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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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327.入城と演説

「陛下、殿下。王城に到着いたしました」


 馬車の御者をやってくれてるネネさんの声に、俺たちは窓から前方を見てみた。前に見た、スオウさんたちの使ってた司令部を改装したもので、基本平屋建て。


「お城、というかお屋敷か。あまり高くないんですね」

「高いと上がるの大変ですし、熱こもるんですよ」

「あー」


 ネネさんの説明に納得する。何しろ元軍施設なんで、石とかでガッツリ作ってあるもんなあ。向こうと違ってエアコンとかねえもん、そりゃ熱こもるわ。その代わり、結構窓とか広かったりするけどな。


「上には低い代わりに横に広いですから、そこら辺はご安心を。タケダくんやソーダくんが涼める池も、ちゃんとありますから」


 その後の台詞に、名前の上がった2匹が素早く反応した。何気にお前ら、水遊び好きか。まあ、大公さんとこのスイテンみたいな子もいるからなあ、伝書蛇。


『いけ? おみずちゃぷちゃぷあそべる?』

『あそべるとおもいますよ。きもちよさそうですねー』

「……ものすごく喜んでいるな、2匹とも。水遊びが好きなら、付き合ってやってもいいぞ?」


 ぱたぱたくねくねはしゃぐ2匹を見ながら、例によってムラクモがほにゃらかと顔を崩す。いやまあ、これはさすがに誰でも分かる、とは思うんだがしかし。


「やっぱりムラクモ、声聞こえなくても問題なくね?」

「そうだな。大体合ってるし」

「いやいやいやいや」


 俺とカイルさんがそう突っ込んだら、ムラクモは急に顔を引き締めて手をパタパタと振ってきた。マジで目が怖いんだけど、そこまで真剣になることなのかお前にとっては。


「何でカイル様にこの子たちの声が聞こえて、私には聞こえないんですか! 納得いきません、可愛いけど!」


 ……真剣になることだったらしい、さすがムラクモ。しかし、最後の一言が微妙に引っかかったので尋ねてみる。


「可愛けりゃ良いのか?」

「可愛いは正義だ」

「あ、はい」


 即答された。マジでいいのか、ムラクモ。

 まあ、どうせなら可愛い方が良いけど……というか、可愛くない使い魔っているんだろうか? ゲンブやビャッコだって、こっちに懐いてくれてたら結構可愛かったかも知れないし。ビャッコなんてちっちゃかったら多分、猫だぞ。




 まあ使い魔の話は置いといて、だ。タケダくん、ソーダくん、池には後で行ってみような。

 で、王城の門前で馬車を降りた俺たち……というかカイルさんが、ラモットの住民さんたちに向かって声を張り上げた。国王ご入城ということで、一応ご挨拶の類らしい。風の声を頼まれたので、スピーカー役は引き受けてる。


「シロガネという国が生まれて、このラモットを都にしてからもうかなり時間が経っているな。黒帝国との戦のためとは言え、遅くなったことをまず、謝らなくてはならない」


 カイルさん、こうやって見るとほんと、王族だなあと思う。演説とか、せーちゃんの剣を腰にした姿とかよく似合うし。


「だが、やっとのことで黒帝国は壊滅し、私と妻がこの地にやってくることができた。これは即ち、シロガネ国の本当の始まりと言っていいだろう」


 妻、か。

 何というか、カイルさんの隣にいたい勢いで受けちゃったけどさ、これでいいのかね。相変わらず俺は俺だし、身体は女だけど中身は……まだ男っぽい、だろうし。

 いや、跡継ぎが要るよっつったら側室でも何でも方法はあるんだけど、でもそれだと何かムカつくんだよなあ。


「かつてのシノーヨの民も、コーリマやユウゼの民も。そして、イコンやその他の国々にルーツを持つ者であっても、シロガネを母なる国と呼んでくれるのならばそれはシロガネの民だ。考え方や生き方などに違いはあるだろうが、それでも我がもとで共に進んでいけるよう、王として願う」


 でも少なくとも、カイルさんが俺みたいな『異邦人』を含めていろんな人たちを自分の国民として受け入れてくれる、ってのは嬉しい。まあ、カイルさん自身お母さんのことがあるから、なんだけど。

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