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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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57.話の続きと彼女の決意

「……まあ確かに、何も知らないまま黒の側に行ってたらと思うとぞっとしませんけど」


 視線が俺に集中する中、俺は素直に自分の意見を述べた。これは、『異邦人』である俺じゃないと言えない意見だろうし。


「俺はこっちの常識とか習慣とか、そういうものは部隊に来てから教わりました。だけど、何も知らずに黒の信者の側にとどまっていればあちらの話を聞かされて、そのまま留まっていたかもしれない。自分の意志でかどうかは、分かりませんが」

「だな。向こうの都合のいい、それこそお人形さんにされてた可能性だってある」


 コクヨウさんがさっき、少し違う意味で使った『人形』という言葉を繰り返した。なんだよなあ、俺あそこでラセンさんに叩き起こされてなかったらマジ、そうなってたかも知れない。

 ぱん、という手を叩く音が、室内に響いた。音の主であるラセンさんは、ニコニコ笑いながら全員を見渡す。


「はいはい、話を戻しますよ。今話しているのはジョウさんのことではないでしょう?」


 ああ、そうだったそうだった。ま、間接的には俺のことかもしれないけれど、今の話題はあの神殿だったりアスミさんをはじめとする黒の信者たちについてだったり、だし。

 で、ラセンさんはそのまま話を続けた。


「この情報自体は既に、カンダくんに文を託してコーリマに送っております。情報は新鮮さが生命ですからね、あちらの方々も許して下さいます」

「故に、この問題はコーリマ側から何も言ってこないかぎり向こうの手に渡ったと思え。俺たちの任務はあくまで、ユウゼの守護だからな」


 カイルさんが話を引き継いで、結論を口にしてくれた。あー、言い方は悪いけどグレン男爵の問題、あっちに押し付けたわけね。まあ、確かにコーリマ王国のお貴族様だもんなあ。処分は王国にやってもらう、ってのが一番か。この街は独立してるんだもんな。


「それと、『兎の舞踊』を始めとした娼館には念のため再調査を依頼しておいた。アスミのように、以前から潜伏していた黒の信者がいないとも限らんからな」

「仕方ない、な。状況が状況だ」


 アオイさんの報告に、コクヨウさんがはあと溜息をつく。ハナビさんは大丈夫……だと思うんだけど、万が一影響受けてたら大変だもんな。

 で、カイルさんが「それからもうひとつ」と声を上げる。


「神殿の方だが、今回再び使用されたことで儀式の間及び出入り口を破壊しておいた。再使用はできない……と思うが、たまに巡回する必要はあるだろう」

「領主様から伺ったんですが、あそこはもともと魔術石の鉱脈があったらしいです。大昔に枯渇して閉鎖されたんですが、その跡地を利用して神殿を建設したんじゃないかって」


 ノゾムくんが、神殿の場所について説明してくれた。魔術石ってのは……まあ、要するに電池みたいなもんだな。夜の灯とかの動力源として使うんだそうで、こっちでも部屋の明かりは入り口にあるスイッチをぱちんとやってつけるんだよねえ。

 電線ないからどうしてるんだろと思ったんだけど、プロパンガスのボンベみたいに魔術石の保管場所があってそこにつながってるんだと。定期的にアキラさんみたいな魔術師が魔力充填したり、ダメなら石交換したりするらしい。ちなみにこの世界、ろうそくや松明もあるんだけど場所や用途で使い分けるとのこと。なるほど。


「魔術師は魔術石に引かれる、ってことっすかね。ジョウのこと考えると」

「可能性はある。が、そう軽率に考えるのは問題だな。コクヨウ、何ならムラクモに鍛えてもらうか?」

「若まで!? 勘弁して下さいよ、もー」


 コクヨウさん、カイルさん、何か口調が軽くなってないか? いや、まあひとまず本題終わったみたいだし良いんだけど。あと他の皆、笑うなら思い切り笑ったほうがいいと思うぞ。俺もなんだけど、顔引きつらせてるだけってのはなあ。

 だけど。


「それから、最後の1つだ。黒の信者側についた、魔術師について」


 明るかったカイルさんの声が、一転して低くシリアスなものになった。ああ、神殿で会ったっていう、ラセンさんが手こずった相手のことか。


「普段から2人ないし3人1組で行動するようにしているが、今後は単独行動はなるべく控えろ。ラセンが手を出せなかった相手だ、俺たちなぞ一瞬で傀儡にされるかもしれん」


 ……そんなに、すごかったのか。というか、まあラセンさんが手を出せなかったとかそういうところで十分凄すぎる、どチートな相手だってのは想像つくんだけどな。


「とにかく、強力なプレッシャーでした。黒に染まった伝書蛇も連れていましたし、次に現れた時には恐ろしいことになりそうです」


 ラセンさん、ダメ押ししてくれなくていいから。

 いや、ダメ押しした方が良いのかもしれないな。街に残ってた俺たちや、実際に会ってない皆にはきっと分からない、ぞっとする相手だったんだろう。

 ……俺、頑張らないといけないな。もしそいつが目の前に現れたら、ラセンさんだけじゃ大変なんだ。俺が、頑張らないと。


『まま』

「ん?」

『ぼくも、いっしょにがんばるね』


 ……そだな。俺だけじゃなくて、タケダくんも一緒に頑張ろうな。

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