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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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75.丈夫か否か

 さて。飯貰ったは良いがどこで食おうかね。いきなりおっさんずの真ん中で食って平気……とは何となく思えないんで、相手は選ばせてもらいたい。

 ……あ。


「ジョウさーん。ここどうですかー」

「おう、タクト。マリカさん、あそこでいいよな?」

「え、ええ。ジョウさんがいいんなら」


 ぱたぱたとタクトが手招きしてくれる。ああ、こいつなら大丈夫そうだ、色んな意味でと思って、そこにすることにした。

 ……色んな意味で、ってどんな意味だ、俺。

 ま、そんなことはともかく。タクトの隣に俺、向かいにマリカさんという座り方にさせてもらった。ちなみにタクトの向かい、つまりマリカさんの隣にはグレンさんがいる。ま、ですよねー。

 で、そのグレンさんは魚のフライを食いながら俺に尋ねてきた。距離を詰めないのはさすがっていうか、……助かる。うん。


「ジョウ、お前さん、表出て大丈夫なのか?」

「えっと、まあ、はい。大丈夫じゃなきゃ、こうやって食べに来ませんし」

「無理しないでくださいね? 僕らは大丈夫ですから」

「ありがとな、タクト」


 グレンさんもタクトも、ほんと俺のこと気を使わせて悪いなーと思う。いや、あんなんでぶっ倒れたらしい俺が悪いんだけどさ。

 次もし会ったら、何か言ってくるより前に物理的ビーム食らわせようと思う。いわゆるビームでじゅっとやっちゃうよりまだマシだよな?

 そんなこと考えてたら、分かりやすく腹の虫がぐうと鳴いた。いやほんとに、こういうところに来ると腹減るわ。さっさと食うぞ、なあタケダくん。


『まま、ごはんだいじょぶ?』

「おう。タケダくんも一緒に食べような。太陽の神と季節に感謝します。いただきます」

『はーい。いただきますーかみさまありがとー』


 えー、伝書蛇の食前のお祈りはこんなもんである。ラセンさんに聞いてみたら、カンダくんもここまでじゃないけど似たようなものらしい。

 最初に聞いた時は大雑把だな伝書蛇、神の使いだからってそれでいいのかよ、って思ったんだけどな。人間のほうがきっちりしすぎてるんじゃないか、とはラセンさんの台詞だった。まあ、実際太陽神様に聞いてみないと分からんよな、こういうことはさ。

 ともかく、飯めし。ポテトグラタンは表面のチーズとパン粉がカリッとしてて、それで中のホワイトソースだっけ、ベシャメルだっけ。まあどっちでもいいけど、とにかく熱いけどとろっとしてて美味い。中身はポテトほか野菜が満載で、あと鶏肉かね。バッチリ火が通っててこれも美味しい。

 グラタンとパンと付け合わせの温野菜にあとスープ。おまけのフルーツヨーグルトは最後にして、もぐもぐと食事を進めていると、グレンさんが「こりゃ、マジで大丈夫そうだな」と苦笑した。悪かったな、腹減ってんだよこっちは。


「メンタルやられてると、普通に食欲ねえか逆に大食らいになっちまうかだからな。普通に食えてるなら、まあ大丈夫だろうさ」


 普通に、か。あ、そういえば助けてもらった夜って、結局マリカさんが持ってきてくれたミルク粥しか食わなくて平気だったな。もしかして、あれって。


「……あの、ここに来て最初の夜はミルク粥しか食べられなくって、すぐ寝ちゃったんです。あれ、もしかしてダメージ受けてたのかな」


 そう尋ねてみたら、グレンさんは一瞬だけ考えるような表情になった。マリカさんもタクトも、食事の手を少しだけ休めている。

 そして、グレンさんの出した結論は「多分そうだろうな」だった。


「一晩寝て、食欲戻ったのか?」

「あ、はい。翌朝はもう、ここでA定食を」

「メニューが読めなくて、困ってたんですよね。ジョウさん」

「あ、そうそう。それで、タクトに選んであげればーって私が振ったのよね」

「……ジョウ。お前、ダメージ食らうことは食らうにしても、結構タフじゃねえか? 一晩で回復したんなら」


 俺とタクト、それからマリカさんの話を聞いて、グレンさんえらく呆れ顔になった。うーむ、丈夫なのかね。何にせよ自覚はないぞ、俺。


「自分じゃ分かんないですよ。外から見るとそうなんですか?」

「と言われても、あんまりへこんだジョウさん見てないですしね、俺」

「そうね。この1週間も、意外と普通だったし」

「ふむ……内側にこもるタイプかもしれんな。ま、どっちにしろ1人で考え込むのはやめるこった」


 外からの意見。要するに俺は、あんまりへこんだように見えないらしい。でもまあ、それってへこんでも分からないってことかもしれないわけで。

 だから、グレンさんの忠告は素直に受け入れよう、と思う。……とはいえ、俺が中身男だってのはあんまりバラさないほうが良いんだろうけどな、うん。


「はい。っと、その節は迷惑かけると思いますが」

「心配するな。タクトのしつけより、よほど楽だろうし」

「ちょ、グレンさん、何てこと言うんですかー」

「ひどかったもんねえ」

「マリカさんまで、勘弁して下さいよ」

『……まま。たくとおにーちゃん、ひどかったの?』

「俺は知らん」


 ……タケダくんの言葉を訳するのだけはやめてやろう。せめてもの情けというやつだ。

 というか、元スリだったタクト、そんなにひどかったのか。何がとは言わないけど。そのタクトをここまで普通の兄ちゃんに仕立てあげたグレンさん、すげえなおい。

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