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最後

透はなにも思いつかないまま時間だけが過ぎていく。


不意に透は目を開けると立ち上がる。


「お前敵だよな?」


透は不思議そうに聞いた。


「敵ですかね……うーん、透君の敵ではないと思う。 むしろ透君はこちらの味方だと思っているよ」


「じゃあ戦わなくてもいいじゃないか?」


有も同意見だった。


「いや、ハッキリさせたいんだ。 透君も、命ちゃんもちゃんとラグナロクに備えているのかどうかさ。 また邪魔されるのは困る」


「ラグナロク?」


「終焉だよ……まぁ人間にとってだけれどね。 真に愛情を持ち慈しみがある人のみを残して世界をリセットするんだ」


「さすが神。 スケールがでけぇ」


透は完全に茶化しているが、有は不安になる。


「安心してくれ、君は死なない」


有を指して伏犠は言う。


「何も言ってない」


「おや、不安そうにしてたから。 気のせいでしたか」


「くっ……」


有は何も言葉が出てこない。


「それで結論は出たのかな?」


伏犠は楽しそうに透に尋ねる。


「あぁ、最初っから出ているさ。 お前をぶっ潰す!!」


透は刀を抜くと斬りかかるが切れたのは椅子だけで伏犠の姿は既になかった。


「おやおや、物騒な物を振りまわしたら危ないですよ」


背後から声が聞こえ透が振り向くと吹き飛ばされた。


「透!?」


有は銃を抜くが伏犠に取られてしまう。


「え!?」


「これはおもちゃだが少し違う気が……」


伏犠が銃を見ていると殺気を感じ吹き飛ばした透の方を向く。


既に目の前に跳んでいた透は刀を持っておらず素手で伏犠を殴る。


しかし鋼鉄の様な硬さの伏犠を殴り飛ばすことが出来ず逆に透の手の方がダメージをおった。


「野蛮人だな……酷い……これが主か? 人間に愛され、敬われ、思いのままに操れるのが主だろ? 分かってないのか?」


「知るか。 俺は主じゃねぇし神でもねぇ。 だけどお前だけは許さん。 俺の仲間は何人も死んだ」


伏犠はしばらく透を見ていたが呆れた様にため息をつくと、指を鳴らす。


ボスや北さん、朱雀に太公望が現れる。


「どうしてここに!?」


「俺はついに瞬間移動をマスターしたんだ!!」


「私も出来るように……」


「神か……」



「なるほど、小娘と小僧か。 それに純粋な人間か……不思議だな、お前の周りには仲間はいないはずなのにな」


伏犠の言葉遣いが変わった気がした。


そしてそれと同時に体も変化する。


青年は成長し中年になる。


しかしとてもイケメンで渋い男という感じだった。


「俺は遂に完全体に戻った。 それもこれもお前たちのお陰だ。 俺には探せないパーツがあった。 それを見つけてくれた」


透が飛びかかると目の前にルシフェルが現れ透の腹に腕が貫く。


透の動きが止まり全身の力が抜けるとルシフェルは腕を抜いた。


「透!! 大丈夫か!?」


有が走り寄ると透を抱えるが既に息もしていない。


ボスがピアスを外しルシフェルをなぐりとばす。


壁を突き抜け外まで吹き飛ばされる。


「おのれ、許さん」


ボスは更に追撃を与えようとするがその時伏犠に体を切られていた。


「えっ?」


ボスは倒れて動かなくなる。


「やめてくれ……」


有は涙が溢れてきた。


ルシフェルが戻ってくると朱雀が立ちふさがろうとするが北さんが朱雀をどかして立ちふさがる。


「こいつを倒す方法はあるのか!?」


「わかりません……透は切れてました」


「そうか、なら大丈夫だ!! 俺に任せておけ!! そっちは任せるぜ!! 仇を討つぞ!!」


北さんはルシフェルの腹を思いっきり殴る。


ルシフェルは体をくの字に曲げ宙に浮く。


北さんは更にルシフェルを殴ると外まで吹き飛ばす。


伏犠が動こうとしたが目の前に命が立っていた。


「動くな」


「ほう、魂を無理矢理戻したか……なるほど彼女を生贄にしたのか」


倒れているナナの体を見ながら言うと命は笑う。


「生贄? 利用したまで。 悪いけど消えてくれる?」


命が腕を振ると突風が巻き起こり伏犠を飛ばす。


「風を創造したのは命、君だったね」


伏犠は楽しそうに起き上がると命のまえから消え有に狙いを定める。


しかし伏犠の手はユウを捉えることは出来なかった。


リンが現れ攻撃を防ぐ。


「大丈夫か!?」


「リンさん!!」


有は少し嬉しくなった。


命は伏犠の後ろに移動すると頭を掴み投げ飛ばす。


華奢な体のどこにそんな力があるのかわからないが凄いと思った。


「早く攻略の仕方を見つけて」


命はそれだけ言うと伏犠の元へ走り取り押さえる。


「早く見つけるよ」


「これはあるんだ……でも透は使えなくて」


「有は!?」


「試してない……」


「やるよ!!」


「うん」


有は机の上に置かれた石の剣を握る。


「まずあなたの血を吸わせて、それから神、天使、悪魔の血を」


ミトロンがどこからか現れ伝えるとまたどこかに消えた。


