けどコレ、自分じゃなかったらケガしてたろ!
「ははは、そうだな!」
はははじゃねえよ!それはそうと。
「ランク5ですか。どんくらいなんです?」
「試合した判定員がランク4だった訳だが、それは討伐依頼を達成したことが有る、詰まり戦える事が証明されるランクなんだ。
そしてランク5は野営前提の討伐依頼を達成したら認定されるランクで…」
「野営は体力が削れるものと考える。詰まり、疲れていても勝てる、強いって証明されるランクな訳ですね」
「そ…そうだ」
言葉を途中で掻っ攫ってやった。正直ちょっとムカついてたので。
「ま、そんなもんですか」
「上から二番目だからな!それより上は6しか無いからな!」
「ほー、6ってどんなのです?」
「ギルド、若しくは国からの指名依頼を達成すれば上がれるランクだ」
「指名される程有名で、且つ大きな期待に応えられる実力者って事ですね」
「そ、そうだ」
「では冒険者証にランクの記載宜しく」
踵を返して試合場を後にする。面倒臭かったなあ。
「おわー…淡々としてるなあ」
「あれで4歳かよ。女って怖い…」
後ろから判定員達の声が聞こえる。自分を一般の女と一緒にしないで頂けます?!
ギルドの受付に戻るとおっさんが声を掛けてくる。
「おう、どうだった?」
「んー、ランク5」
「ぶううううぅっマジか??!!」
「マジ」
マジカルバトルだっただけに!…どうでも良い?
「その年で?!前代未聞だぞ??!何もんだよお前!!」
「お前呼ばわりはキライだってば」
「お…おう……」
「それで、これから商人ギルドに行くんだけど、紹介状とか書いて貰えるのかな?」
「はあ、何しに行くんだ?」
「おみせやさんがやりたいです」
「急に子どもぶるなよ!
…あー、露店の場所もらいにか?」
「そう」
「ちいは普通の子どもではなさそうだけどなあ、自分で店やるって中々売れるモンでもないぞ?そういう場合はだな…」
「既存の店に卸して売って貰うとか」
「そうそう……て本当に何もんなんだよ!
…あー、じゃあ紹介状書いてやるから商人と相談しろよ」
「ありがとう!」
「だから子どものフリするなよ!全く…」
おっさんはブチブチ言っているが、何か笑みが浮かんでいる。
「本当は有料なんだが今回はおっちゃんのサービスだ!」
「あ…有難う」
やべー!今は金持ってないや!
何故かおっさんはニヤッと笑って言う。
「それが素の表情かい!
おっと冒険者証が届いたな…本当にランク……!おっとっと。ほらよ!」
おっさんは自分のランクを大声で暴露しそうになって慌てて止めた。個人情報って事ね。
冒険者証のランク表示は、点と言うより印の数だった。一つ一つ形が違う。偽造防止の為と、それぞれのランクの意味を形で何となく表している様だった。