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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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78.事実は何というか奇なり

 砦に向かうカイルさんを見送るため、俺たちは出口のひとつまで一緒に向かった。

 出るのはカイルさん、白黒、脳筋トリオ始めパワー系と、あとムラクモ。何気に20人くらいいたりする。各自革鎧だけど愛用の武器、それと馬を揃えている。荷物運ぶための馬もいるな。馬車馬と一緒で背中の翼切られてるから、ぱっと見で分かるんだよね。

 街に残るのは俺とアオイさん、ノゾムくん、グレンさん、タクト、ほか数名。後、ここには何でか領主さんも来ている。あーうん、カイルさんたちが出発するのを領主さんが見送るのに、何の問題もないよな。

 うちの部隊、何気に結構人数多いんだよな。俺らの住んでる宿舎とは別に詰め所があって、そっちに詰めてるメンバーもいる。食堂でのミーティングにはちゃんと顔出すんだけど、そのくらいで話する機会もないからなあ。


「タチバナ隊長。無事のお帰りを、お待ちしておりますぞ」

「は。過分なお言葉、ありがとうございます」

「行ってらっしゃいませ、隊長。ご武運を」

「ああ。留守を頼んだぞ、アオイ、ジョウ」

「は」

「はい」


 領主さんの言葉に続いて軽く頭を下げたアオイさんたちにならい、俺も頭を下げる。それからふと気がついて、肩の上にいるタケダくんに話しかけてみた。


「タケダくん、カイルさんたち行って来ますだって」

『はーい、いってらっしゃーい。みんな、がんばってねー。ぼく、まってるからねー』


 外から見たらしゃー、と元気よく息を吐きながら、背中の翼を精一杯広げているようにしか見えないよな。だから、俺がタケダくんの言葉を伝える。さすがにそのまま、はちょっとあれだけどな。


「みんな頑張れ、帰りを待っている、だそうです」

「そうか。アルビノに応援をもらった以上、負ける気はしないな。行ってくるよ」

「ジョウ、土産待ってろよー」

「留守を頼む」

『俺たちの力、見せてやっからな!』


 カイルさん、コクヨウさん、ハクヨウさん、脳筋トリオ。一緒にいるはずのムラクモは……あれ。


「はああ……頑張って勝ってくるからな、タケダくん。待っていてくれ」

「……しゃ、しゃー」


 あー、やっぱり。分かりやすく顔真っ赤にしてた。大丈夫なのかな、こいつ。タケダくん、頑張れ。

 とはいえ、彼女だけじゃなくて部隊全体が何かテンション上がってる。白い伝書蛇の応援、ってだけで何か士気上がってるし。

 俺の役目ってもしかして、こっち側の皆さんのテンション上げ? いやまあ、それで力になれるならいいんだけどさ。




 出発を見送ってふう、と一息ついていると、領主さんに声をかけられた。急いで帰る前に、ちょっとだけって。


「少しずつ成長しておるようじゃな。お前さんも、伝書蛇も」

「ありがとうございます、領主様」

「いやいや。まあ、無理はせんようにな。わしらはどうとでもなる、街の住民を頼むよ」

「はは。頑張ります」


 いや、あんたんとこ娘さんちっさいだろが。気をつけてくれよ、ほんと。

 ……俺と同じ『異邦人』だったお母さんを持つ、娘さんな。どんな子なんだろう。

 まあ、そんな変なことねえと思うけどさ。俺だって、中身とガワの性別違うくらいで普通だもんよ。魔術師の素質ってやつはまた別の問題だし。


 で、丸い身体をふうふう言わせながら急ぎ足で帰る領主さんも見送る。……乗り物使わないのな、あの人。そこだけは評価する。なのに何で、痩せないんだろうなあ。やっぱり食うだけ食ってるのかね、領主さん。

 そんなこと考えてると、アオイさんがちらっと見たことのある人を連れてきた。別の詰め所にいる人だ、ってのは何となく知っている。草のような緑色の髪の、しっかりしたガタイの割におとなしそうな感じの人。


「ジョウ。一応、紹介しておくわね。別働隊の部隊長で、ネコタ・テツヤ」

「テツヤでいい。こうやってちゃんと挨拶するのは初めてだな、よろしく頼む」

「スメラギ・ジョウです。よろしく……ん」


 そっか。テツヤさんっていうんだ、この人。とりあえず挨拶して……あれ、聞いたことある苗字だぞ。

 ネコタって、アキラさんと同じじゃねえか。もしかして、ご親戚かね。


「あの、ネコタって」

「ああ」


 尋ねてみると、すぐに分かったように頷いてくれた。その後くれた答えが、ちょっと衝撃的だったけど。


「『子猫の道具箱』の店主は、俺の曾祖母だ」

「そうそぼ!?」


 えーと、お父さんが父でお母さんが母でお祖父さんが祖父でお祖母さんが祖母で……その上って。


「え、ええと、ひいおばあさん、ですか?」

「若作りだろう?」

「若作りってレベルじゃないです!」


 言ってしまってから、ちょっと失礼じゃねえかと気がついた。嫌だって、人んちのひいばあちゃんを若作りとか何とかって、でもあれええと?


「魔術師には、やたら長命なのがたまにいるんだ。まあ、長生きしているだけで特に問題ないといえば問題ないんだがな、曾祖母は外見と言葉遣いのギャップを大層楽しんでいてな」

「は、はあ……」


 アキラさん、ひ孫いる年齢だったのか。しかも、こんな大きな兄ちゃん。

 い、いったいいくつなんだろうと考えようとして止めた。

 ラセンさんが、前にアキラさんは年齢不詳だって言ってたんだよな。テツヤさんの存在分かっててなお不詳ってことは、だ。


「相当長く生きてるんですね、アキラさんって」

「本人も年齢忘れた、と言っていたしな。まあ、曾祖母もそうだがよろしく頼む」

「はい。俺の方こそ、お世話になってますって伝えて下さい」


 何か知らんけど、お互い頭をペコペコ下げる事態に陥った。まあ、いろいろ思うこともあるんだよ。うん。

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