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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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320.突っ込め

「何、戦で人死にが出るは当然のことじゃろが」


 歳には関係なく、ピンと張った感じの大公さんの声が耳に届いた。はっと顔を上げると、チョウシチロウとビシャモンはいつの間にかタケダくんから距離を取っている。というより、3匹で黒の神を取り囲んでいる形だな。


「何より、今人を殺したんはお前さんじゃしなあ。こっちが文句言われる筋合いはないわえ」


 呆れ顔のアキラさんが、チョウシチロウの上で腕組んで仁王立ちしている。

 よく落ちねえなとは思うけど、それはこっちもそうだよな。何とか足で、タケダくんの黒除けお守りに引っかかってる感じで。つか、一緒に巨大化してるってそれはそれですごいな。


「まあそんなわけで黒の神とやら。おとなしく神の世に帰ったほうが身のためじゃぞ?」

「今ならまだ、神のままで帰れそうじゃしなあ!」

「……このままだと、帰れなくなるかもしれませんしね!」


 大公さんとアキラさんの言葉に、何となく続いてみた。もう魔力は貯め直しできてて、だから俺はすかさず光の盾パンチをぶっ放してみた。ほぼ同時に大公さんが炎の刃、アキラさんが風の刃を叩きつける。


「それで、我を倒せると思うてかあ!」


 黒の神の方もさすがに余裕なくなってきた感じで、ばさっと元すーちゃんの翼を思い切り羽ばたかせた。そこから黒い羽が無数に周囲へと飛び散り、こっちが放った魔術とぶつかる。つーか数多すぎて、残った分がこっちに飛んでくるし!


『ひかりのたてをだします! たけだくんはかいひを!』

『わかったあ!』

「炎の刃!」

「はああっ!」


 と、ここは伝書蛇2匹が能動的に動いてくれた。ソーダくんの光の盾である程度を相殺し、その隙間をタケダくんが突っ込んで回避。俺とカイルさんも、それぞれ羽を撃ったり切ったりして数を減らす。

 ……って、何気に普通サイズの羽切り落としまくるカイルさん、すごくね?


「お嬢ちゃん、無事かや?」

「王様もなかなかやるもんじゃの」

「しゃー」


 向こうは向こうでほいほいと避けたり払ったり焼いたりしながら、大公さんとアキラさんの声が聞こえてくる。多分風の声だなー、と思いながら「大丈夫ですよ」と答えた。


「そうか。なれば、後は若い衆にお任せするかのう」

「え?」


 アキラさんの明るい声に、何か違和感。えっとその台詞、俺の知ってる限りじゃお見合いとかその辺で言うもんじゃないかな。こっちにお見合い、ってのがあるかどうかはともかくとして。


「爺婆は、若人の盾になる、と言うたんじゃ」

「え」


 その後に来た大公さんの台詞には、カイルさんが声を上げた。

 盾になる、って。


「気にするな。ここまで生きとる以上、お嬢ちゃんたちの孫見るまで死んじゃおれんわのう」


 そんなことを言うアキラさんを乗せたチョウシチロウは、全体に光の盾を張りながら黒の神の周りをぐるぐると立体的に回っている。魔術ビームの撃ち合いが、えらく派手になってきてる。

 もちろんというか、大公さんを乗せたビシャモンも同じように、奴の周りを回ってて。こちらは炎を主体とした魔術で、やっぱりすーちゃんの主だななんてふと思った。

 で、その大公さんがひとこと。


「何じゃ、孫で良いのか?」

「まだ長生きする気満々だ!」

「元気でいいじゃないか」


 あんたら、どこまで生きる気だ。いやいいんだけど、今死ぬかもしれないわけだからそれだけ前向きなのは、うん。

 そこでやっと気づいたんだけど、アキラさんと大公さんのおかげで、今黒の神がぶっ放してる魔術は全然届いてない。すげ、全部防いだりはたき落としたりしてるんだ。

 おかげでこっち、態勢は余裕で立て直せてる。今なら、もしかしたらいけるかも。

 行こう。


「……カイルさん」

「いつでも行ける。君となら、大丈夫だ」


 いや残念イケメン国王陛下、前半だけでいいから。とつい、突っ込んだ。この人は、どこまで行ってもこのまんまなんだなあ、うん。


「こういう時に言う台詞じゃないですよ、ったく」

「す、すまん」

「いえ」


 ま、その方がらしくていいか。カイルさんはカイルさんのまんまでいてくれる方が、俺も隣にいやすいし。


「タケダくん、ソーダくん、行こう!」

『はあい、まま!』

『おまかせください、じょうさま』

「カイルさん、行きますよ!」

「了解だ、ジョウ」


 すぐそばにいる仲間たちに声をかけて、次の瞬間タケダくんはばさっと真っ白な翼をはためかせた。

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