326.別れと凱旋
そんなこんなで、半月くらいコーリマ王都にいたのかな。その後馬車が迎えに来て、俺とカイルさんはそれに乗っててこてこと南下した。
白黒コンビやグレンさん、ムラクモやアオイさんたちは当然のようにくっついてきた。それに、馬車で迎えに来たのはある意味例によってというか何というか、スオウさん&ネネさんのカヅキ夫妻なんで割と呑気な馬車旅行の気分。
最初数日は酔ったんだけど、さすがに慣れた。一緒に乗ってたカイルさんやムラクモには、大変お世話になりました。あと、タケダくんとソーダくんな。
『まま、だいじょうぶ?』
『もうすこししたら、きゅうけいですからね』
「……う、うん、ありがとな」
ぷしゅーと空気抜ける感じでひっくり返りつつ、自分の伝書蛇に介抱してもらう情けない魔術師であった。なお、いつものようにムラクモは悶えてた。相変わらずで何よりである。
途中でユウゼに寄って、領主さんにご挨拶してきた。ユウゼの街はシロガネの領土になったとは言え、実質今までと変わらないままである。ま、アキラさんもいるしな。
「何かご入用のものがございましたら、いくらでもお申し付けください。これでも商人ですでな、手広く知り合いがおります故」
「ありがとうございます。ミツちゃんも元気でね」
「はーい! 王様も王妃様も、仲良くしてくださいねっ!」
領主さんもミツちゃんも、ほんと元気そうで良かった。これなら、お世話になったユウゼの街を任せられると思ったよ。……いや、俺が来る前から任されてたわけだけど。
そうしてぐいぐい南下して、王都出てからやっぱり半月くらいかかったのかな。やっとこさで、ラモットの都に到着した。これからは、俺とカイルさんは基本ここに住むことになる。新しい都何だし、当然なんだけど。
前に来た時と同じ、結構がっちりした城壁を通り抜ける。その途端、妙に周囲が賑やかになった。
「お帰りなさいませー!」
「ラモットにいらっしゃいませ、陛下!」
うわー、どこから湧いたんだこの人数と言わんばかりの人たちが、道の両脇にどっさりといた。あれだ、スポーツの優勝パレードとかで人が集まってる感じ。
もともとシノーヨの街なんで赤毛の人が多いけど、コーリマ系の茶色や金髪の人とか、あと黒髪の人とかも普通に混じってる。馬車の中から見てるから、遠くの方なんて頭の天辺くらいしか見えないからなあ。
にしても、だ。
「に、賑やかですね……」
「ラモットはシノーヨ系が多いからね。太陽神様に似て、お祭り騒ぎが好きだと聞いたことがある」
「……あー」
いやまあ、そういうお祭り騒ぎは嫌いじゃないし良いんだけどな。
太陽神様、かあ……ガチで会話した時のこと思い出してみるけど、カイルさんに似た感じのおっとりさんだった気がする。こういうお祭りとか見てるときっと、今横にいるカイルさんみたいにのほほんと楽しそうに笑ってるんだろうなあ。
「ジョウ、外に手を振ってやれ。皆喜ぶぞ」
「え? あ、こうか」
ムラクモに言われて、窓から外見て手を振ってみる。あ、すげえ盛り上がった。声が。
「カイル様も、反対側からどうぞ」
「そうだな」
反対側向いてカイルさんが手を振ると、あっち側もどっと歓声が上がる。まあ、この世界ってアイドルとか芸能人とかいないもんなあ。王族なんかがそういう対象、なんだろうね。あと、戦で頑張った英雄とか。
そんなこと考えながら手を振ってると、膝の上で伝書蛇たちがぱたぱたと嬉しそうに翼を羽ばたかせた。
『みな、かいるさまとじょうさまをみてうれしくおもっておられるんですよ』
『そうだねー。ぱぱかっこいいし、ままびじんだから』
「さりげに何言ってんだ、こら」
『え? だってほんとのことだよ?』
ソーダくんはいつも真面目っ子でいいんだが、問題はタケダくんなんだよなあ。何気に爆弾落としてきやがる。カイルさんにも声聞こえるようになってんだから、少しは自重して欲しいもんなんだが……無理か。
「どうしたジョウ、タケダくんに美人とほめられたのか?」
「お前、ほんとーにタケダくんの言葉分かんねえの?」
……最大の問題はこいつか。うん。




