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56.聞いたお話

 翌日には、出張っていたカイルさんたちも戻ってきていた。集まっていた黒の信者の中にグンジ男爵の側近の人がいたようで、その人から情報を入手しようということになった模様。うん、ムラクモが芸術的に拘束してるだろうなーって話に出たあの人だ。何というか、ご愁傷様。

 それから1日かけて、ムラクモがゲットした情報とノゾムくんが領主邸で仕入れてきた情報を突き合わせたようで、さらにその翌日に皆で話を聞くためのミーティングが開かれた。

 ところでムラクモ、何かお肌がつやつやしてるな。何でだ?


「ムラクモ、妙に元気だな?」

「ああ。尋問が大変上手くいったのでな。いや、アスミの方はまだ口を割ってくれないんだが」


 尋ねてみると、そんな答えが帰ってきた。って、こいつの尋問ってあれか、例の特殊部位攻撃とかか。つか、上手く行ったってそういうことか?

 そんな俺の疑問をムラクモは、上機嫌にぶっちゃけて解消してくれた。曰く。


「グンジ男爵の側近を任されたのだが、何を考えたのか奴は大喜びでな。ぽんぽんしゃべってくれたぞ」

「……おおよろこび?」

「ああ。その後何故か、私に忠誠を誓ってくれたぞ。……どうした? ジョウ」

「………………いや、いいです」

『まま、だいじょぶ?』

「……あんまり……タケダくんは、ムラクモの影響受けちゃだめだぞ……」

『? はーい』


 この際、顔引きつらせて話聞いちまった上に頭抱えた俺は悪くないよな? タケダくんに言い聞かせてもおかしくないよな?

 てかMかー! どMか、男爵の側近! 良いのか、引き返せないぞ色んな意味でー!

 あと、アスミさんも任せる気かカイルさん! もしそうなら考え直したほうが良いんじゃないかなー!?




 何とか俺自身が落ち着いた頃になって、ミーティングは開始された。いや、さっきのムラクモの話、周りでも聞いてた連中が引いたり泡吹きかけたりしてな。アオイさんが眉間揉んでたり、ノゾムくんがしばらく遠い目になってたりしたもんで。

 ま、それは何とか回復したので、話を聞こう。なお今回お話を進めるのは、ノゾムくんである。


「では、まず。グンジ男爵なんですが、もともと黒に資金提供してたみたいですね。生まれ故郷が黒の信者の多い地域だったそうで」

「それって、穏健派だよな」


 グレンさんが口にした穏健派。つまり、生け贄さらってきたりしないで普通にお祈りしてるだけの、黒の神の信者さんたちのことである。もともとはそっちが多数派だったんだけど、現在は要するに俺を転移させてきたような過激派の連中がほとんどを占めている。だから、穏健派はものすごく肩身が狭いらしい。

 で、グレンさんの確認とも取れる問いにノゾムくんは「はい」と頷いた。


「ただ、男爵はそれには不満だったようです。この世界、大半が太陽神様を信仰してますからね」

「それで、黒の過激派に資金を出して勢力を広げようってか」


 コクヨウさんがふん、と鼻を鳴らした。てかそれって、布教じゃなくてテロって言わねえか。向こうの世界じゃニュースとかでしか知らなかったけど、この手の相手って面倒くさいんだよなあ。


「それもあるんですが、その……」


 あれ、ノゾムくんちょっと口ごもった。何でだろ、と考える前にアオイさんが、「私が続けよう」と後を引き取る。……何か、嫌な予感がしなくもない。


「儀式の際に処女を使うことが多いのは知っているな。そこで使われた後の彼女たちを売りさばき、あるいは調教して金に変える。商人として、そういった闇商売も魅力的らしい」


 うがー、やっぱりエロ展開かー。ノゾムくんが口ごもったのは、お仕事としてのエロには慣れてても非合法なお商売には慣れてない、ってことなのかね。うわ、ハクヨウさんがものすごく嫌な顔してる。

 してるんだが、発言したのは彼じゃなくてコクヨウさんの方だった。


「人形抱いて、何が気持ちいいんだか。あーいうのはよ、相手の反応楽しんでこそじゃねえのか」

「人の趣味にはいろいろあるんですよ、コクヨウさん」


 タクトはノゾムくんとは違ってこっちの話には強いようで、意図的に軽口を挟んできた。で、ムラクモがジト目でコクヨウさんを睨みつつ一言加える。


「何ならお前も、あの側近と同じ目に会わせてもいいぞ?」

「俺が悪かった」


 うわ瞬殺。テーブルに手をついて深ーく頭を下げた。さすがにコクヨウさんは、そっちの趣味はなかったんだな。何かほっとした。


「そ、それとですね」


 言い難い話を通過したせいか、ノゾムくんが再び声を上げた。全員の視線が彼に集中したところで、その視線の先が移動する話をしてくれたんだけど。


「まれにですが、黒の召喚儀式では魔術師として類まれなる能力の持ち主を召喚することがある、とのことです」

「ジョウのような、か?」

「はい」


 だあ。カイルさん、今までじーっと黙ってたのに何でここで俺の名前を出すかねえ。ほら、皆俺のこと見てるじゃねえか。

 というかカイルさん、俺のことガン見するのやめてくれよ。いくら中身男でも、イケメンの熱い視線ってのはなかなかこう、来るものがあるんだぞ。


「そういった娘を黒に染めれば、奴らにとってはこの上ない戦力の増強となるからな。その点で言えば、ジョウがこちらについたと言うのは黒の信者どもにしてみればさぞ不幸なことだろう」


 まあ、こんなセリフ口にする人が俺に向けてる感情なんて、割と知れてるけどな。多分。

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