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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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51.裏から回って無茶をする

 コクヨウさんたちの援護に行くことにした俺たちは、アオイさんの指示を聞いている。曰く。


「タクトは先導して。場所としてはどの辺り?」

「『兎の舞踊』店員の宿舎そばです。ここからだと大通り挟んで向こうになります」

「なるほど。グレン、ジョウと一緒に裏から回り込めそう?」

「蛇の案内があれば」


 つまり、俺とグレンさんを敵の死角側から接近させて奇襲をかけるってことらしい。タケダくんなら、魔術師を含めた戦闘をやってる範囲は多分分かるんだけど、問題は道順だな。まっすぐ行くんじゃないから。

 あ、ちなみに『兎の舞踊』店員宿舎って、店とは少し離れてるんだよね。オンオフ切り替えるためなのかなとも思うけど、詳細は不明。


「タケダくん。ぐるっと裏から回れるように行けるかな?」

『うら? むこうがわから?』


 それはともかくとして一応聞いてみると、タケダくんは小さな鎌首を軽くかしげてちょっと考えこんだ。それから、こくんと頷いてくれる。


『……まま、ぼくがんばってみる』

「分かった」


 遠回りの概念はまあ、一応あると思うんだけどな。だけどちょっと不安だったから、お手伝いをお願いすることにしよう。


「裏から回れるように案内、頑張ってくれるそうです。グレンさんもサポートお願いします」

「了解。んなわけで副隊長」

「OK。頼んだわよ、タクト」

「了解です」


 グレンさんが、そしてアオイさんが頷いてくれた。タクトも胸を叩いて、自信ありげに笑う。

 街中の道はそこそこ覚えてるんだけど、裏道の通り方とかはまだまだグレンさんたち先輩にはかなわない。これを機会に、覚えていかないと。




 結論から言うと、タケダくんの案内及びグレンさんのナビは完璧と言ってよかった。完璧すぎるというか、なんというか。

 で、到着した先は、何でか現場すぐそばの3階建てアパート、の屋上だった。


「てか、上ですか」

「この方が見やすいだろ」

「まあ、確かに」


 ですよねー。つか、偵察もあるんだからこの方がこっちは楽か。そんなことを思いながら下から見られないようにそっと覗き込んでみると、おお、いたいた。

 10人を、コクヨウさんと脳筋トリオが2、2で挟んでる。あんまり広くない道なんで、これでも何とかなるらしい。てか、既に10人のうち4人ばかしひっくり返ってるな。ここらへんが戦うのがお仕事な傭兵と、いきなり黒に染められて戦いに駆り出されてる一般人との違いってやつか。

 で、残った6人のうち中央でフフン、と偉そうにふんぞり返ってる真っ黒ウェーブヘアに赤ドレスのお姉ちゃんがアスミさん、だな。他全員男だし。


「あ」


 俺の口から一言漏れたのは、脳筋の1人が斬りかかったからだった。けどその刃は相手に届かずに、ぎんと金属同士をぶつけたような嫌な音を立てて跳ね返る。……だけど、相手は普通の服を着てるだけ。

 音と同時に、一瞬光の盾が生じたのが見えた。アスミさんの魔術だろうな、多分。それでアスミさんは、周囲の連中を守りつつ自分を守らせてる、んだろう。

 その光景を俺と一緒に見ていたグレンさんは、視線を動かさないまま俺に聞いてくる。


「アスミの魔術が面倒だな。何とかできそうか?」

「力技になりますけど」

「上等。力技は俺たち傭兵の性分だ」


 俺の答えは、彼を満足させたようだ。力技というか、割とワンパターンな術の使い方しかまだ俺にはできないし。けど、それでいいらしい。


「蛇には俺とお前を守る盾を張らせろ。副隊長たちがついたら、アスミをどうにかして突入する」

「分かりました。タケダくん、頼むな」

『うん、ぼくがんばるー』


 グレンさんも、そしてタケダくんもやる気充分。なら、何とかなるだろう。

 手のひらに魔力を貯めて、タケダくんに移す。同時に指示を伝えて、準備はOK。


「アスミさん!」

「コクヨウ、ランド、スウセイ、ミキオ! 手こずってんじゃないよ!」


 ちょうどそこへ、タクトとアオイさんが突っ込んできた。ほぼ同時に一般人のうち2人が走り出して、でっかい鍬だか何だかを振り回す。うーわー、ありゃ面倒だ。鍬とかああいう長いのって、ぶつけられただけでも勢いついて痛いんだよな。ったく。

 面倒だけど、きっとなんとかなる。そう思ってグレンさんにちらりと視線を向けると、彼は赤い髪を揺らして頷いてくれた。


「ジョウ」

「光の盾4枚っ!」

「しゃあああああああ!」


 名前を呼ばれた瞬間、魔術を発動。

 うん、まあ要するに、アスミさんの周囲に光の盾を4枚出したわけだ。魔術防御なんで、アスミさんからぶち破るのは難しい、と思う。本当なら魔術封じとかなんだろうけど、俺はこういう手しかまだ使えないからな。

 で。


「おし、行くぜ! 舌噛むなよ!」

「おうわっ!?」


 自分たちにタケダくんの光の盾がかかったと分かった瞬間、グレンさんはいきなり俺をお姫様抱っこした。慌ててタケダくんと一緒にしがみつくと、そのままグレンさんはそーれと飛び降りる。

 いや、確かにこれが降りるの一番早いけど! ほんとに力技が性分だな、おい!

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