ナタと太公望と過去と現在
ボスはナタを怪しく思いつつも仕方なくアジトへと連れて帰った。
「凄いものを人間は造る」
ナタは興味深く見ていた。
ボスは色んな部屋を見たが誰もいないようであった。
「有君を探せる?」
ナタはボスを見ることはなく建物を見続けているが返事は返ってくる。
「それは誰だ? 必要なのか?」
「えぇ、彼は透君の相棒だから何か知ってるかも知れないの」
「あぁ、なるほど。 彼の写真はあるか?」
ボスはスマホをいじるとみんなで撮った写真を出して見せた。
「彼か、何というか……弱そうだ」
「いいから探して」
「分かった」
ナタは眼を閉じると少し浮き上がる。
すぐに地面に降りると眼を開けた。
「彼は何かを追っている。 でも彼の事は知らない」
「聞かないとわからないでしょ?」
「彼の頭の中を探った。 彼はここにいると思っていた。 ニュースで彼が死んだと思っているようだ」
「あなた人間の思考を読めるの?」
「あぁ、だが君のは読めない」
「私は特別なの」
ナタは首を傾げた。
「また今度教えてあげる」
ボスは車庫に向かい歩き始める。
ナタは黙ってついていく。
車庫には車もバイクもなかった。
「どうやって移動しろと? どっちか残しといてよ」
ボスは諦めながら言うと戻ろうとした。
「どこに行きたいのだ?」
「有君を追いかけようと……」
言葉が終わらないうちにボスの体がふわりと浮いたと思ったら外に出ていた。
「あそこに停まっているのが有という男の車だ」
ナタが指差した先にはたしかに車が置いてあった。
「あなた天使よね?」
「いや、違う」
ナタは言うと車に近づくのでボスも後ろを付いていく。
車はコンビニに停まっていたが中には誰も乗っていない。
コンビニの中に入るが有は居なかった。
「どうしていないの?」
「バレたのか?」
ナタは言うとコンビニの裏へと歩いていく。
少し小高い丘になっている。
頂上に登ると少し離れたところにテントが見えた。
「あれだ」
近づいていくと中から1人の女の子が出てきた。
ナタはとっさに構えたがそれを吹き飛ばしてボスが抱きしめたい。
「命ちゃん大丈夫?」
「うん……苦しい」
「ごめんね」
と言ってすぐに離す。
テントの中から有が銃を構えながら出てきたがボスを見ると銃を下ろした。
「ボス、何故? あ、いや目が覚めたのは嬉しいです、でも何故ここがわかったのですか?」
「彼が案内してくれたの」
ナタを指して言う。
「誰ですか?」
「透君のお友達みたい、天使では無いらしい」
「私は彼を助けるために派遣された。 正体を君達に明かす訳にはいかないが君達が彼の仲間なら私の仲間でもある」
手を差し出してきたので有は返した。
「よろしく。 名前は?」
「ナタと呼んでくれ」
「あぁ分かった。 そうだ、出てきていいよ」
するとテントからりんとナナも出てくる。
「人間は男より女の方が強いのか?」
「あー、ここにいる人たちだけだと信じたいよ」
と有は呆れて答えた。
「でもこの人数は車に乗れない。 どうしようか?」
「任せてくれ」
ナタは言うと消えてしばらくするとキャンピングカーごと現れた。
「これならいいだろうか?」
「あぁ。 でも僕たちの車は?」
「任せてくれ」
しばらくすると戻ってきた。
「大丈夫だ。 アジトに置いてきた」
有は少し不安になったが荷物を片付けるとみんな乗り込み走り出した。
ーー北達はアメリカに戻るとしばらく身動きがとれなくなってしまった。
「タイさんの兄貴ってどんな人?」
「そうだな、最強とは彼の為にある言葉だろうな」
「そんなに強いのか?」
「あぁお前は顔が似てるが我にすら勝てんだろう。 その我が兄貴には勝てん。 一瞬で存在ごと消される」
