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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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336.部下と配下

ハナビ視点です。シーヤになりました。

「んで今日も、可愛いお妃様はベッドの中と」


 旦那の前で、思いっきり大きなため息をついてやった。当の旦那も、片方しかない目を細めて苦笑する。ま、分かるけどね。

 国ができて、ラモットの街が都になって落ち着いた後、旦那はあたしをその都に呼んでくれた。いわゆるお相手としてじゃなく、妻として、ね。顔真っ赤にしながら宝石の髪飾り持ってきてさ、さすがにありゃ断れないわ。

 まあ、それはともかくとして、だ。あたしはいいんだけど、今の問題はあの可愛い白の魔女改め、王妃様のことだ。3夜連続で国王陛下に可愛がってもらった結果、ずっと起きられなくてベッドの中なんだって。

 というか、可愛い王妃様を国王陛下が可愛がるのは当たり前のことだけどさ。その結果として3日も起きられないってのはどうよ。


「ラセンとアオイも、ほんと呆れてたよ」

「曲がりなりにも、若はゴート王の息子だからなあ」


 お昼前にお茶してた友人2人の顔を思い出しながら、肩をすくめてみせる。ラセンは主治医みたいなもんだし、アオイは国王陛下の側近だから、あたしよりも王妃様の具合をよく知ってるんだよねえ。

 で、国王陛下を若と呼ぶ黒髪の我が旦那は、少々口ごもりながらも説明してくれた。曰く。


「一応若な、コーリマの城で経験済みなんだけど。けど確か、そんときもお相手さんが腰抜かして半日立てなかったとか何とか」

「あらら」


 いや、それってどうよ。あたしゃもともとのお仕事がお仕事だったからまあ分かるけど、半日立てないレベルで遠慮なくぶっ放されちゃあ、女の子の体力消費半端ないんだから。

 大体、1日だけのお相手ならともかく、お妃様なお嬢ちゃんはこれから長ーく王様と添い遂げなくちゃならないんだってのに。毎日んな扱いされたんじゃ、身体壊すわよ。


「お妃様のお身体のためにも、側室探したほうがいいんじゃないかい? そもそも、受け身は大変なんだよ」

「だよなあ。若に申し上げてみるよ」


 旦那ははあ、とため息をついた後、あたしに向き直った。


「ジョウのために、だよな? この場合」

「そうよ、当たり前じゃないの。初めての相手をそれって、うちの陛下はあんな若いお妃様をベッドの中に閉じ込めてヤリ殺す気?」

「うへ、洒落んなんねえな」


 あんたみたいに割と普通、それなりに満足させて満足してくれる男なら良かったんだけどねえ、国王陛下。ほんと、あたしが言うのもあれなんだろうけど、洒落にならなさすぎるわよ。あんな可愛いお妃様、もったいないったらありゃしない。


「さすがにあたしが直で怒ったら、陛下も引いちゃうでしょ。あんた、しっかり言っとくんだよ」

「分かったよ、ハナビ」


 しっかり念を押すと、旦那は今度は普通に笑いながら頷いてくれた。何気にこういう時の挨拶代わりのキス、あたしは嫌いじゃないねえ。




 あたしはシーヤ・コクヨウの妻として、お城で事務処理のお仕事なんかを手伝っている。娼館で働いてた時とかに、結構文字や計算は教えてもらったんだよね。あれってこういう時のためだったんだ、と今になって店長に感謝してるわ。

 で、お仕事の合間に食堂でお茶。ちょうど、王妃様の使い魔の1匹を面倒見てるムラクモと一緒になった。ま、お話はそんなことになった理由、つまり国王陛下の事になっちゃったわけだけど。


「ムラクモ嬢ちゃんも、気をつけてくれないとねえ。マジで折っちゃってもいいのよ」

「……もいだところで、性欲が失せるわけではないと思うんだが」

「そのくらいしないと、男って分からない時あるからね」


 あら。さすがにムラクモちゃんも、お相手が陛下となるともぐのに抵抗があるのかしら。まあ、それはそれでいいんだけど、ある程度脅して分からせないとねえとは思うのよ。

 もともとの職業上、いろんな男を相手にしたわけだけど。中にはほんと、ドヘタクソなくせにてめえが満足できなくてしつこい男とかいるわけ。ああいう自己中心的な相手とかもう、疲れるったら。

 んでまあ、偶然を装ってこう、ぽきっとね。泡吹いたから、ご退場願いましたけど。


「ぴいぴい」


 おっと。大昔の事思い出してたら、お妃様の使い魔が可愛く鳴いたわ。ゲンちゃんって言うらしいこの伝書蛇、ムラクモが見つけてきたそうね。あーあ、ムラクモもすっかりでれでれになっちゃってまあ。


「この子、すっかりあんたに懐いちゃったねえ」

「まだ声は聞こえんのだ。やはり私も、魔術師としての修行をしたほうがいいんだろうか」


 あらら……まあ、あんた使い魔の声聞こえなくてもだいたい理解してそうだし、大丈夫だと思うけど。

 それにさ、魔術師じゃなくても大丈夫じゃないの?


「陛下、魔術師じゃなくても使い魔がついてただろ? そのうち、何とかなりそうな気もするけどねえ」

「ぴー」

「ああ、よしよし」


 ぱたぱたと翼を羽ばたかせながら鳴き声を上げるゲンちゃんに、ムラクモが小さな匙で餌をあげる。ぱく、ごくんと飲み込んでお代わりを要求する丸い瞳、結構可愛いわね。うん。


「ゲンちゃんは食欲旺盛だな」

「まだ小さいんだし、育ち盛りなんだろ。他の子はどうしてるんだい?」

「責任とって、カイル様が面倒見ていらっしゃる。タケダくんとソーダくんとは話が通じるからな、あの子たちも助かるだろうし」


 なるほどね。伝書蛇2匹と子猫、国王陛下がご飯やったりしてるわけだ。そりゃ、主たる王妃様を寝込ませた犯人なんだから当然、しっかりやっていただかないと駄目だけどねえ。


「んで、あんたに懐いたこの子だけはあんたが面倒見てる、と」

「うむ。ああもう何と可愛らしい」

「ぴっぴー」

「……ははは……」


 笑うしか無いでしょ。だってムラクモすっかりデレデレだし、ゲンちゃんもしっかり甘えてるって感じだし。

 いやもう、その子あんたの使い魔だって公言しても誰も怒らないと思うよ。この際だから、もらっちゃえばいいのに、なんて思うあたしは変かねえ?

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