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逃げる者と追う者

透はしばらく大人しく座っていた。


しかし先程の人たちはまったく帰ってこない。


「遅いな。 何かあったのか?」


透が言うとサムは立ち上がる。


「僕が見てくる」


そう言うとなにも持たずに店の外に出て行った。


「おい、待てよ」


と透は言うと慌ててサムの後を追って店を出る。


透の行く手を遮るかの様にゾンビたちは集まってくるがチラリと見えたサムにはまったくゾンビが寄ってこない。


刀を握り一回転する間に全てのゾンビの頭を切り落とすとすぐさま追いかける。


従業員用の通路に入り進むと休憩室があった。


そこの扉を開けると血塗れのサムが扉に背を向け立っていた。


「おい、何があった」


扉を閉めながら透聞くとサムは横に首を振った。


「どうしようもない。 行くぞ」


肩に手を当て透が言うとサムは震え始めた。


「おい、大丈夫か?」


透が聞くとサムはゆっくりと振り返った。


顔は笑顔で手には包丁を持っていた。


「やっとみんなが隠れている場所が判明したよ。 みんなは僕のことを殺して食料にしようとしていたんだ。 だから先に殺してやったよ。 これでしばらくはご飯に困らないね」


透はその場を離れようと扉に手をかけるが動かなかった。


背後にサムが立っていた。


「友達だろ。 2人で一緒に食べようよ」


透は刀を抜き振り向きざまにサムを斬ったが落ちた首を見るとゾンビであった。


少し離れた所にサムは立っており透は駆け寄り斬りつける。


しかしサムの体は切れずにニコニコしている。


「刀で僕を切らないとダメだよ」


透が持っていたはずの刀は消え死体の足が手にはあった。


慌てて離すとサムになぐりつけるがゾンビに代わっていた。


「どうなってやがる」


そう言うと扉に向かってタックルする。


扉が開くとそこにゾンビはおらず、真っ暗で床も何もない状態だった。


透はそのまま暗闇に落ちていった。





ーー有たちは先に進むため車を走らせているとだんだん道が混み始めてきた。


「事故か何かがあったのかな?」


有はラジオのチャンネルをいじるが特に情報は入ってこない。


完全に停まってしまった。


「しばらく並ぶしかないね」


有は諦めて待つことにした。


するとリンは立ち上がり車を降りると前の車の窓ガラスをノックする。


「何だい?」


運転手が窓を開けて聞いた。


「コレなんの行列よ?」


「これはルシフェル様に治してもらう為の行列さ」


男は後ろの座席を指差した。


後ろの座席では今にも死にそうな女性が寝ていた。


「病気か?」


「あぁ、ガンだ。 もう医者にはダメだと言われたよ」


リンは何も言わずに頭を下げると車に戻る。


「コレ並べばルシフェルに会えるよ」


有は銃を取り出し弾を確認した。


「おい、これは並ばないとダメなのか?」


不意にナタが声をかける。


「治しているなら待った方がいいと思う」


有が答えるとナタは鼻で笑う。


「何か意見でも?」


「あぁ。 君はルシフェルを倒そうとしているが肝心のルシフェルは人を治療してる。 君はその行為自体は認めている。 本気で倒そうとしているのか?」


「いや、違う。 仲間なら助けるつもりだよ」


「そうなのか? 私は殺しに行くのかと思っていたが」


「そんな事にはならないさ」


有は少しずつ車を前に進める。



しばらくすると日が落ち始めた。


「今日はこのまま寝ましょう」


ボスが言うのでそれぞれにベッドを出して寝た。


有とナタは起きていた。


「君は透の相棒だと聞いたが本当か?」


「あぁ、本当だよ」


「君と透では実力の差がありすぎるような気がするのだが……」


「それは分かっているんだ。 いっつも背中を追いかけて守られて、確かに相棒にしては弱いよね」


「そうか。 強くなりたいか?」


「あぁ、もちろん。 透並みにはなれないにしても強くはなりたい」


「楽な道ではないが頑張ってくれ」


有は頷く。



次の日のお昼頃にはルシフェルがいると言われるテントに近づいた。


「ありがとうございます」


頭を下げながら出てくる親子が見えた。


そして次の人達がテントに入っていく。


「ねぇねぇ、あそこに何があるの?」


もうすでに飽きている命が聞いた。


「ルシフェルが傷を治してくれるみたいよ」


ナナが答えると命はさらに興味がなさそうにしていた。


次が自分達の番だ。


前の人が奥さんを連れて入っていった。


「すまない」


と何故か謝っていた。


しばらくするとテントの中から大きな悲鳴の様な音が響いて来た。


「すぐに車に避難して」


ボスが誘導し車の中に入る。


テントのそばにいた人達は倒れていく。


しばらくすると音が消えた。


「あれはなんだったのですか?」


「あれはマンドラゴラだ。 あれを聞いたら自分も死ぬぞ」


ナタが答えると車を降りテントに入った。


有も後を追う。


テントの中には横になって目を見開いている女の人と頭が吹き飛んだ男の人がいた。


「この女がマンドラゴラだ」


「死んでるのか?」


「あぁ叫べば死ぬ」


「ルシフェルは?」


「あんなのでは死なない。 どこかに逃げた」


ナタはテントの裏に回り込むと地面を調べる。


「何を探しているんだ?」


「もしかしたらダメージがあるのではないかと少し期待したが、何も無いみたいだ」


ナタは車に戻るので有も後に続く。


車に乗り込むとナタは残念そうな顔をしていた。


「追えないの?」


ボスが効くとナタは首を横に振る。


「とりあえずアジトに戻りますか?」


「そうね」


有は車をUターンさせ来た道を戻り始めた。


ボスは窓の外をぼんやりながめていた。




ーー透が目を覚ますと病院のベッドの上であった。


「元に戻ったのか?」


と言いつつベッドから降り病室から出ようと扉を開ける。


すると目の前に医者が立っていた。


「ここはどこだ?」


「ここは病院です。 あなたは重症なのでベッドで寝てて下さい。 手術を行います」


「なんだって? 手術?」


透は自分の体を見てみるがなんともない。


「おい、俺は大丈夫だ。 どいてくれ」


医者は動かない。


透は医者の顎を殴ったが自分の拳が痛かった。


「お前何で出来てるんだよ」


透は病室の中にあったパイプ椅子で医者を殴る。


しかし椅子が曲がり医者は立ったまま微動だにしない。


「あなたは病人です。 ベッドに戻り手術を受けて下さい」


何事も無かったかの様に喋り続けるのが不気味に思い透は窓の外を見た。


ここが2階だとわかった。


近くに大きな木があったので飛び移った。


下にゆっくり降りていると木の下をナースたちが囲んでいた。


「マジかよ」


窓を見ると医者が立っている。


「一か八かだな」


透は木を滑り降りるとナースの1人を殴る。


やはり硬いが隙間を見つけ走って通り抜けるとそのまま病院の外まで行こうと走った。


しかし病院の外の道路には先ほどの医者がかなりの人数立っていた。


「ロボットかよ」


透は病院内に入ると武器になりそうな物を探した。


しばらく探しているといい物が見つかった。


「これで奴らに電気を流してやるよ」


ダイヤル。最大まで回すとパットを2つとりかまえる。


後ろの壁を壊して医者が入ってくる。


パット2枚を当てると電気が流れる。


機械が止まると医者は倒れて動かなくなった。



「よし、次」


その時もう1人医者が入ってきたのでパットを当てるが電気は流れない。


どうやらチャージの時間がいる様だ。


医者は注射器を出すと透に刺そうとする。


注射器の中には何か不思議な色の液体が入っている様だ。


必死に抵抗していると電気がチャージされたみたいで透は転がり逃げるとパットを当てる。


電気が流れる医者の機能は停止した。


「キリがない」


透はその部屋を出ると脱出経路を探すため病院内を走り回った。


すると体のでかい患者がベッドに寝ていた。


「お前……」


すると聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「透、会いたかったよ。 なんで逃げたんだよ」


「サム……」


透は凍りついた。






読んでいただきありがとうございます。

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