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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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331.商人と贈物

 お昼ご飯食べて一段落した後、俺は謁見の間と名前をつけられた大広間で商人さんと面会した。

 マリカさんが「王妃様なんですから、それなりの格好でないと!」と選んでくれた、白メインに青と金銀の刺繍の入ったローブを着けてちょっと緊張。タケダくんとソーダくん、それにゲンちゃんが、俺のすぐそばにいてくれてるから大丈夫、だと思うけど。あと、当然のように護衛としてムラクモがいる。うん。


「シキノ・リュウオウと申します。船を5つばかり持っておりましてな、あちこちの港で取引をさせて頂いとります」

「スメラギ・ジョウです。ご挨拶、ありがとうございます」


 マリカさんの案内で入ってきた商人さん、シキノさんっていうおっさんは、分かりやすくふとっちょさんであった。ユウゼの領主さんもそうだけど、何で太いんだろうね。運動あんまりしないのかな。


「此度は、国王陛下ご夫妻が黒の国を無事成敗せられたということで、そのお祝いに参りました。些少ですが、贈り物を受け取っていただきたく」

「ありがとうございます。自分は礼儀に疎いものですから、もし失礼がありましたらごめんなさい」

「いえいえ」


 ま、太くても関係ねえかと思いながら、シキノさんの部下の人がこういろいろ持ってくる贈り物、とやらに目を向ける。布とか果物とか何かでかい箱とか、いろいろ。多分これ、単価めちゃくちゃ高いんだろうなー。この辺は俺より、カイルさんとか白黒コンビとかマリカさんとか、あっちのほうが絶対詳しいはずだけど。


「シキノ殿、国王陛下にはお目通りは?」

「は、午前中にお目もじ仕りました。その際にも贈り物をお見せいたしましたが、殊の外喜んでいただきました」

「なるほど」


 ムラクモの質問に、シキノさんはにっこりと笑顔を見せながら答えてくれた。……うーん、こう言っちゃ悪いけど微妙にうさんくさいなあ、と思ったのは俺だけか。

 しかし、本気で大量にあるなあ贈り物。その中でふと、小さな……えーと20センチくらいかな、の箱がちょっと気にかかった。気のせいかもしれないけど、中身見てみたいな。


「近くで見てもいいですか?」

「はい、是非お手にとってご覧になってくださいませ」


 一応、持ってきた本人に聞いてみると快くOK出してくれたので、座ってた椅子から降りて近づく。こと、ことと音が鳴っているのは、俺が気になっている箱からだ。何だ、中身動いてんじゃね?

 とりあえずその箱を取ろうと手を伸ばすと、シキノさんにその手を掴まれた。おいおいおっさん、セクハラじゃねえの? いや、こっちにセクハラの概念ないだろうけどさ。


「それにしても、お若くてお美しいことだ。失礼ですが、お幾つになられますかな」

「えーと……19、ですね」

「おお、なるほど。それで、新しい国のお妃とは……」


 だー、おっさん顔近い顔近い。後鼻息荒い、キモい。

 ただし、キモかったのは一瞬だけだったけどさ。


「ああ、済みませんシキノさん」


 音もなく背後に忍び寄っていたムラクモに腕ひねられたシキノさんに、一応お詫びの言葉だけは入れておく。いや、さすがに痛いだろうしさ。


「あがががが……」

「何しろ見ての通りまだまだ小娘なんで、周りがものすごく心配性なんですよ」

『ままになにするんだー』

『じょうさまに、ぶれいな!』

「ぴいぴいぴい!」


 俺の両肩で思いっきり威嚇してるタケダくんとソーダくん、それからムラクモの頭の上で同じように威嚇してるゲンちゃんに、さすがにおっさんも顔引きつらせた。まあ、ムラクモも目笑ってねえし。いつでも殺れるって目だ、うん。


「タケダくん、ソーダくん、ゲンちゃん。俺は大丈夫だから、下がって」

「ぴー!」

『げんちゃん、ままがいってるからだいじょぶだよ』

『ええ。むらくもさまもいらっしゃいますから、ぜったいだいじょうぶです』

「ぴ」


 俺の一言で、伝書蛇たちが引き下がる。ただ、ムラクモだけはそのままで、今にも急所攻撃か例によって独特の縛り方かやらかしそうだ。ま、さすがに顔引きつりまくってるおっさんも、もうしないだろ。


「ムラクモ、次があったら任せる。でも潰したりひねったりしちゃだめだよ?」

「分かっている。王妃殿下の御前を汚したくはないからな」


 よく言うよ、俺のOK出た瞬間ぶっちぎってそうなのにさ。

 ま、ともかくムラクモが手を放したことでシキノさん、床に手をついてぜーはー言ってる。若い小娘だから何とかなるとでも思ったか、ざけんなコラ。


「次はない、と思ってください。これでも黒の神とガチで対決してきたんで」

「も、申し訳ございませぬっ!」


 顔も上げずに謝ってるので、とりあえずはいいか。ただし、カイルさんと大公さん辺りには話通しておくつもりだけど。あとラセンさん。

 で、話を元に戻す。さっきの箱、かたかた言ってるんだよな。なんだこれ。


「それで、この箱は何でしょうか」

「は、はひっ。先日南の国で買い入れました、珍しい獣にございます。何でも、卵から生まれたとのことで」

「卵?」


 卵から生まれた、獣。いや、こっちの世界でもおかしいだろ、というのは分かる。牛とか羊とか、あと鳥頭してるけど馬も一応赤ちゃんで生まれるんだよね。鳥や伝書蛇なんかは卵だけど。

 つか、卵から生まれた獣って何だ、と蓋を開けた瞬間。


「みー」

「ぴい!」


 何この手のひらに収まるサイズの子猫。白地に黒の虎模様で、何かいきなりゲンちゃんがはしゃぎ始めたし。

 あとムラクモがぷるぷると震え始めたのがあれだ。ここにシキノさんいなかったら、即効でデレデレフニャフニャになってるパターンだ。

 つまり、この子は。


「みいい」

『ままー。あのね、びゃっくんだって』

「……ビャッくん、か」

『びゃっこさま、ですね』

「みー!」


 当たりかー。

 つかゲンちゃんもそうだけど、何でここに来るんだろ?

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