有はナイフで自分の腕を切ると血を剣に吸わせる。


更に透の血を吸わせ、ボスの血を吸わせる。


すると石が崩れ始める。


「バカな!?」


伏犠は暴れるが命は全力で動きを止める。


現れたのはスラリと伸びた槍の様な剣だった。


有は何も言わずに伏犠に近づく。


「消えろ」


ゆっくりと刃を下ろし伏犠の頭に刺していく。


「うわぁぁああああああ!!!!」


伏犠はしばらく叫ぶと全身が光に包まれ消えた。


さらに有はルシフェルの元へ行き同じように刺す。


「ぎゃああああああああ!!!!」


ルシフェルも叫び光に包まれ消える。


「これで終わりなのか?」


有はあまりにも呆気ない終わりに戸惑いを隠せない。


「剣を封印しなくては……」


命は透の体を持ち上げボスの横に置く。



「間に置いて」


有は言われた通りの場所に置いた。


命は小声で何かつぶやき始める。


するとボスの体が繋がり、透のお腹の傷も塞がる。


2人は静かに目を開けた。


「まだ生きてるのか?」


「……あなたが私の恩人?」


「あぁ? なんの話か分からないな」


「そうかしら? 彼が瓦礫の中で拾った男の子……」


ボスは太公望を見て言うとニコリとしてそのまま目を瞑った。


「有、悪いな。 俺はもうダメだ、わかるんだ」


「透!! 諦めるなよ!!」


「いや、大丈夫だ。 やってくれ」


命は頷くとまたつぶやき始める。


有は座り込むと涙を流し続ける。


2人と剣は光に包まれ始めた。



ーー消えてしまう。



有はなぜかわかっていたが止めることはできずにただ見守っていた。


北さんも泣いている。


光が強くなり消えると2人と剣も消えていた。


「これで全てが元通りよ。 人間達は死なないわ」


「……」


有は何も答えずにただ座り込んでいた。


「残った天使はどうすれば?」


ミトロンが現れ命に尋ねる。


「異世界を作りそこに住む。 太公望、清明もそちらへ来なさい。 ほかの人は選択させてあげる。 本当は人間は入れないけど天使にしてあげる」


「俺はこの世界に残る!! なぜなら世界が俺を待っているからな!!」


「じゃあ私も残ります」


「リン、あなたは来なさい」


「……」


リンは答えずに有を見ている。


「ダメよ」


命はリンの腕を掴む。


その時有は命に銃を向ける。


「彼女は守りたいのかしら? ……まぁ、良いわ、リンは好きにしなさい」


命は呆れながら言うと指を鳴らし消えた。


ミトロン、清明、太公望も消えた。


何も無かったかのように世界から神が消えた。


「大丈夫?」


リンが聞くと有は頷く。


「目的がなくなっちゃって……」


有はなんとか答える。


「おい、くよくよするな!! 次の目的はあるだろ!? 」


北さんは有の肩に手を置いた。


「なんですか?」


「決まってるだろ!? ボスと透を生き返らせる方法を探すんだ!! これからは俺がボスだ!!」


「……北さんがボス? それは嫌だな」


「おい!! ……まぁいい。 ボスは女性だからな!! リンだな!! 」


「うるさい、消えろ」


リンは睨みつけるが北さんは気にしない。


「まぁとりあえず平和は戻った!! ゆっくり探そうじゃないか!!」


有は頷くと立ち上がった。














数年後





変な生物はほとんど出なくなった。


有はリン、北さん、朱雀と共に世界中を旅してようやく見つけた。


「これで透が生き返る!?」


「あぁ!! やったな!!」


「長かったよ……」


リンも嬉しそうに飛び跳ねている。


「お腹の子供大丈夫!?」


朱雀は心配そうだった。


朱雀は成長して綺麗なお姉さんになってきた。


リンは有との子供を身籠っている。


「さぁいくぞ」


有は富士山の山頂から火口に向かって球を投げ入れた。


次の瞬間火口から人が2人吐き出された。


「2人ってこんなに仲良かったっけ?」


朱雀は嬉しそうに言う。


2人は抱き合ったまま吐き出された。


静かにボスが目を開ける。


「あら、眠っちゃった? あれ? 景色が違う……起きて、透!!」


「うん? あぁ、起きるよ」


透は目をこすりながら起きる。


「おぉ、透じゃねぇか!! ボスを離せ!!」


北さんは2人を離そうとしているがボスは透から離れなかった。


しばらくすると落ち着きようやく離れた。


「子供か、良かったな」


「あぁ、でも不思議だよ。 こうして話せてさ」


「そうだな」


「ボスと結婚したのか?」


「いや、そういうわけでは……2人しか存在しなかったからな」


透は照れ臭さそうに言うと話題を変える。


「狩りは最近ないのか?」


「あぁ、まったく無いよ。 敵は消えた」


有は両手を広げ自慢げに言う。


「そうか、それじゃああの空を飛んでるのは幻覚か」


透が指差した先には龍が飛んでいた。



終わり


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