表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/341

91.未熟者には出番なし

「ジョウ! ……あ、これは『子猫の道具箱』の店主殿」


 宿舎に到着するのとほぼ同時に、アオイさんが迎えに出てきてくれた。一緒に来たアキラさんの顔を見て、ちょっと驚いたみたいだ。アキラさんの方は、平然としたものである。さすが年の功。


「ネタを出したのはわしじゃからのう。大して詳しゅうもないが、説明に馳せ参じた」

「それは助かります、中へどうぞ。お前たちも、隊長室まで来い」

「ひゃはは、失礼しますえ」

「分かりました」

「了解っす」


 彼女の説明に納得したアオイさんの指示に、俺たちは大人しく従った。隊長室に呼んだってことは、全員を集めるような話し合いじゃないってことなんだよな。それなら食堂使うから。

 そのまま全員で、カイルさんの留守をアオイさんが守っている隊長室へと向かった。扉の前には……あ、テツヤさんだ。


「早かったっすね」

「ちんたらしている場合ではないようだからな。入って構わん」

「へい。どうぞ、副隊長、ひいばあちゃん」


 ああ、アオイさん待ちだったのか。そのまま扉を開けてくれたので、呼ばれたアオイさん、アキラさんの順に入る。で、その次にはグレンさんと俺。


「失礼しまーす」


 まあ癖というか何というかで、そう言いながら入室。最後に入ったテツヤさんが扉をしっかり閉めて、そのまま全員でソファに適当に座る。あ、ちゃんとアキラさん、アオイさんが上座だぞ?




「ふうむ……お話は、わかりました」


 アキラさんから『黒の魔女』についての話を聞いて、アオイさんは顎に手を当てつつ小さく頷いた。彼女もそういう人がいるって話は初耳だったらしく、眉間のシワがくっきりと。綺麗な顔にシワがよるのはいやだねえ、全く。


「しかし、あなたはどうやって撃退……といいますか、討伐を?」

「まだわしも若かったでな、力押しじゃ。確かに魔術は自然災害レベルの脅威じゃったが、しょせんは魔術師1人じゃからのう」


 アオイさんの問いに、アキラさんが喉の奥でくっくっと笑いながら答える。いやまあ、結局はそうなるんだろうけどさ。最終的に森の肥料にしちゃったとか何とか言ってたし。


「男が面と向かうて相手すりゃ、返り討ちに会う危険性も高いじゃろうてな」

「それでばあさん、1人で相手したのかよ……」

「そうじゃよ? そこらの村人では、黒の汚染には耐えられんじゃろ」


 グレンさんが肩をすくめるのに、アキラさんはほんとに平然と答える。この人、全盛期ってラセンさん超えるレベルの魔術師だったりしないかね。今でもこんな感じだしさ。

 ま、それはともかく。その会話を聞いていたアオイさんは、困ったような顔をした。


「そうなると……ラセンは向こうに行っていますからともかく、もう1人くらい援護を出したほうが良いのでしょうが……」

「ああ、このお嬢ちゃんにはまだ荷が重かろ。わしが行くから、安心せえ」


 アオイさんは、部外者であるアキラさんに頼むつもりはなかったみたいだ。そりゃまあ、部下である俺がいるんだから、俺に命令するのが筋だろうしな。

 でもアキラさんは、自分が行くって言った。……言ってくれた。


「……正直に申し上げますと、そうしてくれた方がこちらも助かります。まだ彼女は魔術師としては未熟なので」

「分かっておるわえな。この子にはまだまだ、勉強して成長してもらわんといかん」


 アオイさんも頷いてくれて、だけど本当は俺が行かなくちゃならないのに、アキラさんが請け負ってくれた。

 そうやって守られてる俺にできるのは。


「……頑張ります。早く、こういう時に出られるようになります。だから……ごめんなさい、アキラさん」

「謝るでないわ。早う、わしやラセンちゃんを超える魔術師になってたもれよ」

「……はい」


 強くなろう、と誓うことだけだった。




 でまあ、話は落ち着いたんだけど。アキラさん、お店があるんだよねえ。どうするんだろう?


「店は臨時休業じゃ。致し方あるまいのう」


 聞いてみると、そういう答えが帰ってきた。……あ、でも、確か店員さんいたよねえ。黒に汚染されてタケダくんの卵盗んだ、あの彼。どうしたのかな。


「そういえば、店員さんどうなりました?」

「コウジかや? ぼちぼち回復はしとるが、まだ1人で店は任せられん。品物を覚えきっとらんからのう」

「あ、そっちで」


 まだ、ということは、一応店番とかやってるのかな。1人で任せられない理由が『品物を覚えきっていないから』で、ちょっとほっとした。黒の影響から抜け出せれば、ちゃんとまたやっていけるんだなって。

 と、テツヤさんが少し困った顔して俺に言ってきた。


「あー、そういやあいつの時は面倒かけたんだっけな。身内として面目ない」

「身内?」

「年そんなに変わらないんだが、あいつ俺の甥っ子」

「はい?」


 おいっこ。

 えーとつまり、きょうだいの息子ってことになるんだよね。え、でもあの人、テツヤさんとほんとに年離れてそうにないんだけど。

 というか、テツヤさんの甥っ子ってことは、つまり?


「わしの玄孫じゃ。孫の孫、ということになるの」

「ぶっ」


 やっぱりそうかよ! てことはテツヤさんの親と似たりよったりの年齢の、テツヤさんのきょうだいがいるってことかよ! もう、訳わかんねえぞ、ネコタ家!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