脱出
いやぁー。
まいったまいった。
お主のお陰で助かった。
だっけ?
透は主人と2人地下へと向かった。
そこは地上とは違いボロボロだった。
「本当にこんなところにいるのか?」
と言いながら先に進むとリンとボスが倒れていたので透は駆け寄ると2人の口元に手を当てる。
2人とも息をしているのがわかりほっとすると立ち上がり主人を見る。
「何故ここへ連れてきた?」
とどこからともなく声が聞こえた思うと主人の体から小さな腕が生えた様に見えたが実際は主人の心臓を貫き体を貫通したのだ。
主人は膝から崩れ落ちそのまま倒れると絶命した。
透は刀を抜き構えると見渡すが何も動きがない。
「クソっ、どうなってやがる」
するとどこからともなく声が聞こえる。
「君達はここに入ったら出られないさ。 大人しく僕と遊んでいればいいんだよ」
「ふざけるな。 俺たちにはまだやることがあるんだよ。 出てこいよ、弱虫ヤロー」
すると挑発された男の子は透の目の前に現れ透を睨みつける。
透は刀を振るが少年は煙の様に消えると真後ろに立っており透の体を貫こうと手を出すが何とか避けると刀で斬る。
少年はまた消えると透の後ろに現れた。
「それじゃあ僕は斬れないよ」と笑いながら少しずつ透を壁際に追い詰める。
透は刀身を赤くすると斬りかかる。
しかしそれも通用しない。
遂に透は壁に背が当たった。
少年は嬉しそうな顔で右手で透を貫こうと構えた時、背後で発砲音が聞こえたので少年は振り返る。
そこには銃を構えた有が立っていた。
少年は有の方に標的を変え攻撃しようとしたが体が動かない。
撃たれた部分を見てみるとそこだけ穴が空いている。
「塩の弾だ。 即席だから威力は低い」
少年は光の玉に姿を変えると外へ飛んでいった。
「透大丈夫か?」
「あぁ。 もう少しで倒せるところだったんだよ」
と言いながら刀を納めると2人はリンとボスに駆け寄る。
「おい大丈夫か?」と言いながら透はボスの顔をペチペチと叩く。
「う……」と言いながら目を覚ますと透を睨みつける。
「なんだよ」
「人の顔を叩かないで」と言うと起き上がりリンの側に行く。
透は1人残されポカンとしていた。
リンもすぐに目を覚ましボスと有に肩を借りて立ち上がる。
「透行くぞ」と有が言うと4人は地上へと続く階段を登り外に出た。
そこにはジンと店主が立っていた。
「ご主人はどうなったんだ?」と店主は聞いてきた。
「亡くなりました」
「そうか……でも子供から解放されたならそれで良いのかもな。 俺はそろそろ行くよ」
と言いながら店主は背を向け右手を挙げると軽く振った。
その後光に包まれると店主は消えた。
それを見届けた後リンはジンに気づき有の肩を借りて側まで行くと抱きしめた。
「ジン。 良かったよ」
「ありがとリン。 私は無事だけれど旦那が……」
「わかったよ。 話聞くから」と言いつつもリンは少しふらついている。
「アジトに行きながら話さないか?」と有が提案するとリンは頷き透に合図を送る。
透は頷き車の鍵を開けると運転席に乗り込む。
ボスが助手席に座ると、
「あなたはもうホテル選びをしないでね」といいながら軽く睨みつける。
「分かりましたよ、ボス」と返事するとボスは目線を逸らしダメだと思った。
3人が車に乗ると走らせた。
「ところでジン、旦那どうしたよ?」
「あのね、昔の仲間に捕まってしまったの。 解放の条件は透と命の2人を連れてくること」
「ダーリンを? なんでダーリンなのよ?」
「ダーリン? リンの旦那様? あらいやだ初めましてリンの友達のジンです。 海外に住んでますけれど良かったら遊びに来てください」
と深々と頭を下げる。
「違う」と一言透は言い放つと話を戻させる。
「すいません。 旦那は一般の人ですぐに捕まってしまいました」
「それで誰があなたに命令しているの?」
「大和と言う男です」
「大和かよ……」
「でも彼もそんな事をする人じゃありません」
「でしょうね。 彼は正々堂々が好きだから」と呆れながらボスが言うと、
「知っているのですか?」とジンは驚きながら言った。
「何回か会った事のある顔見知りだ」
「そうだったのですか……」
「大丈夫よ、ダーリンは生太刀持ってるから」
とリンは言うとジンは驚く。
「人間で使える人いるの?」
「えぇ、使えるのよ」とボスも言いたくなかったという顔をしながら答える。
「すごいわ、これなら倒せるかも」
「倒せるよ」とジンとリンははしゃぎながら言い合っていた。
「暴れないでくれ」と透は言いながら車を走らせた。
ホテルのあった場所にフードを被った男が立っていた。
「なるほど、地下だけが残っていたのですか」
「先生ただいま戻りました」と現れ片膝をついて頭を下げているのはロキであった。
「ロキさん、どうでしたか?」
「もしかしたら奴が本体かも知れません」
「そうですか……それよりもここをご覧なさい」
「荒れ果てた土地ですか?」
「ここには昔ホテルがあったのです。 そしてその地下の部分だけが今なお残っているのですよ。 中には何があるんでしょうか?」と言いながら中に入っていくのでロキも付いて行った。
「何もないですね……」
すると少年が現れた。
「見てください、幽霊ですよ」
「えぇ、見えてます」
「お前たちは僕と遊んでくれるか?」と少年は言いながら地上に続く扉を閉めた。
「先生、ここは僕が……」と前に出ようとしたが止められた。
「君は1人でここにいるのか?」
少年は驚いた顔をしたがすぐに指をさした。
そこには死体が転がっていた。
「なるほど、君はただ一人寂しいだけだったんだね。 殺したのは仕方がないさ、気にすることはないよ」と言うと少年に近づき抱きしめる。
「大丈夫、怖くないよ」と言いながら少し力を込めると少年は光の玉になる。
それをそっと手で包むとそのままフードの中に持っていき食べてしまった。
「これで新たな命に生まれ変われます」と言うと2人は外に出た。
「幽霊に手間取るとは……ところでタケミカヅチの方はどうでした?」
「はい、あのアホそうな男を先頭に世界各地で迷子になっております」
「彼は本当に面白いですね。 私は大ファンになりましたよ」
「はぁ……」
「まぁしばらくは放置でいいでしょう。 それよりも大和を助けてあげて下さい」
「分かりました」と頭を下げるとロキは消えた。
「やれやれ、処分が終わっていないのに」
というと有が乗ってきた車の側に行くと手をかざす。
すると車は光に包まれ消えると小さな花が咲いた。
「素晴らしい。 ここを花畑にしよう」と言うと男はそこら中に小さな花を咲かせ始め終わると綺麗な花畑が現れた。
納得したかの様に頷くと男も消えた。
読んでいただきありがとうございます。
北さん早く出したいなー。。
北さん書いてる時が一番楽しいです!




