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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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324.祈りと言葉

 湖の中の、小さな島。オウイン王家の墓所の前で、俺をはじめコーリマに縁のある数人が、祈りを捧げていた。


「……オウイン・ミラノがその魂を安らげ、太陽神様の御下にて穏やかに暮らせることを祈ります」


 代表してその言葉を述べるのは、セージュ姉上。彼女と、その後ろに並ぶ俺たちの前には、棺が3つ並んでいる。

 この島に収められる遺体は、オウイン王家とその縁の者だけだ。だからあの棺の中身も、当然限られている。


『たいようしんさま。ぱぱのおにーちゃんたちのこと、よろしくおねがいします』

『どうぞ、よろしくおねがいいたします。たいようしんさま』


 タケダくんとソーダくんも、俺たちと一緒に祈っている。

 ……前に来た時は魔術師1人に使い魔1匹、って言われてたんだけど、あの時の神官さんは最初にシオンがこの街を乗っ取った時に殺されてて、代わりに来た神官さんは次にシオンが来た時に魔力タンクにされてた。んなこともあって、現在ほぼフリーパス状態である。いや、一応うちの兵士さんとか見張りつけてるけどな。

 んで、お祈りが終わったところで白黒コンビやらスウセイさんやミキオさんやらが、墓所の奥に棺を納めに行く。3つまとめて土葬なんで、先に穴掘ってあるとはいえ上から土掛けるだけでも大変らしい。一応、俺たちも形式的に土掛けるんだけど、きっちり埋めるのは力仕事軍団に任せることになる。




 黒帝国が事実上消滅した後、ひとまず俺たちはコーリマ王都全体の確認やら点検やらまあいろいろ忙しかった。ま、特に俺の場合、黒に汚染された皆のぺちぺちがな。数が多過ぎて、何人叩いたか数えるのは初日でやめた。

 つっても、黒の神が神様の世界に叩き返されたせいか、黒の気はほとんど消えてたけどな。でもまあ、念のため。

 男の人はともかく、魔力タンクにされてた女の人たちは結局、ほとんど色ボケが取れなくて隔離ってことになってるようだ。

 子供たちは……ほとんどが、えーとうん、手遅れだった。面倒見る人が、ほぼ皆無になってたから。

 あと、元コーリマの偉いさん連中。トウマさんがああなったように、あちこちで干からびてるのが見つかった。中には何とか生きてる人もいたけれど……ああ、ゲキさんなんかそうだな。


「……こわい、こわい……オンナ、つぎからつぎへと……すわれる、すいころされるう……」


 城の片隅で見つかったゲキさん、こんな状態だった。あーうん、そういう目に合ってたんだろうね。よく生きてたな……とは、アオイさんやノゾムくんがいるのにとても言えなかったよ、うん。

 けど、実のところそれ以上にひどい状態だったのが、ミラノ兄上と一緒に棺に収められた2人だった。


「……ったく、下衆いことしてくれたもんだ」


 ぼそ、と呟いた声は多分、他の人には聞こえなかったと思う。

 ゴート陛下と、正妃殿下。兄上と一緒に、やっとお墓に納めることができた2人だ。

 シオンがコーリマを乗っ取って黒帝国を造り上げた時に殺された、という2人。彼らが今までどこにいたかというと……城の正門だった。

 門柱のところに、ズタボロになって吊るされていたんだ。恐らく、黒帝国に歯向かうコーリマ王国の王と王妃だからと、見せしめのために。

 俺とカイルさんは上から転移してったせいで気づかなかったんだけど、戦が落ち着いた後城に着地した俺たちを迎えに来てくれた皆がまともに見ちゃってな。

 先頭に立ってたアオイさん、最初それが誰か……というか何か、分かんなかったらしい。ぱっと見、ボロ布に見えたんだとか。ずっと放ったらかしにされてた、からだろう。


「気がついてからは大変でした。セージュ殿下のお目に止まる前に、慌てて降ろさせて頂いたんです」

「なんだよなー。王姫殿下にあれ見つかってたら、王都の破壊この程度じゃ済まなかっただろうぜ」


 以上、アオイさんとお手伝いコクヨウさんの証言。姉上、都破壊しちゃ駄目です。

 それで、兄上と一緒に王家のお墓に収めることになった。墓地の島はまあ何とか残ってたんで、ちゃんとお手入れすればそのまま使えそうだということだった。




 そんな感じでものすごく殺伐とした雰囲気の中、空気読めなさすぎる我が伝書蛇たちにはえらいことが起きていた。島から王城裏に戻る途中、元のサイズに戻ったタケダくんがぱたぱたと翼羽ばたかせながら喜んでいる。


『ぼく、ぱぱとおはなしできるようになって、うれしいなあ』

『わたしも、かいるさまとおはなしできるとはおもいませんでした』

「それは俺もだよ。……せーちゃんの通訳があったけど」

「あー」


 そう。

 タケダくんとソーダくん、何でかカイルさんともお話できるようになってた。つかタケダくん、すっかりカイルさんのことパパ、で定着してるし。

 ちなみにラセンさんは聞こえなかったようなので、俺とカイルさんだけ、ということみたいだ。……いやまあ、いいけどさ。つか、そうだよな。ここに来るまではカイルさん、せーちゃんに通訳してもらってこいつらの話分かってたんだもんなあ。


「ど、どうして私にはタケダくんたちの言葉が分からないんだ……」

「お前は、見てればだいたい理解できるからじゃないか?」


 何でムラクモがショックを受けてるかはともかくとして、イカヅチさんの言うとおりだから特に問題はないと思うぞ。マジで通訳すら要らないしな、お前さんは。


『むらくもおねーちゃん、ぼくたちのことばわからなかったの?』

『ふつうはそうですよ? たけだくん』


 ソーダくんは分かってるからいいとして、タケダくんは……まあ、お前はこのままでいろ。後カイルさん、地味に吹き出すな。

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