「その人は悪い人なの?」
「そんなことはないと思う、実際兄貴の考えてる事はよく分からん。 ある時は人を救い、ある時は殺す。 どういう基準があるのかもサッパリだ」
「なんか怖そうな人ね。 でも顔が似てるなら透さんも似てるわよ」
「透? 誰だそれ?」
「俺の部下だ。 いう事は聞かないがな」
「師匠の部下ですか、それなら是非会わせてください」
「いいが……彼も相当変わっているぞ」
「彼は強い。 会うべきだ」
「そうか……じゃあ一度日本に行くか?」
「そうだな、寿司食いたいしな」
目的地も決まりみんなは飛行機に乗り込んだ。
「そういえばお前の兄貴は高いところ嫌いか?」
「そんな事は聞いたことがない。 と、いうか兄貴に怖いものがあるのだろうか?」
「すごいな……」
北は感心していた。
「何か兄貴に特徴は無いの?」
「特徴?」
「そう、何が好きとか」
「あー、酒が好きだな。 あと人間が造る武器や道具が面白いって言ってたな」
「うーん。 それだけだとどこにいるのか分からないなぁ」
「元々はどこにいたんだ?」
「全世界をフラフラと、特にどこと言うのは無かったな」
「それじゃあタイさんはどこで拾われたの?」
「あぁ、殷って国の片田舎だ」
「殷ってどこ?」
「中華大陸に昔あった国だ、あそこの王は代々強かった」
「確かに強かった。 そして強い者、賢い者は身分など関係なく雇ってもらえた。 しかし最期の王は恋をしてしまったんだ」
「それは普通じゃないの?」
「人間に恋して婚姻を結んでだったら国中が祝福するさ。 しかし相手が悪かった、女媧を好きになってしまい、妲己と名を与えてそばに置いた。 正確には捕まえて側に無理矢理置いたんだ。 でもそれが間違いだった。 女媧はわざと捕まったんだ」
「さすがボス」
「まぁそうだが目的は誰にもわからなかった。 そして民は王を恐れ暴動を起こした。 その戦いは何年も続いた。 その時運悪く殺されたのが我だ」
「格好つけて言われても……」
「兄貴は死んだ俺をなぜか生き返らせた。 そしてついて行くことを拒まなかった。 と、いうか行く場所は他になかった」
「いつまで一緒にいたの?」
「そうだな、第二次世界大戦までかな」
「最近まで一緒だったんだね」
「あぁ、第二次世界大戦の時ある国に目をつけられて手を貸して欲しいと言われた。 その国は負けそうだったんだ。 それで俺は大金をもらう代わりに手伝うことを約束した。 もちろん兄貴に言われてだ。 それで戻ったら兄貴は消えていた……」
「お金も兄貴が持っていったのか?」
「いや、金は我が貰った。 それに土地も買ってくれていた。 何もない砂漠をタダ同然でだ」
「それがラスベガス?」
「まぁそうなる。 全ての土地を買ってくれたから金には困らなかった。 でもそれでは寂しいじゃないか」
「え? あ……うん」
「そして中華に旅をしてみた。 その時見つけたのがリンだ。 嫁だ」
「嫁ではないだろ。 だが兄貴はなんで消えたんだろうな」
「さぁ? 我の事を見限ったのか、それとも足手まといだったのか……」
「まぁ兄貴に会えばわかるじゃないか、なにも死んだわけではあるまい」
「師匠……」
「太陽に向かって走ろう」
「はい、師匠」
2人は窓から今にも飛び出そうとしている。
オオクニヌシが慌てて止める。
「2人ともここ飛行機の中よ……」
朱雀は呆れていたが一応突っ込んだいた。
読んでいただきありがとうございます。
目がかすれてスマホの字が見難いです。
歳です。
きっとそうです。
決してメガネがあっていないわけではない!!!
来週メガネできるんだ♩




